second dice

N&N

文字の大きさ
上 下
54 / 73
5.メデューサの呪い

しおりを挟む
オレは諦めて弁当箱を目の前に置いた。

ご丁寧に使い捨てではない通常の弁当箱だ。

これは食べたら洗って返せということか?

使い棄ての容器であれば気兼ねなく済むものを。

今流行のSDGsってやつか。

溜息をつきながら弁当箱の蓋を開ける。

中にはオムライスが1つ、ドンと構えていた。

「おお、オムライスか」

横から父ちゃんが弁当箱を覗き込みながら言った。

何となく想像はついた。

なぜなら茉はオレにオムライス以外作ったことがない。

他にも作れるらしいが、オレはここ最近、昼食は茉のオムライスばかりだ。

オムライスは好物だから毎日食べても飽きないのだが、目の前で寿司など別のメニューを見てしまうと心は揺らぐ。

「父ちゃん、オムライスと寿司、代えてあげようか?」

父ちゃんのオムライスを見る目が食べたいと言っているように見えたので、とりあえず提案してみた。

オムライスは何度も食べたので、やはりオレは寿司が捨てがたい。

「まさか、そんな一真の彼女が作ったものを奪えるわけがないだろう」

「彼女じゃねーよ」

「彼女でもないのにわざわざ休みにオムライスを作ってくるやつがいるわけないだろう」

「いや、いるじゃん。現に」

オレは茉を彼女にした覚えは1度もない。

付き合ってと言われたこともなければ自分から付き合おうなんてまさか言うはずがない。

相手は茉だ。

茉をそんな目で見ていない。

「一真はわかってないわねぇ」

オレと父ちゃんのやり取りを見ながら母ちゃんは溜息をついた。

「そうだ。一真はわかっていない」

兄キも母ちゃんと同じように溜息をついた。

何なんだ、一体。

「お前、呪いのターゲットにされたんだよ。メデューサって1人のキャラに同じ攻撃ばっかりしてくるだろ?だからこれは・・・オムライス攻撃だ」

「その攻撃を受けてオレはどんなダメージを受けるんだ」

「茉のオムライスしか食べたくなくなる。そして飢える」

「大丈夫だ。オレは今、寿司が食べたい」

「徐々になるんだよ。年が明けたら一真はジ・エンドだ」

何だその不吉な年の終わりは。

オレは茉のオムライスで呪われてやられるのか。

「な?そういうことだよな?母ちゃん」

「そうねぇ」

母ちゃんのさっきの言葉は絶対そういうことじゃなさそうなのに、なぜか否定せずずっと微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

twice dice

N&N
青春
これで良かったのかなんて疑問は 他人が抱くものじゃないな

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

テミスの娘たち~Article・Girls

Toshiaki・U
青春
「きょうって、なんの日だっけ?オモちゃん」 「なに言ってるんです、ノンコ。決まってるじゃないですか」 「ああ、5月の3日だから、ゴミの日。なあんだ、ナゴミちゃんの記念日だね!」 「ゴミの日ではあるんでしょうけど、もっと大事な日ですよ、ノンコ。ナゴミも何か言いなさい」 「5と3だから、降参。日本がどこかの国に戦争で負けた日だっけ?」 「もうっ、ナゴミまで! 体育会系はこれだから。でも、ちょっと近づきました」 「オモちゃんだって、陸上部じゃん」 「そ、そうですが。私たち、法学部志望の女子高生ですよ」 「あっ、わかった! オモちゃん、いいヒント! 憲法記念日だね!」 「だから、きょう、こうして試験対策の合宿にきてるんじゃないですか」 「おお! お前ら、お揃いだな。出来の悪いお前らに、これから補習だ!」 「ツクモせんせーい! いま、その辺で怪しい人影を見ましたーー!」 「なにいーっ?! だが、その可能性は、大ありだ。復讐だろうな」 『テミスの娘たち~アーティクル・ガールズ』始動です。 「樹上都市…」に比べれば、相当の「短編」です。

処理中です...