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6.魔の弁当箱
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何で大声でオレを呼ぶんだよー!
バカ!
無神経!!
声をかけるなら教室の外に出てこい!!
「どうしたの?私に用事?」
茉は廊下側の窓までやってくると、窓枠に手をかけながら自意識過剰とも言える言葉を平気で口にした。
確かに茉に用事があるのだが、何か・・・何か発言がムカつく。
「これ!」
オレは怒りを抑えながら、しかしぶっきらぼうに紙袋を差し出した。
最初はピンときていなかった茉は、中身があの弁当箱だとわかると再び大声を上げた。
「えー、わざわざ洗って持ってきてくれたのー?」
「当たり前だろう。わざわざ普通の弁当箱に入れやがって」
「何?どういう意味?」
「使い捨ての容器だったらわざわざ洗わなくて済んだし、返す手間もなかったって言ってんだよ」
「あーそっか。ふーん、なるほどねー」
茉は本当にそう思っているのか謎で、感情のこもらない棒読みな言い方だった。
それが余計しゃくに障る。
そして中にいる女子たちの視線にも耐えきれそうになかった。
「じゃあ、確かに渡したからな!」
早くその場を去りたくて、オレは強引に話を切り上げた。
「ねぇ!」
しかし茉はしつこく話しかけてくる。
何だよ、うるさいな。
「おいしかった?」
「はぁ?」
「オムライス!」
「そんなの、完食してるのを見たらわかるだろ」
「私は味の感想を知りたいの。ねぇ、おいしかった?」
茉はえぬたまでバイトしていたのだから、味はえぬたまになっていておいしい。
それは認める。
そしてちゃんと言ったはずだ。
前にも。
何度同じことを言わせるんだ。
オムライスが皿に入っていようが弁当箱に入っていようが、味は同じだ。
変わるわけがない。
「・・・おいしかったよ」
ため息混じりに答える。
正直、何度も同じ答えを言わされるのは面倒だ。
「おいしかったらもっと嬉しそうに言ってよ」
「うるさいな。最大の褒め言葉やってんのに文句言うな!」
「ふーんだ。バカズマ」
こ、こいつ・・・年が明けても言いやがった。
バカはお前だ。
こんなところで目立つ会話を繰り広げやがって!!
「オレ忙しいからもう帰るぞ。じゃあな」
今度こそオレはそう言って、そそくさとその場を離れた。
茉が何かを言っていたような気がするが、留まっている場合ではない。
オレは逃げるように家路へ急いだ。
翌日。
オレは昨日から妙な胸騒ぎをしている。
茉に弁当箱を返したから、あれはあれで終わったはずなのだが、よく考えれば年が明けてから茉はオレの前に現れていなかったのだし、わざわざオレがまた茉と会ってしまったから、それがスイッチになってしまったんじゃないかという気がしてきた。
また茉が来ることになったら困る。
オレの残りの高校生活が汚されてしまう。
・・・と、そんな心配事をしていたからか、オレは財布を持ってくるのを忘れてしまった。
始業式の翌日からは通常授業なので、午後もあるから昼食が必要なのに、無一文では購買に行けない。
そしてあっという間に昼休憩だ。
オレは嫌々ながらも兄キに声をかけた。
金を借りるとなると、他人より身内だ。
兄キに頼みごとなどしたくないのが本音だが。
「兄キー、ちょっとお願いがあるんだが」
「断る!」
「早ぇーよ。まだ何も言ってないだろ」
兄キはオレが用件を言う前に突っぱねた。
「一真のお願いはロクなことがないからな」
それはこっちのセリフだ。
バカ!
無神経!!
声をかけるなら教室の外に出てこい!!
「どうしたの?私に用事?」
茉は廊下側の窓までやってくると、窓枠に手をかけながら自意識過剰とも言える言葉を平気で口にした。
確かに茉に用事があるのだが、何か・・・何か発言がムカつく。
「これ!」
オレは怒りを抑えながら、しかしぶっきらぼうに紙袋を差し出した。
最初はピンときていなかった茉は、中身があの弁当箱だとわかると再び大声を上げた。
「えー、わざわざ洗って持ってきてくれたのー?」
「当たり前だろう。わざわざ普通の弁当箱に入れやがって」
「何?どういう意味?」
「使い捨ての容器だったらわざわざ洗わなくて済んだし、返す手間もなかったって言ってんだよ」
「あーそっか。ふーん、なるほどねー」
茉は本当にそう思っているのか謎で、感情のこもらない棒読みな言い方だった。
それが余計しゃくに障る。
そして中にいる女子たちの視線にも耐えきれそうになかった。
「じゃあ、確かに渡したからな!」
早くその場を去りたくて、オレは強引に話を切り上げた。
「ねぇ!」
しかし茉はしつこく話しかけてくる。
何だよ、うるさいな。
「おいしかった?」
「はぁ?」
「オムライス!」
「そんなの、完食してるのを見たらわかるだろ」
「私は味の感想を知りたいの。ねぇ、おいしかった?」
茉はえぬたまでバイトしていたのだから、味はえぬたまになっていておいしい。
それは認める。
そしてちゃんと言ったはずだ。
前にも。
何度同じことを言わせるんだ。
オムライスが皿に入っていようが弁当箱に入っていようが、味は同じだ。
変わるわけがない。
「・・・おいしかったよ」
ため息混じりに答える。
正直、何度も同じ答えを言わされるのは面倒だ。
「おいしかったらもっと嬉しそうに言ってよ」
「うるさいな。最大の褒め言葉やってんのに文句言うな!」
「ふーんだ。バカズマ」
こ、こいつ・・・年が明けても言いやがった。
バカはお前だ。
こんなところで目立つ会話を繰り広げやがって!!
「オレ忙しいからもう帰るぞ。じゃあな」
今度こそオレはそう言って、そそくさとその場を離れた。
茉が何かを言っていたような気がするが、留まっている場合ではない。
オレは逃げるように家路へ急いだ。
翌日。
オレは昨日から妙な胸騒ぎをしている。
茉に弁当箱を返したから、あれはあれで終わったはずなのだが、よく考えれば年が明けてから茉はオレの前に現れていなかったのだし、わざわざオレがまた茉と会ってしまったから、それがスイッチになってしまったんじゃないかという気がしてきた。
また茉が来ることになったら困る。
オレの残りの高校生活が汚されてしまう。
・・・と、そんな心配事をしていたからか、オレは財布を持ってくるのを忘れてしまった。
始業式の翌日からは通常授業なので、午後もあるから昼食が必要なのに、無一文では購買に行けない。
そしてあっという間に昼休憩だ。
オレは嫌々ながらも兄キに声をかけた。
金を借りるとなると、他人より身内だ。
兄キに頼みごとなどしたくないのが本音だが。
「兄キー、ちょっとお願いがあるんだが」
「断る!」
「早ぇーよ。まだ何も言ってないだろ」
兄キはオレが用件を言う前に突っぱねた。
「一真のお願いはロクなことがないからな」
それはこっちのセリフだ。
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