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私は鞄から携帯電話を取り出して名方さんに発信してみた。

どこかで何かが振動している音がする。

音の出どころを探ると、机の引き出しからだった。

引き出しを開けると、名方さんの携帯電話が私の着信によって振動していた。

わざわざ電話を机の引き出しに入れたまま出かけている。

何で持ち歩いていない?

すぐ戻ってこられる場所に出かけたから?

でもその辺に置いているならともかく、わざわざ引き出しの中、というのが引っかかる。

連絡が取れない以上、自分で探すしか方法がない。

私は再び那智を抱き上げて外に出た。

涼しさに慣れた分、外のむわっとした熱気が不快だ。

が、そんなことを気にしている場合ではない。

私はとりあえず駅に向かった。

ここにはタクシーで行くとは言っていないので、駅で私たちを待っているかもしれないと思ったからだ。

駅へは徒歩5分の距離なので、さほど遠くない。

着いてすぐ改札口付近を見渡したが、名方さんどころか、人は誰もいなかった。

普段からこの時間帯は乗客が少ないようだ。

気を取り直して今度は近くのスーパーへ向かった。

スーパーは駅から見えているところにあり、こちらもすぐに着いた。

端から順に素早く人の顔を判別する。

違う、違う、違う・・・。

最後にレジに並ぶ人を見て回ったが、名方さんは見つからなかった。

すれ違いになったかと思い、急いで家に戻ってみる。

携帯電話がないと、人を1人探すだけでとても苦労することを知った。
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