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6.魔の弁当箱
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兄キがオレにしてきた依頼は本当にロクなものがなかった。
卵の形をしたチョコレートを買えと言ってきたり。
しかもこれはチョコのオマケで付いてくるおもちゃが目当てのものではなかったどころか、見るのもおぞましいメデューサだったというとんでもないオチ付きだ。
さらにそれをオレの部屋に置くという最低な始末までさせられた。
兄キが遊んで飛ばしてしまったNキャラのぬいぐるみを、わざわざ椅子に上って取らされたこともあった。
本人はその間、自分の好きなテレビ番組を見ていて、殴ってやろうかと本気で思った。
そんなオレが言うならまだしも、普段依頼をしないオレが兄キに言われるのは心外だ。
一体今までオレが兄キにどんな迷惑をかけたと言うのだ。
「オレ、兄キにお願いなんかしたか?」
「しただろ。年末に買い物について来いと言ったじゃないか」
「それは母ちゃんが買い出しに行けって言ったからで、オレの依頼じゃないからな?」
「それで買ったエッグチョコのオマケがあれだよ。もう本当、最悪ー」
「そのお菓子を買ったのは兄キだし、メデューサを当てたのも兄キだろ。オレのせいにすんなよ」
それに至ってはオレは全く関係ないし、どちらかと言えば被害にまで遭っているんだからな。
「ところでお願いって何ですか?」
オレたちが言い合っていると、近くにいたクスミが声をかけてきた。
最近では、昼食はなぜか3人で食べている。
最初は兄キとクスミ、2人で食べていたのだが、いつの間にか2人が昼休憩になるとオレの机に寄ってきて食べるようになった。
1人になったオレを気遣っての行動なのかどうかはわからないが、オレの机1つに3人が集まるものだから、オレのスペースが狭くて仕方がない。
「オレ、財布持ってくるの忘れたから金貸して欲しいんだよ」
「そんなの嫌に決まってるだろ。何で一真に金を貸さなきゃいけないんだ」
「金がないとお昼ご飯のパンが買えないだろ」
「お昼ご飯のパンって何だよ。ご飯かパンかハッキリしろよ」
「いや、パンだけど」
「じゃあお昼ごパンって言えよ。ややこしいだろ」
「悪かったよ。・・・って、そんなに怒らなくても良くね?」
しかもお昼ごパンって何だよ。
新語か?
言いにくいわ。
「ユノモトくんはお昼いつもパンですね」
オレたちが熱を上げて言い合っていても、クスミはいつも冷静だ。
「おうよ。オレはいつも母ちゃんが菓子パンを買ってくれてるからそれを持ってくるんだ」
パンはおにぎりよりも賞味期限が長い。
だから母ちゃんは買い物ついでに菓子パンを買ってはカップ麺のように取り置きしておいてくれる。
兄キはその菓子パンを昼食にしているのだ。
もちろん菓子パンはたくさん買ってあるので、オレも昼食用に持っていってもいいと言われているが、居候の身なのであまりあれもこれも・・・というのは気が引ける。
なので昼食はそれを選ばず、コンビニや購買で買うのが常だった。
一応毎月お小遣いは親から口座に振り込んでもらえるので、そこから昼食代として使っている。
「なぁ兄キ、頼むよ。早くしないと昼休憩終わっちゃうだろ」
「え!それは困る!早く食べようぜ、クスミっち」
「兄キ!!」
オレが困っているのに無視して自分は食事を始めようとするなんて、それでもオレのイトコか。
そんなひどいイトコを持ってオレは悲しいぞ。
「しょうがないだろー。オレ今お年玉しか持ってないし」
と言って兄キはポケットからポチ袋を出してきた。
袋にはお年玉と書いてある。
「お年玉を学校に持ってくるなよ」
「何でだよ。この小さい袋にお札や小銭が入るんだから財布よりコンパクトで便利だろ」
「おつりでお札と小銭がいっぱいになったらパンパンになるだろ」
「あ、そうだな。じゃあやっぱりお金は貸せないな。中に1万円札しか入ってないし」
しまった。
余計なことを言うんじゃなかった。
これでもう兄キは完全にオレにお金を貸す気が失せている。
しかしこのままだと本当にまずい。
