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あの人と最後に会話をしたのは、那智を生んだ報告をした時だ。
それ以降は連絡を取り合わないできた。
久しぶりすぎてどういう反応をされるかわからない。
心の準備をする間もなく、受話器から声が聞こえた。
久々に聞く彼の声。
それだけで不安は一気に消えていった。
「久しぶり。元気だった?」
簡単な挨拶から始まった電話は、たわいない話へと繋がっていき、空白の時間はあっという間に埋まっていった。
やがてお互いに話すことが尽きたところで、私は本題を持ちかけた。
「子どもの顔を一目見てあげて欲しいの」
私がそう言った途端、相手が息を飲むのがわかった。
そういう反応が返ってくることは薄々感じてはいたが、やはり戸惑う。
それを打ち消すように早口でまくし立てた。
「約束は守るわ。会っても今の関係を変えるようなことは言わない。ただ私が産んだこの子を一目見てあげて欲しいの。本当にそれ以外は何も望んでないから」
そう言ってもすぐに肯定の返事は返ってこなかった。
しばしの間、沈黙が流れる。
やがて腕の中で那智がぐずり始めた。
不穏な空気を感じ取ったのかもしれない。
体をさすってはみるが、泣き声は大きくなっていくばかりで全然おさまらない。
電話口から何やら声が聞こえたが、泣き声が邪魔して何を言っているのかがわからない。
仕方なく、私は泣き止まない那智をベッドに寝かせてベランダに出た。
もう1度同じ言葉を請う。
「明日会おう」
私たちは翌日の午後に会う約束をした。
場所はあの人の家。
私が那智を連れて向かうことになった。
那智を身ごもって仕事を辞めてから、初めて会うことになる。
那智を見てあの人はどう思うだろう?
いろいろ考えをめぐらせながら部屋に戻ると、泣き疲れたのか那智は涙の跡を残しながらぐっすり眠っていた。
「明日お父さんに会わせてあげるからね」
寝顔に一言告げて、私もまた眠りについた。
それ以降は連絡を取り合わないできた。
久しぶりすぎてどういう反応をされるかわからない。
心の準備をする間もなく、受話器から声が聞こえた。
久々に聞く彼の声。
それだけで不安は一気に消えていった。
「久しぶり。元気だった?」
簡単な挨拶から始まった電話は、たわいない話へと繋がっていき、空白の時間はあっという間に埋まっていった。
やがてお互いに話すことが尽きたところで、私は本題を持ちかけた。
「子どもの顔を一目見てあげて欲しいの」
私がそう言った途端、相手が息を飲むのがわかった。
そういう反応が返ってくることは薄々感じてはいたが、やはり戸惑う。
それを打ち消すように早口でまくし立てた。
「約束は守るわ。会っても今の関係を変えるようなことは言わない。ただ私が産んだこの子を一目見てあげて欲しいの。本当にそれ以外は何も望んでないから」
そう言ってもすぐに肯定の返事は返ってこなかった。
しばしの間、沈黙が流れる。
やがて腕の中で那智がぐずり始めた。
不穏な空気を感じ取ったのかもしれない。
体をさすってはみるが、泣き声は大きくなっていくばかりで全然おさまらない。
電話口から何やら声が聞こえたが、泣き声が邪魔して何を言っているのかがわからない。
仕方なく、私は泣き止まない那智をベッドに寝かせてベランダに出た。
もう1度同じ言葉を請う。
「明日会おう」
私たちは翌日の午後に会う約束をした。
場所はあの人の家。
私が那智を連れて向かうことになった。
那智を身ごもって仕事を辞めてから、初めて会うことになる。
那智を見てあの人はどう思うだろう?
いろいろ考えをめぐらせながら部屋に戻ると、泣き疲れたのか那智は涙の跡を残しながらぐっすり眠っていた。
「明日お父さんに会わせてあげるからね」
寝顔に一言告げて、私もまた眠りについた。
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