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6.魔の弁当箱

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今日の予定は朝のホームルーム後、体育館で始業式。

その後また教室に戻って2度目のホームルームがあって、終了だ。

ホームルームの内容はクラスによって異なるが、うちのクラスは担任が適当なので

「明日から授業始まるから遅刻するなよー」

という一言だけで終わってしまった。

担任が出ていってしまったので、もう生徒も帰っていいことになり教室は騒がしい。

「おーい、一真。今からクスミっちの家に特大Nキャラスタンプ作りに行くけど、お前も来るか?」

「特大Nキャラスタンプって何だよ」

「名の通り特大のスタンプを作るんだよ。これだと小さいだろ?」

そう言って兄キは両手の甲をオレに見せてきた。

ちゃんと死守できているではないか。

1度トイレに行ったはずだが、ちゃんと手は洗っているんだろうな?

「オレ、弁当箱返さないと」

「あ、そっか。そうだったな。じゃあな」

「おい、待て。あっさりすぎるだろ。ちょっとは一緒に付いていってやろうか?とかないのかよ」

「オレ呪われたくないもん。クスミっちも呪われたくないと思うし。オレたちスタンプ作りで忙しいから、じゃあな」

そう言うと兄キは本当にクスミとともに行ってしまった。

くそー、なんて薄情なやつなんだ。

この先兄キが困っていても絶対助けてやらん!

オレは渋々紙袋を持って茉の教室に向かった。

ホームルームが終わったのはオレのクラスだけだと思っていたが、多分オレのクラスが騒がしくなったからだろう、他のクラスも次々と解散状態になっていた。

茉の教室は同じ階にあるが1番端で、移動教室でも通ることが少ないから久々に近寄ることになる。

茉と同じクラスに誰がいたっけ?

誰か知り合いに言付けて帰ろうか?

いやいやそれでもそいつにオレと茉との関係を疑われることは確かだ。

部活動をしていない、同じクラスでもない、そんな2人が冬休みに接点があったと知れたら何を言われるかたまったもんじゃない。

やっぱりこれは茉に直接渡そう。

決意が固まったところで茉の教室に着いた。

茉のクラスもホームルームは終わっていたが、教室内には人がたくさん残っている。

というか、わざと残っているようで、女子どもが椅子に座って大きな声で喋っては笑っている。

男子どもはそんな女子に追い出されるようにそろそろと教室を出ていっている。

何だこのクラスは。

女子が天下を取っているような雰囲気。

この中にきっと茉もいると思われるが、こんな9割方女子しか残っていないような教室に入って行きたくない。

何も弁当箱は今日返さなくてはいけないものではないし、そもそも返してと言われていない。

そうだ。

向こうが勝手に作って手渡してきたのだから、返す義務なんてないし、弁当箱ごと貰ってしまえばいいんだ。

使い道ないけど。

と思ったのも束の間、ここまで来て何を言っているんだ、ともう1人のオレが否定してきた。

こんなもの持ったままだと茉に借りを作ったみたいで嫌だし、第一これをネタに別の依頼をしてくるかもしれない。

これを見る度に茉のことを思い出してしまうのも嫌だ。

嫌々ながら教室まで来たんだし、あともう少しだけ嫌な気持ちになれば解放される。

行け、行くんだ一真。

オレは再び教室内を見た。

女子がいっぱいいる。

もうここは四の五の言っていられない。

1番手前にいる話しかけやすそうな人に「これ渡しておいて」と言付けてとっとと去ろう。

そうだ、そうしようと思ったが、オレはある重大なことに気がついた。

オレ、茉の名字知らねぇ・・・。

茉は実は下の名前だ。

情報通でおなじみの茉は、みんなからそう呼ばれているからオレも普通にそう呼んでいたが、いきなり登場した別クラスの男が、茉なんて名前で呼んでいたら変に思われるかもしれない。

と言ってみんなが茉、茉と呼んでいるから肝心の名字はわからない。

うおー、どうすればいいんだ。

やっぱりここは弁当箱はそのまま貰ってしまおう作戦に戻すしかない。

今後、茉が何かを言ってきても無視すればいいだけの話だし。

そうだ、そうしよう・・・と思ったが、少し遅かった。

「あ!カズマー!!」

教室内にいる茉がオレに気づいて大声を上げたのだ。

当然、中にいるクラスメイトからは注目の的になった。
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