午後からの授業は2時間あるし、今ですらお腹が空いているのに何も食べないままで数時間持つわけがない。
卵の形をしたチョコレートを買えと言ってきたり。
しかもこれはチョコのオマケで付いてくるおもちゃが目当てのものではなかったどころか、見るのもおぞましいメデューサだったというとんでもないオチ付きだ。
さらにそれをオレの部屋に置くという最低な始末までさせられた。
兄キが遊んで飛ばしてしまったNキャラのぬいぐるみを、わざわざ椅子に上って取らされたこともあった。
本人はその間、自分の好きなテレビ番組を見ていて、殴ってやろうかと本気で思った。
そんなオレが言うならまだしも、普段依頼をしないオレが兄キに言われるのは心外だ。
一体今までオレが兄キにどんな迷惑をかけたと言うのだ。
「オレ、兄キにお願いなんかしたか?」
「しただろ。年末に買い物について来いと言ったじゃないか」
「それは母ちゃんが買い出しに行けって言ったからで、オレの依頼じゃないからな?」
「それで買ったエッグチョコのオマケがあれだよ。もう本当、最悪ー」
「そのお菓子を買ったのは兄キだし、メデューサを当てたのも兄キだろ。オレのせいにすんなよ」
それに至ってはオレは全く関係ないし、どちらかと言えば被害にまで遭っているんだからな。
「ところでお願いって何ですか?」
オレたちが言い合っていると、近くにいたクスミが声をかけてきた。
最近では、昼食はなぜか3人で食べている。
最初は兄キとクスミ、2人で食べていたのだが、いつの間にか2人が昼休憩になるとオレの机に寄ってきて食べるようになった。
1人になったオレを気遣っての行動なのかどうかはわからないが、オレの机1つに3人が集まるものだから、オレのスペースが狭くて仕方がない。
「オレ、財布持ってくるの忘れたから金貸して欲しいんだよ」
「そんなの嫌に決まってるだろ。何で一真に金を貸さなきゃいけないんだ」
「金がないとお昼ご飯のパンが買えないだろ」
「お昼ご飯のパンって何だよ。ご飯かパンかハッキリしろよ」
「いや、パンだけど」
「じゃあお昼ごパンって言えよ。ややこしいだろ」
「悪かったよ。・・・って、そんなに怒らなくても良くね?」
しかもお昼ごパンって何だよ。
新語か?
言いにくいわ。
「ユノモトくんはお昼いつもパンですね」
オレたちが熱を上げて言い合っていても、クスミはいつも冷静だ。
「おうよ。オレはいつも母ちゃんが菓子パンを買ってくれてるからそれを持ってくるんだ」
パンはおにぎりよりも賞味期限が長い。
だから母ちゃんは買い物ついでに菓子パンを買ってはカップ麺のように取り置きしておいてくれる。
兄キはその菓子パンを昼食にしているのだ。
もちろん菓子パンはたくさん買ってあるので、オレも昼食用に持っていってもいいと言われているが、居候の身なのであまりあれもこれも・・・というのは気が引ける。
なので昼食はそれを選ばず、コンビニや購買で買うのが常だった。
一応毎月お小遣いは親から口座に振り込んでもらえるので、そこから昼食代として使っている。
「なぁ兄キ、頼むよ。早くしないと昼休憩終わっちゃうだろ」
「え!それは困る!早く食べようぜ、クスミっち」
「兄キ!!」
オレが困っているのに無視して自分は食事を始めようとするなんて、それでもオレのイトコか。
そんなひどいイトコを持ってオレは悲しいぞ。
「しょうがないだろー。オレ今お年玉しか持ってないし」
と言って兄キはポケットからポチ袋を出してきた。
袋にはお年玉と書いてある。
「お年玉を学校に持ってくるなよ」
「何でだよ。この小さい袋にお札や小銭が入るんだから財布よりコンパクトで便利だろ」
「おつりでお札と小銭がいっぱいになったらパンパンになるだろ」
「あ、そうだな。じゃあやっぱりお金は貸せないな。中に1万円札しか入ってないし」
しまった。
余計なことを言うんじゃなかった。
これでもう兄キは完全にオレにお金を貸す気が失せている。
しかしこのままだと本当にまずい。
午後からの授業は2時間あるし、今ですらお腹が空いているのに何も食べないままで数時間持つわけがない。
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