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6.魔の弁当箱
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兄キは年が明けても会っていただろうが、オレとは久々の再会だ。
前に会った時ともちろん残念ながら何も変わってはいない。
そんなクスミは手に何か持っていた。
消しゴムのように見える。
「せっかくだから一真も手の甲に押してもらえ。このNキャラスタンプ、クスミっちの手作りだから」
兄キの紹介でクスミは手に持っていた消しゴムの片面をこちらに向けた。
Nキャラの形に彫られた消しゴムだ。
「作ったんだ・・・これ」
Nキャラに何の興味も抱かないオレは、かろうじてそう発言した。
Nキャラを前にすると、どうも気の利いたことを言えない。
「Nキャラのスタンプは売っていないので、冬休みを使って自作しました。その出来を1番にユノモトくんに見てもらいたくて」
なるほど、それで年賀状か。
兄キが見るより先にオレが見てしまったが、クスミがユノモトくんと言っているので許してもらおう。
オレもユノモトだし。
「どうですか?」
「え?あー、うん。いいと思うよ」
オレがそう言うと、すかさず兄キがオレにチョップを出してきた。
「痛っ、何だよ」
「お前、クスミっちのこれを見てそんな言葉しか出てこないのか」
出てこないのだから仕方がない。
なぜならオレはNキャラに興味がないからだ。
「ここの曲線なんてすごくよく彫れてるだろ?普通はこんなにうまく彫れないぞ?なのにクスミっちは安定の一発成功だからな」
「え?」
オレはクスミを見た。
相変わらず表情が読み取れない。
「こういうのって先に下絵とか描くだろ?クスミっちは描かずにいきなり彫ってるからな!」
「え?」
「しかもミスなし!線の太さも均等!さすがNキャラが常に頭に入っている人は出来が違うよ」
「え?」
「え?ってお前、えしか言えないえ星人か」
えぇ~?
消しゴムに下描きなしで彫って、インクをつけて押したら完璧Nキャラ?
どれだけ器用なんだ。
「売ったら売れるんじゃない?これ」
「売るわけないだろー!!」
「わっ、何だよ」
いきなりオレとクスミの間を割って入ってきたと思ったら、兄キはクスミから消しゴム・・・もとい、スタンプを取り上げた。
「これはクスミっちとオレとの努力の結晶だぞ?簡単に人様の手に渡すわけにはいかないだろ!!」
「え?兄キも何か手伝っていたのか!?」
オレはクスミがさっきあんなふうに言うから、てっきり自分1人で作成していたのかと思っていたが・・・。
「オレは普段からクスミっちにNキャラについて語り尽くしているだろ。そのおかげでクスミっちは毎日Nキャラのことを考えていられて、想像だけでスタンプが作れたんだ」
「・・・・・・・・・」
それは・・・兄キは関係ないだろう。
何勝手にクスミの作品に自分も絡もうとしているんだ。
兄キに関係なくクスミはNキャラのことが好きだったし、兄キと関わる前からNキャラまみれの生活を送っていたじゃないか。
「はい。こんなにうまくできたのもユノモトくんのおかげです」
「えー!!」
スタンプ作成のどこに兄キの力があったんだ!?
ないだろう。
リップサービスしすぎだ。
「ま、そういうわけだ。だからこれはクスミっちとオレの財産ってことで」
何だかオレにはそううまく言って兄キがクスミからこのスタンプを奪おうとしているような気がしてならない。
「オレが持っていると失くしそうだから、これはクスミっちが持っていてくれ」
「はい」
っていうかそれ、そもそもクスミのものだし!
