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N&N

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4.始まらない冬休み

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きっと茉はえぬたまでバイトしながら同じように作れるようになるまで苦労したに違いない。

茉の真剣なお目目がそう語っている。

「えっと・・・1回目で」

「え?」

1回?

我が耳を疑いかけてオウム返しする。

「1回目?」

「はい」

「1回でこんなふうに作れるようになったってこと?」

「はい」

「・・・・・・・・・」

茉は呆然として黙り込んでしまった。

オレも同じだ。

昨日あんなに動けなかったクスミが、家に帰ってたった1回で同じように作れたなんて信じられない。

というか、信じられるわけがなかった。

「ちょっともう、冗談でしょ?いくら何でもすぐこんなにうまく作れないわよね?」

「・・・?」

「え!?本当に本当なの!?本当に1回でパーペキにできたの?」

「はい」

パーペキって何だよ。

パーフェクトと完璧の合わせ語か?

クスミが全く嘘をついていないことがわかると、茉はフリーズしてしまった。

茉の心境など知る由もないクスミは、茉を見てキョトンとしている。

そして思い出したかのように付け加えた。

「あの、私」

「え?何?」

「器用なんです」

「あ・・・・・・・・・そう」

オレは先ほど聞いているから何ともないが、茉にとってはトドメの一言だっただろう。

茉が苦労して手に入れたスキルは、クスミにとってみたら器用なために一瞬で手に入れられたのだった。

だがそう信じ込むのはまだ早い。

見た目は確かにオムライスだ。

卵の上にNキャラが描かれている変な出来ではあるが。

味が同じとは限らない。

兄キはうまいと言ってたが、それは単にお腹が空いていたからかもしれない。

人間、腹が減ると何でもおいしく感じるものだ。

「ちょっと味見していいか?」

オレが言うと、茉もパッと顔を上げた。

そうよ、味はまだ同じかどうかわからないわ、とでも言いたそうな表情だ。

「そうよ、そうよね。味が全く一緒とは限らないものね」

その一言でクスミの腕を少し疑ってしまっているのだが、鈍いクスミはそんなことで傷つかないだろう。

オレ達は早速スプーンを用意した。

2人で1つのオムライスを試食する。

何かのコンテストみたいだ。

だが、スプーンをオムライスに近づけたその時、事態は一変した。

「おい!!」

オレも茉もクスミも、聞くだけでわかるその声の主の方に振り向いた。

こんな空気の読めない登場をするやつは、振り向かなくても一瞬で兄キだとわかる。

「それ、何やってるんだ!?」

兄キは険しい顔をしながらオムライスを指差している。

「何って、クスミが作ってくれた・・・」
「それ、クスミっちが作ったやつだろ!?」

兄キはここにはいなかったから、これが誰作なのかわかるはずがないのだが、ケチャップで描かれたNキャラが決め手なのだろう。

迷いもなくすぐにクスミ作だと言い当てた。

「そうだけど、それが・・・」
「それをどうするつもりだ!?」

人の話を聞くつもりがない兄キは、堂々とオレの言葉に自分の言葉をかぶせてくる。

1度ならまだしも、2度もされると少しイラッとする。

「どうするって、オムライスは食べるものだろう」

今度は途中でさえぎられないように早口で言い切った。

おかげでイライラが募らずに済んだ。

「NキャラオムライスはNキャラ好きのものだ」

「は?」

いつの間にこのオムライスにそんな名前がついたのか。

Nキャラを描いているから間違いなくNキャラオムライスだが。

「お前らは散々Nキャラをさげすんだくせに食べる価値などない!」

そう言うと兄キはオレからスプーンをふんだくり、オムライスを取り上げた。

「ちょっと!急に登場してきて何よ!」

茉がこのやり取りにすかさず声を上げると、兄キは慌てて背を向けた。

「やべっ、心読まれる」

「何?心?」

「クスミっち!早く陣地に戻るぞ!」

「あ、はい」

クスミは兄キに言われるがまま、兄キと部屋へ戻っていった。
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