43 / 73
4.始まらない冬休み
11
しおりを挟む
結局一口すら口にできなかったオレ達は、クスミ作のオムライスの出来を確かめることができなかった。
今のでさぞかし不機嫌になっていると思われた茉は、やがて笑い声を上げた。
何だ、こいつ。
気が狂ったのか?
怒るならともかく、笑うなんて気味が悪い。
「見た?今の。ふっふっふっ」
「・・・・・・・・・」
オレが少し冷めた目で見ていても、茉は笑うのをやめない。
本当に気が狂ったのかもしれない。
メデューサみたいな攻撃をしてきたらどうしよう。
「ついに!ついにクスミさんは成し遂げたのよ!」
「・・・何を?」
「ユノモト兄の胃袋をゲッチュしたのよ!」
あぁ、そういうことか。
そういえば昨日こいつは『男をゲットするなら胃袋をつかめ』的なことを言っていた。
「たった1日でオムライスマスターの称号を取得されたのは正直悔しいけど、クスミさんの恋の手助けができたと思えば何てないわ」
そんなものなのか。
今のはオムライスにNキャラが描いてあったから兄キがああいう行動に出ただけで、描いてなければ欲しがっていたかは謎なんだが。
「クスミのオムライス、食べたかったなぁ」
出来上がりを目の前にして一口もできなかったのはやはり残念だ。
自分作の失敗オムライスしか口にしていないオレとしては。
茉もさぞクスミのオムライスを食べたかっただろう、と同意を求める目で茉を見ると、茉は少しふてくされたような顔をしていた。
「オムライスだったら私が作ってあげるわよ」
言葉が少しトゲトゲしている。
「いや、そうじゃなくて、クスミが作ったオムライスがちゃんとおいしかったのかなーと思って」
「おいしいんじゃない?私と同じ手順で作ってるんだから」
茉のトゲトゲ具合は変わらない。
さっきの今で、何で急に不機嫌になったんだ?
笑っていたくせに。
茉はふてくされた顔をしながらもテキパキとオムライスを作り始めた。
ジュ~ッと卵が焼ける音を聞いていると、1度失敗作を食べてお腹は膨らんでいるのにまたお腹が空く。
やっぱりボソボソの卵オムライスでは満足できないとお腹が主張しているようだ。
茉の動きは素早い。
あっという間に2人分のオムライスを作り上げてしまった。
昨日と同じように向かい合って食べる。
もう少しキッチンが華やかであればえぬたまで食べているような雰囲気を味わえるが、物がごちゃごちゃしているここでは無理だ。
「何だ?皿の縁にケチャップが付いてるぞ」
オムライスの上にはもちろん、昨日はなかったケチャップで真ん中がひび割れた卵が描かれている。
えぬたまオムライスでおなじみのイラストだ。
それ以外に皿の縁にケチャップが付いていた。
「あ、昔の名残でそこにもケチャップ付けちゃった」
皿の縁にMのケチャップ文字が付いていたら、それは茉作のオムライス。
それが無意識で出るということは、やはり茉はえぬたまでオムライスをたくさん作っていたのだろう。
半年前に食べたえぬたまのオムライスの味を忠実に思い出すことはできないが、今ここで食べる茉のオムライスもおいしいと思うあたり、きっと一緒なのだろう。
美食家ではないから、多少の味の違いなどオレはあまり気にならない。
今のでさぞかし不機嫌になっていると思われた茉は、やがて笑い声を上げた。
何だ、こいつ。
気が狂ったのか?
怒るならともかく、笑うなんて気味が悪い。
「見た?今の。ふっふっふっ」
「・・・・・・・・・」
オレが少し冷めた目で見ていても、茉は笑うのをやめない。
本当に気が狂ったのかもしれない。
メデューサみたいな攻撃をしてきたらどうしよう。
「ついに!ついにクスミさんは成し遂げたのよ!」
「・・・何を?」
「ユノモト兄の胃袋をゲッチュしたのよ!」
あぁ、そういうことか。
そういえば昨日こいつは『男をゲットするなら胃袋をつかめ』的なことを言っていた。
「たった1日でオムライスマスターの称号を取得されたのは正直悔しいけど、クスミさんの恋の手助けができたと思えば何てないわ」
そんなものなのか。
今のはオムライスにNキャラが描いてあったから兄キがああいう行動に出ただけで、描いてなければ欲しがっていたかは謎なんだが。
「クスミのオムライス、食べたかったなぁ」
出来上がりを目の前にして一口もできなかったのはやはり残念だ。
自分作の失敗オムライスしか口にしていないオレとしては。
茉もさぞクスミのオムライスを食べたかっただろう、と同意を求める目で茉を見ると、茉は少しふてくされたような顔をしていた。
「オムライスだったら私が作ってあげるわよ」
言葉が少しトゲトゲしている。
「いや、そうじゃなくて、クスミが作ったオムライスがちゃんとおいしかったのかなーと思って」
「おいしいんじゃない?私と同じ手順で作ってるんだから」
茉のトゲトゲ具合は変わらない。
さっきの今で、何で急に不機嫌になったんだ?
笑っていたくせに。
茉はふてくされた顔をしながらもテキパキとオムライスを作り始めた。
ジュ~ッと卵が焼ける音を聞いていると、1度失敗作を食べてお腹は膨らんでいるのにまたお腹が空く。
やっぱりボソボソの卵オムライスでは満足できないとお腹が主張しているようだ。
茉の動きは素早い。
あっという間に2人分のオムライスを作り上げてしまった。
昨日と同じように向かい合って食べる。
もう少しキッチンが華やかであればえぬたまで食べているような雰囲気を味わえるが、物がごちゃごちゃしているここでは無理だ。
「何だ?皿の縁にケチャップが付いてるぞ」
オムライスの上にはもちろん、昨日はなかったケチャップで真ん中がひび割れた卵が描かれている。
えぬたまオムライスでおなじみのイラストだ。
それ以外に皿の縁にケチャップが付いていた。
「あ、昔の名残でそこにもケチャップ付けちゃった」
皿の縁にMのケチャップ文字が付いていたら、それは茉作のオムライス。
それが無意識で出るということは、やはり茉はえぬたまでオムライスをたくさん作っていたのだろう。
半年前に食べたえぬたまのオムライスの味を忠実に思い出すことはできないが、今ここで食べる茉のオムライスもおいしいと思うあたり、きっと一緒なのだろう。
美食家ではないから、多少の味の違いなどオレはあまり気にならない。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
8年間未来人石原くん。
七部(ななべ)
青春
しがない中学2年生の石原 謙太郎(いしはら けんたろう)に、一通の手紙が机の上に届く。
「苗村と付き合ってくれ!頼む、今しかないんだ!」
と。8年後の未来の、22歳の自分が、今の、14歳の自分宛に。苗村 鈴(なえむら すず)
これは、石原の8年間の恋愛のキャンバスのごく一部分の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる