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4.始まらない冬休み

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結局一口すら口にできなかったオレ達は、クスミ作のオムライスの出来を確かめることができなかった。

今のでさぞかし不機嫌になっていると思われた茉は、やがて笑い声を上げた。

何だ、こいつ。

気が狂ったのか?

怒るならともかく、笑うなんて気味が悪い。

「見た?今の。ふっふっふっ」

「・・・・・・・・・」

オレが少し冷めた目で見ていても、茉は笑うのをやめない。

本当に気が狂ったのかもしれない。

メデューサみたいな攻撃をしてきたらどうしよう。

「ついに!ついにクスミさんは成し遂げたのよ!」

「・・・何を?」

「ユノモト兄の胃袋をゲッチュしたのよ!」

あぁ、そういうことか。

そういえば昨日こいつは『男をゲットするなら胃袋をつかめ』的なことを言っていた。

「たった1日でオムライスマスターの称号を取得されたのは正直悔しいけど、クスミさんの恋の手助けができたと思えば何てないわ」

そんなものなのか。

今のはオムライスにNキャラが描いてあったから兄キがああいう行動に出ただけで、描いてなければ欲しがっていたかは謎なんだが。

「クスミのオムライス、食べたかったなぁ」

出来上がりを目の前にして一口もできなかったのはやはり残念だ。

自分作の失敗オムライスしか口にしていないオレとしては。

茉もさぞクスミのオムライスを食べたかっただろう、と同意を求める目で茉を見ると、茉は少しふてくされたような顔をしていた。

「オムライスだったら私が作ってあげるわよ」

言葉が少しトゲトゲしている。

「いや、そうじゃなくて、クスミが作ったオムライスがちゃんとおいしかったのかなーと思って」

「おいしいんじゃない?私と同じ手順で作ってるんだから」

茉のトゲトゲ具合は変わらない。

さっきの今で、何で急に不機嫌になったんだ?

笑っていたくせに。

茉はふてくされた顔をしながらもテキパキとオムライスを作り始めた。

ジュ~ッと卵が焼ける音を聞いていると、1度失敗作を食べてお腹は膨らんでいるのにまたお腹が空く。

やっぱりボソボソの卵オムライスでは満足できないとお腹が主張しているようだ。

茉の動きは素早い。

あっという間に2人分のオムライスを作り上げてしまった。

昨日と同じように向かい合って食べる。

もう少しキッチンが華やかであればえぬたまで食べているような雰囲気を味わえるが、物がごちゃごちゃしているここでは無理だ。

「何だ?皿の縁にケチャップが付いてるぞ」

オムライスの上にはもちろん、昨日はなかったケチャップで真ん中がひび割れた卵が描かれている。

えぬたまオムライスでおなじみのイラストだ。

それ以外に皿の縁にケチャップが付いていた。

「あ、昔の名残でそこにもケチャップ付けちゃった」

皿の縁にMのケチャップ文字が付いていたら、それは茉作のオムライス。

それが無意識で出るということは、やはり茉はえぬたまでオムライスをたくさん作っていたのだろう。

半年前に食べたえぬたまのオムライスの味を忠実に思い出すことはできないが、今ここで食べる茉のオムライスもおいしいと思うあたり、きっと一緒なのだろう。

美食家ではないから、多少の味の違いなどオレはあまり気にならない。
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