second dice

N&N

文字の大きさ
上 下
48 / 73
5.メデューサの呪い

しおりを挟む
全部で6種類あるそれは、チョコを食べるまで中に何が入っているかはわからない。

前もってこれが入っているかも、という5種類は想定できる。

あと1種類はシークレットなので、当たるまでわからない。

兄キの下手くそな説明を要約するとこういうことだ。

兄キの説明をそのまま表すと、軽く1ページは使い果たしてしまう。

「オレはこのシークレットはNキャラだと思っている」

「・・・そうか。当たるといいな」

と言いつつ、心の中ではシークレットがザコキャラなわけがないだろう、と突っ込んでいる。

口に出せば怒り出すから言わない。

こんなスーパーでNキャラの話題を続けたくない。

会計を済ませて外に出ると、兄キは早速お菓子を開けている。

家に帰るまで待つという選択肢はないらしい。

買い物袋を腕にぶら下げながら、ゴミをオレに預けながら、流れるように開けていく。

今は冬だからいいが、チョコの中に玩具なんて夏はドロドロで出てくるんじゃないかと思うと嫌な想像しかできない。

「あれ?Nキャラじゃないな」

卵型のチョコをペロリと平らげた兄キは、中に入っていた玩具を見て不満そうに言った。

玩具は透明な袋に入っているのだが、開けて取り出さなくてもすぐに違うとオレでもわかった。

Nキャラは黄色なのだ。

兄キが持っている玩具は緑色だった。

「何が当たったんだ?」

「色でわかるだろ。メデューサだよ」

「ぶっ」

よりによってメデューサ!

ここ数日、こいつの名前を聞かなかった日はない。

そのせいで今日もメデューサを引いてしまうなんて。

よっぽど運がないというか、呪われてるだろう、絶対。

「こんなのいらねー。一真にやるわ」

「いらねーよ」

散々茉に付きまとわれて嫌な思いをしているのに、茉と似ているメデューサなんて欲しいわけがない。

「あれ?っていうか、さっき言った5種類の中にメデューサって入ってなかったよな?」

さっき兄キが前もってわかっている5種類を声に出していたが、それにはメデューサが入っていなかった。

ということは、シークレットキャラはメデューサだ。

「うわっ、マジだ。シークレットってメデューサかよ。ふざけんなー」

「メデューサって一応中ボスなんだろ?シークレットになるにはいい地位じゃないか」

「シークレットがメデューサで喜ぶやつが何人いると思ってるんだよ。呪いかけられたとしか思えねーよ」

「・・・確かに」

実際、オレはそう思ったわけだし。

「シークレットはNキャラにすべきだって訴えてやろうかな?おい、お客様相談室の電話番号はどこだ?」

「必死だな。今から変更なんてされるわけないからやめとけ。どうせ世間は仕事納めできっと営業していない」

「くっ・・・そうか。図りやがったな。反論させない作戦か」

「いやいや、電話したければ年明けにすればいいだろ。どうしてもしたいなら」

「オレは今文句を言いたいんだ。後日になるなら一真、代わりにやっといてくれ」

「オレは別に文句などない」

「何?貴重な200円がこんなメデューサみたいなつまらん玩具に化けたんだぞ?もっと怒れ」

大丈夫だ。

オレはこれがNキャラだったとしても、エヌマーだったとしても、兄キがカゴに商品を入れた時点で金の無駄遣いだと思っている。

っていうか、200円もするのかよ。

「まぁチョコは食べられたからいっか。エッグチョコのいいところはこれだ。玩具で失敗してもチョコがあるから割り切れる」

その割には文句が多かった気がするが。

兄キはそう言ってメデューサをオレの服の胸ポケットに入れた。

「おい、メデューサをオレのポケットに入れるんじゃねえ」

「200円無駄に使ったから、半分ずつ分け合いだ。オレはチョコを食べたから、一真にはメデューサを」

「ありがとう。いらねーから」

「何だとー、せっかくの好意を!!」

しかし兄キはメデューサを取り返そうとしない。

よほどいらないのだろう。

と言ってオレも買い物袋で両手はふさがっているし、わざわざそれを片方の手に預けて取り出すのも煩わしい。

家に着いてから兄キの部屋へ持っていこう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

twice dice

N&N
青春
これで良かったのかなんて疑問は 他人が抱くものじゃないな

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

私の隣は、心が見えない男の子

舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。 隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。 二人はこの春から、同じクラスの高校生。 一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。 きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

テミスの娘たち~Article・Girls

Toshiaki・U
青春
「きょうって、なんの日だっけ?オモちゃん」 「なに言ってるんです、ノンコ。決まってるじゃないですか」 「ああ、5月の3日だから、ゴミの日。なあんだ、ナゴミちゃんの記念日だね!」 「ゴミの日ではあるんでしょうけど、もっと大事な日ですよ、ノンコ。ナゴミも何か言いなさい」 「5と3だから、降参。日本がどこかの国に戦争で負けた日だっけ?」 「もうっ、ナゴミまで! 体育会系はこれだから。でも、ちょっと近づきました」 「オモちゃんだって、陸上部じゃん」 「そ、そうですが。私たち、法学部志望の女子高生ですよ」 「あっ、わかった! オモちゃん、いいヒント! 憲法記念日だね!」 「だから、きょう、こうして試験対策の合宿にきてるんじゃないですか」 「おお! お前ら、お揃いだな。出来の悪いお前らに、これから補習だ!」 「ツクモせんせーい! いま、その辺で怪しい人影を見ましたーー!」 「なにいーっ?! だが、その可能性は、大ありだ。復讐だろうな」 『テミスの娘たち~アーティクル・ガールズ』始動です。 「樹上都市…」に比べれば、相当の「短編」です。

処理中です...