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4.始まらない冬休み

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昨日も出向いた場所だから、まっすぐそこへ向かう。

何か急に怒り出したように廊下をドスドス言わせながら歩いている。

何だよ、怒りたいのはこっちだっつーの。

呼んでもないのに勝手に入ってきて。

だいたいオレは卵の殻を取っている最中で・・・。

「あー!!」

とオレが気づいてキッチンに向かった時には茉もそれを見つけて声を上げていた。

「何これ。ボウルに卵入ってるんだけど。殻も一緒に」

見られた。

よりによって見られたくないやつに。

「卵・・・割れないの?」

「割れるよ!馬鹿にしてんのか」

卵は小学生の時から割ることくらいできる。

茉の言い方に腹が立った。

「でもこれ、ちゃんと割れてないじゃない」

「うるさいな。今日はたまたま失敗したんだよ」

反論しながら茉からボウルを奪う。

卵が揺れる中にまだ少し殻が残っている。

それを先ほどと同じように箸でつまみ出した。

「何で卵割ってるの?今日は卵かけご飯にするつもりだったの?」

茉が持参してきた袋から中身を取り出しつつ尋ねてくる。

こいつ、本当に作る気で来たのか。

「オムライス作るつもりだったんだよ、今日は」

「オムライス?何で?あ、もしかして昨日私が作ったのを見て作れるようになると思ったのー?」

「そうだよ」

「嘘でしょ?無理でしたー。オムライスはそんな簡単じゃありませんー」

うるさいな、わかってるよ。

だけどオレより鈍い動きをしていたクスミが茉の動きを見ただけでマスターできたって聞いたら、自分もできるんじゃないかって思うだろ、普通は。

「卵割るのもできてないし」

「卵はたまたま失敗したんだよ。片手割りに挑戦して失敗したんだ」

くそっ、何でこんなことを暴露しないといけないんだ。

「何でわざわざ片手割りしようとするのよ。あれ、なかなか難しいんだからね」

実践して失敗したから、言われなくてもわかっている。

わざわざ言わなくていいのに、本当嫌なやつだな。

「よし、全部取れた」

粉々になってしまった卵の殻をようやく取り除くことができた。

「片手割り、教えてあげようか?」

「いいよ、もう。二度とやらない」

「そうやって諦めるの、良くないよ」

「いいんだよ。オムライスさえ作れるようになれば」

「そう?じゃあ早速作ろ」

それが合図でもあるかのように、茉はコンコンと卵を叩いて割ってみせた。

片手割りで。

おぉー、さすが手慣れている。

いとも簡単にやってくれるじゃないか。

・・・って、そうじゃなくて。

「何で今日もオムライス作りに来たんだよ」

「好評だったから」

好評って自分で言うかぁ?

確かにえぬたまと同じ味だから、おいしいことはおいしいんだけど。

「だからって今日も作ってくれとは頼んでない」

「頼まれなきゃできないやつは彼女失格だよー?」

だから何で茉はオレの彼女を名乗っているんだ。

「そんなことより、今日はカズマが作るんだよ。私が指示する通りにやってよね。はい、フライパン」

「お?おう」

反論する間もなくフライパンを手渡され、オレは勢いをなくしてしまった。

まぁいいか。

オムライスを作るのが今日の目的だったわけだし。

じゃあ昨日の茉の動きを思い出しながらとりあえず・・・。

「あ、待って!卵入れるのまだ早い」

「え?」

茉が止める声もむなしく、卵は熱したフライパンの上でジュ~ッとなる。

「全部入れちゃダメだよ。分割して入れるんだよ」

「ご飯は先に少しほぐしておかないと」

「ちょっと、先焦げてきちゃってるよ」

オレは決して記憶力は悪くない方だと思うのだが、昨日の茉のようにしているつもりでも全くできていないようだ。

横から次々と茉の指摘が飛ぶ。

で、出来上がった完成品は、えぬたまで出てきたものとは比べ物にならないくらい不出来だった。
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