「あ、ついでに右手の甲にもスタンプ押してくれ。両手で最強だ」
「はい」
Nキャラはザコキャラなのに、どこがどう最強なんだ。
本当に意味がわからない。
しかし兄キは体育館に移動した後も両手の甲を友達に見せびらかしては最強と騒いでいた。
やれやれ、兄キはいくつになってもこの調子だ。
性格が真逆のクスミもよく付き合っていられるものだ。
クスミにしてみたら友達0の状態から兄キとオレと、最近では茉とも仲良くなれたわけだから、良しとしているところがあるのかもしれない。
前に会った時ともちろん残念ながら何も変わってはいない。
そんなクスミは手に何か持っていた。
消しゴムのように見える。
「せっかくだから一真も手の甲に押してもらえ。このNキャラスタンプ、クスミっちの手作りだから」
兄キの紹介でクスミは手に持っていた消しゴムの片面をこちらに向けた。
Nキャラの形に彫られた消しゴムだ。
「作ったんだ・・・これ」
Nキャラに何の興味も抱かないオレは、かろうじてそう発言した。
Nキャラを前にすると、どうも気の利いたことを言えない。
「Nキャラのスタンプは売っていないので、冬休みを使って自作しました。その出来を1番にユノモトくんに見てもらいたくて」
なるほど、それで年賀状か。
兄キが見るより先にオレが見てしまったが、クスミがユノモトくんと言っているので許してもらおう。
オレもユノモトだし。
「どうですか?」
「え?あー、うん。いいと思うよ」
オレがそう言うと、すかさず兄キがオレにチョップを出してきた。
「痛っ、何だよ」
「お前、クスミっちのこれを見てそんな言葉しか出てこないのか」
出てこないのだから仕方がない。
なぜならオレはNキャラに興味がないからだ。
「ここの曲線なんてすごくよく彫れてるだろ?普通はこんなにうまく彫れないぞ?なのにクスミっちは安定の一発成功だからな」
「え?」
オレはクスミを見た。
相変わらず表情が読み取れない。
「こういうのって先に下絵とか描くだろ?クスミっちは描かずにいきなり彫ってるからな!」
「え?」
「しかもミスなし!線の太さも均等!さすがNキャラが常に頭に入っている人は出来が違うよ」
「え?」
「え?ってお前、えしか言えないえ星人か」
えぇ~?
消しゴムに下描きなしで彫って、インクをつけて押したら完璧Nキャラ?
どれだけ器用なんだ。
「売ったら売れるんじゃない?これ」
「売るわけないだろー!!」
「わっ、何だよ」
いきなりオレとクスミの間を割って入ってきたと思ったら、兄キはクスミから消しゴム・・・もとい、スタンプを取り上げた。
「これはクスミっちとオレとの努力の結晶だぞ?簡単に人様の手に渡すわけにはいかないだろ!!」
「え?兄キも何か手伝っていたのか!?」
オレはクスミがさっきあんなふうに言うから、てっきり自分1人で作成していたのかと思っていたが・・・。
「オレは普段からクスミっちにNキャラについて語り尽くしているだろ。そのおかげでクスミっちは毎日Nキャラのことを考えていられて、想像だけでスタンプが作れたんだ」
「・・・・・・・・・」
それは・・・兄キは関係ないだろう。
何勝手にクスミの作品に自分も絡もうとしているんだ。
兄キに関係なくクスミはNキャラのことが好きだったし、兄キと関わる前からNキャラまみれの生活を送っていたじゃないか。
「はい。こんなにうまくできたのもユノモトくんのおかげです」
「えー!!」
スタンプ作成のどこに兄キの力があったんだ!?
ないだろう。
リップサービスしすぎだ。
「ま、そういうわけだ。だからこれはクスミっちとオレの財産ってことで」
何だかオレにはそううまく言って兄キがクスミからこのスタンプを奪おうとしているような気がしてならない。
「オレが持っていると失くしそうだから、これはクスミっちが持っていてくれ」
「はい」
っていうかそれ、そもそもクスミのものだし!
「あ、ついでに右手の甲にもスタンプ押してくれ。両手で最強だ」
「はい」
Nキャラはザコキャラなのに、どこがどう最強なんだ。
本当に意味がわからない。
しかし兄キは体育館に移動した後も両手の甲を友達に見せびらかしては最強と騒いでいた。
やれやれ、兄キはいくつになってもこの調子だ。
性格が真逆のクスミもよく付き合っていられるものだ。
クスミにしてみたら友達0の状態から兄キとオレと、最近では茉とも仲良くなれたわけだから、良しとしているところがあるのかもしれない。
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