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4.始まらない冬休み
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見た目だけかもしれないと一口食べてみたが、どこかの行程で失敗が挽回されているはずはなく、素人が作ったオムライスにしか成り下がっていなかった。
「んー、でも初めてにしては上出来じゃない?」
気遣って言う茉の言葉が皮肉めいて聞こえる。
どうせオレは初めてでもクスミのようにうまく作れねーよ。
クスミが本当に茉のようにできたがどうかは定かじゃないけど。
「あ、そうだ。いいこと考えた」
クスミが本当にオムライスを作れたかどうか、ここで実践してもらおう。
あれほど言われて疑うつもりはないが、目の前でそれを実行してもらえば納得もいく。
「クスミにも作ってもらおう」
「は?」
オレの提案に茉が怪訝な表情を見せる。
「自分の失敗では物足りずに他人の失敗も見たいわけね」
「違えーよ」
オレはそれほど嫌味なやつではない。
仮にクスミが上手に作れようが下手であろうが、そんなことはどうでもいい。
昨日あれほど不器用な感じを見せていたクスミがどのような動きを見せるのか、それが気になったのだ。
「クスミ、あれから家でオムライス作ったんだってさ」
「えー、そうなの?」
「で、お前と同じようにできたって言うからここでそれを見てみたいんだ」
「それは私も見てみたいわね」
「だろ?」
意見が一致し、オレはクスミを呼んでくることにした。
もちろん茉はその場に残したままだ。
今日も引き続いて茉がここにいることが兄キにバレたらメデューサと茉の区別がつかずに本物の攻撃をしてしまうかもしれない。
兄キの部屋はドアが閉まっていた。
意味があるのかないのかわからないノックをしてドアを開ける。
2人は相変わらず並んでゲーム画面に見入っている。
「あ、ユノモトくん」
中に入ると反応を示すのは決まってクスミだけだ。
兄キは相変わらず画面に集中していて、こちらに反応を示さない。
その集中力を役に立つことに使って欲しいと思ってやまない。
「クスミ、ちょっとちょっと」
兄キが反応を示さないのを良いことに、オレはクスミを手招きして呼んだ。
クスミはちらっと兄キを一瞥してからこちらにやってきた。
「クスミ、オレにもオムライス作って欲しいんだけど」
「え?」
一瞬見間違いかと思ったが、クスミは明らかに怪訝な表情をしてみせた。
さっきのクスミにセリフを当てるとしたら「あぁん?」という言葉がふさわしいくらいの表情だ。
なのでオレは一瞬ひるんでしまった。
クスミにそんな反応をされるなんて、思ってもみなかった。
「あ、あのオムライス、オレにも作って欲しいんだけど」
胸の動悸を抑えつつ、同じことをもう1度クスミに言う。
反応が少し恐かったが、2度目のクスミは特に何の表情も見せなかった。
「オムライス、ですか?」
「そう。兄キに作ったんだろ?オレも真似して作ってみたけどうまくいかなかったんだ」
「え・・・でも」
クスミは了承してくれない。
依頼して快く引き受けてくれるはずはないとわかっていたが、強引に進めないとクスミの腕を見ることができない。
「今日作ったばかりだろ?だったらここでも作れるじゃん。材料はあるし」
そうだ。
材料はあるのだ。
頼んでもいないのに茉が勝手に持ち込んできたから。
「あの・・・でも」
しかしクスミは一向に引き受けてくれない。
やっぱりクスミはオムライスなど完璧に作れなかったのでは?という疑問が浮かんで消える。
いやいや、余計なことを考えるとまた兄キにどやされる。
いやしかし、このクスミの渋りよう・・・。
いや、しかし!
しかし、いや!
「私でなくても作れる方がいるじゃないですか」
クスミの言葉に我に返ったオレは背後を振り返った。
茉がいる。
こ、こいつ。
待てと言われて待てないのか。
「んー、でも初めてにしては上出来じゃない?」
気遣って言う茉の言葉が皮肉めいて聞こえる。
どうせオレは初めてでもクスミのようにうまく作れねーよ。
クスミが本当に茉のようにできたがどうかは定かじゃないけど。
「あ、そうだ。いいこと考えた」
クスミが本当にオムライスを作れたかどうか、ここで実践してもらおう。
あれほど言われて疑うつもりはないが、目の前でそれを実行してもらえば納得もいく。
「クスミにも作ってもらおう」
「は?」
オレの提案に茉が怪訝な表情を見せる。
「自分の失敗では物足りずに他人の失敗も見たいわけね」
「違えーよ」
オレはそれほど嫌味なやつではない。
仮にクスミが上手に作れようが下手であろうが、そんなことはどうでもいい。
昨日あれほど不器用な感じを見せていたクスミがどのような動きを見せるのか、それが気になったのだ。
「クスミ、あれから家でオムライス作ったんだってさ」
「えー、そうなの?」
「で、お前と同じようにできたって言うからここでそれを見てみたいんだ」
「それは私も見てみたいわね」
「だろ?」
意見が一致し、オレはクスミを呼んでくることにした。
もちろん茉はその場に残したままだ。
今日も引き続いて茉がここにいることが兄キにバレたらメデューサと茉の区別がつかずに本物の攻撃をしてしまうかもしれない。
兄キの部屋はドアが閉まっていた。
意味があるのかないのかわからないノックをしてドアを開ける。
2人は相変わらず並んでゲーム画面に見入っている。
「あ、ユノモトくん」
中に入ると反応を示すのは決まってクスミだけだ。
兄キは相変わらず画面に集中していて、こちらに反応を示さない。
その集中力を役に立つことに使って欲しいと思ってやまない。
「クスミ、ちょっとちょっと」
兄キが反応を示さないのを良いことに、オレはクスミを手招きして呼んだ。
クスミはちらっと兄キを一瞥してからこちらにやってきた。
「クスミ、オレにもオムライス作って欲しいんだけど」
「え?」
一瞬見間違いかと思ったが、クスミは明らかに怪訝な表情をしてみせた。
さっきのクスミにセリフを当てるとしたら「あぁん?」という言葉がふさわしいくらいの表情だ。
なのでオレは一瞬ひるんでしまった。
クスミにそんな反応をされるなんて、思ってもみなかった。
「あ、あのオムライス、オレにも作って欲しいんだけど」
胸の動悸を抑えつつ、同じことをもう1度クスミに言う。
反応が少し恐かったが、2度目のクスミは特に何の表情も見せなかった。
「オムライス、ですか?」
「そう。兄キに作ったんだろ?オレも真似して作ってみたけどうまくいかなかったんだ」
「え・・・でも」
クスミは了承してくれない。
依頼して快く引き受けてくれるはずはないとわかっていたが、強引に進めないとクスミの腕を見ることができない。
「今日作ったばかりだろ?だったらここでも作れるじゃん。材料はあるし」
そうだ。
材料はあるのだ。
頼んでもいないのに茉が勝手に持ち込んできたから。
「あの・・・でも」
しかしクスミは一向に引き受けてくれない。
やっぱりクスミはオムライスなど完璧に作れなかったのでは?という疑問が浮かんで消える。
いやいや、余計なことを考えるとまた兄キにどやされる。
いやしかし、このクスミの渋りよう・・・。
いや、しかし!
しかし、いや!
「私でなくても作れる方がいるじゃないですか」
クスミの言葉に我に返ったオレは背後を振り返った。
茉がいる。
こ、こいつ。
待てと言われて待てないのか。
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