*いにしえのコトノハ*8 なっちゃん

N&N

文字の大きさ
上 下
11 / 28

10

しおりを挟む
空調が動き出して快適な温度になっても、名方さんは戻ってこなかった。

手持ち無沙汰になり、部屋の周りを見渡していると、ふと名方さんの机に紙切れが置いてあることに気づいた。

紙は二つ折りにされており、横にはペンが置いてある。

プライベートなものを勝手に見てもいいものかどうか迷ったが、目についてしまったものは仕方がない。

名方さんの不在をいいことに、見てみることにした。

紙の最初には 堤さんへ と書かれていた。

私に宛てた書き置きだった。

安心して読み進める。


堤さんへ
昨日電話をもらってからずっと今までのことを思い返していた。
取り返しのつかないことをしてしまったと思う。
謝っても謝りきれない。
もう2度と同じ過ちをおかさないように
あなたの前から姿を消します
いままでありがとう
さようなら


「えっ」

書き置きを見た瞬間、我が目を疑った。

何かの間違いかと思い、もう1度読み直す。

頭が真っ白になった。

ひいたはずの汗がまた噴き出す感覚に襲われて、ハンカチで顔を拭った。

私の前から姿を消す、とは一体どういう意味なのだろう?

部屋は名方さんの私物が残っているから、ここを引き払ったわけではなさそうだ。

生活しているわりには物が少なすぎるようにも見えるが、単身赴任だったらこんなものなのかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

*いにしえのコトノハ*7 欠けコトバ

N&N
現代文学
本当は・・・ 知ってたんだ。

*いにしえのコトノハ*6 おばあちゃんの勘違い

N&N
現代文学
あなた、もう少しだけ そちらで待っていてくださいな

*いにしえのコトノハ*2 レインドロップス

N&N
青春
私、後悔まではしてないから

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

短編集:失情と采配、再情熱。(2024年度文芸部部誌より)

氷上ましゅ。
現代文学
2024年度文芸部部誌に寄稿した作品たち。 そのまま引っ張ってきてるので改変とかないです。作業が去年に比べ非常に雑で申し訳ない

*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

N&N
青春
困った時はお互い様 先輩も後輩も 身内も他人も 細かいことなんて 気にすんなよ

*いにしえのコトノハ*5 匿名ごっこ

N&N
青春
あれはきっと あの人からだと 自分だけが 知っている

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...