second dice

N&N

文字の大きさ
上 下
64 / 73
6.魔の弁当箱

10

しおりを挟む
「弁当って何だよ。頼んでないぞ」

「頼まれてないけどあげるって言ってんの」

「何で?」

「カズマ、私のオムライス好きでしょ?」

「何だ、その自意識過剰な理由」

確かにオムライスはおいしい。

それは認める。

でも今までは作られたから食べたのであって、オレはまた食べたいから作ってとは一言も言っていない。

なのにこいつは1度ならず2度までも作って持ってきやがった。

オレにはもう昼食のパンを手に入れたと言うのに。

「オレ、さっきパン買ったばっかりなんだよ」

「さっき買ったばかりなら返品すればいいじゃない」

「嫌だよ。オレはもうチョコといちごジャムのパンを食べる口になってるんだから」

それに購入したばかりと言ってもまた購買部に戻って返品処理をするなんて嫌だ。

今後利用しづらくなる。

「じゃあ放課後に食べればいいじゃない」

「何で昼食用に買ったものをわざわざ夕方まで置いておかないといけないんだ」

「だってほら、オムライスがあるし」

「自分で食べろよ」

「自分の分はちゃんとあるの!これはカズマの分」

「だからオレはパンがあるって言ってるだろ」

そんなやりとりを繰り返していると、茉の眉間にしわが寄ってきた。

何か怒っている。

「わかったわよ!じゃあそのパンを私がもらってあげるわよ!」

そう言うと、茉はパンが入った袋をオレから引ったくった。

「おい!何でそういうことになるんだ!」

「こうしないとオムライス食べないんでしょ?だったら私が代わりにそのパンをもらう、それでいいじゃない」

どこがいいんだ。

オレは食べようと思っていたパンを取られて、頼んでもいないオムライスが手元に残っただけだ。

これのどこがいいんだ。

オレは損をしたとしか思えない。

しかし茉はオレからパンを奪うと、颯爽と自分の教室の方へ向かって行ってしまった。

残されたオレは渋々教室へ戻った。

「遅いぞ、一真。何やってたんだよ!」

教室へ戻るや否や兄キからの怒声を浴びた。

何でオレはいろんな人に怒られないといけないんだ。

「兄キ、怒っているわりにはもうほとんど食べているじゃないか」

兄キたちはわざわざオレの机に寄ってきて食べているのに、オレが不在でも待たずに食べ進めていた。

クスミは元々食べるのが遅いのでまだ半分以上残っているが、兄キはあと2,3口で食べ終わる。

「お腹が空いてるのに何で一真の帰りを待っていないといけないんだ」

「いいよ、待たなくて。好きに食べてくれればいい」

「何だよ、待った方がいいのか待たなくていいかハッキリしてくれよな」

「オレ、待ってって一言も言ってないんだが」

そして勝手に食べ進めていただろう。

一体兄キはオレに何を求めているんだ。

そしていつ石から復活したんだ。

まぁいい。

そんなことよりオレも昼飯だ。

茉とのやりとりで変に時間を食ってしまったから、残り時間が短くなっている。

早く食べねば。

「あれ?今日はパンじゃないのか?」

お弁当と言って渡されたのはポリ袋だったのですぐには気づかれなかったが、中身を出すと兄キはそれがパンではないことを見抜いた。

袋の中にはオムライスが入っていたが、それはプラスチックの容器に入っていた。

昨日弁当箱の文句を言ったからか?

使い捨て容器になっているのは。

「お前・・・それ・・・」

兄キがオムライスを見て驚いている。

さっきここに茉が来ていたと言っていたし、これが茉のオムライスだと兄キも気づいたかもしれない。

「ご飯に牛乳って・・・ないわー」

「え?」

兄キから飛び出したのは、全く予想していなかった言葉だった。

「それ、オムライスだろ?それ、牛乳だろ?よくそんな組み合わせができるなー」

オレは改めて手元を見た。

パンを食べるつもりで購入した牛乳。

これは袋から出していたので、取られずに済んだ。

そしてパンと代えられたオムライス。

確かにこの組み合わせは良くない。

パンに牛乳は良いが、ご飯に牛乳はいただけない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

twice dice

N&N
青春
これで良かったのかなんて疑問は 他人が抱くものじゃないな

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

8年間未来人石原くん。

七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。 「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」 と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず) これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

*いにしえのコトノハ*2 レインドロップス

N&N
青春
私、後悔まではしてないから

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

処理中です...