second dice

N&N

文字の大きさ
上 下
62 / 73
6.魔の弁当箱

しおりを挟む
兄キがオレにしてきた依頼は本当にロクなものがなかった。

卵の形をしたチョコレートを買えと言ってきたり。

しかもこれはチョコのオマケで付いてくるおもちゃが目当てのものではなかったどころか、見るのもおぞましいメデューサだったというとんでもないオチ付きだ。

さらにそれをオレの部屋に置くという最低な始末までさせられた。

兄キが遊んで飛ばしてしまったNキャラのぬいぐるみを、わざわざ椅子に上って取らされたこともあった。

本人はその間、自分の好きなテレビ番組を見ていて、殴ってやろうかと本気で思った。

そんなオレが言うならまだしも、普段依頼をしないオレが兄キに言われるのは心外だ。

一体今までオレが兄キにどんな迷惑をかけたと言うのだ。

「オレ、兄キにお願いなんかしたか?」

「しただろ。年末に買い物について来いと言ったじゃないか」

「それは母ちゃんが買い出しに行けって言ったからで、オレの依頼じゃないからな?」

「それで買ったエッグチョコのオマケがあれだよ。もう本当、最悪ー」

「そのお菓子を買ったのは兄キだし、メデューサを当てたのも兄キだろ。オレのせいにすんなよ」

それに至ってはオレは全く関係ないし、どちらかと言えば被害にまで遭っているんだからな。

「ところでお願いって何ですか?」

オレたちが言い合っていると、近くにいたクスミが声をかけてきた。

最近では、昼食はなぜか3人で食べている。

最初は兄キとクスミ、2人で食べていたのだが、いつの間にか2人が昼休憩になるとオレの机に寄ってきて食べるようになった。

1人になったオレを気遣っての行動なのかどうかはわからないが、オレの机1つに3人が集まるものだから、オレのスペースが狭くて仕方がない。

「オレ、財布持ってくるの忘れたから金貸して欲しいんだよ」

「そんなの嫌に決まってるだろ。何で一真に金を貸さなきゃいけないんだ」

「金がないとお昼ご飯のパンが買えないだろ」

「お昼ご飯のパンって何だよ。ご飯かパンかハッキリしろよ」

「いや、パンだけど」

「じゃあお昼ごパンって言えよ。ややこしいだろ」

「悪かったよ。・・・って、そんなに怒らなくても良くね?」

しかもお昼ごパンって何だよ。

新語か?

言いにくいわ。

「ユノモトくんはお昼いつもパンですね」

オレたちが熱を上げて言い合っていても、クスミはいつも冷静だ。

「おうよ。オレはいつも母ちゃんが菓子パンを買ってくれてるからそれを持ってくるんだ」

パンはおにぎりよりも賞味期限が長い。

だから母ちゃんは買い物ついでに菓子パンを買ってはカップ麺のように取り置きしておいてくれる。

兄キはその菓子パンを昼食にしているのだ。

もちろん菓子パンはたくさん買ってあるので、オレも昼食用に持っていってもいいと言われているが、居候の身なのであまりあれもこれも・・・というのは気が引ける。

なので昼食はそれを選ばず、コンビニや購買で買うのが常だった。

一応毎月お小遣いは親から口座に振り込んでもらえるので、そこから昼食代として使っている。

「なぁ兄キ、頼むよ。早くしないと昼休憩終わっちゃうだろ」

「え!それは困る!早く食べようぜ、クスミっち」

「兄キ!!」

オレが困っているのに無視して自分は食事を始めようとするなんて、それでもオレのイトコか。

そんなひどいイトコを持ってオレは悲しいぞ。

「しょうがないだろー。オレ今お年玉しか持ってないし」

と言って兄キはポケットからポチ袋を出してきた。

袋にはお年玉と書いてある。

「お年玉を学校に持ってくるなよ」

「何でだよ。この小さい袋にお札や小銭が入るんだから財布よりコンパクトで便利だろ」

「おつりでお札と小銭がいっぱいになったらパンパンになるだろ」

「あ、そうだな。じゃあやっぱりお金は貸せないな。中に1万円札しか入ってないし」

しまった。

余計なことを言うんじゃなかった。

これでもう兄キは完全にオレにお金を貸す気が失せている。

しかしこのままだと本当にまずい。

午後からの授業は2時間あるし、今ですらお腹が空いているのに何も食べないままで数時間持つわけがない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

twice dice

N&N
青春
これで良かったのかなんて疑問は 他人が抱くものじゃないな

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

8年間未来人石原くん。

七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。 「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」 と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず) これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ヤマネ姫の幸福論

ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。 一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。 彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。 しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。 主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます! どうぞ、よろしくお願いいたします!

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...