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4.始まらない冬休み

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ピンポーン。

しつこく鳴る呼び鈴にイライラの限界が超えたオレは、ドアを激しく開けて出た。

「どちら様!?」

自分でもわかるくらい険しい顔をしていたと思う。

外にいた客がそんなオレを見てギョッとしていた。

そしてオレもギョッとしてみせた客を見てギョッとした。

怒りで思考回路がストップしていた。

あんなに警戒していた茉かもしれないという考えがすっかり抜けていたのだ。

外にいたのは茉だった。

最悪だ。

居留守を使えば良かった。

放置して卵の殻と戦っておけば良かった。

「何か用か?」

ようやく平常心を取り戻して、言葉少なげに聞いた。

「用が無きゃ来ちゃいけないの?」

茉が不満そうに返してくる。

こいつ、何言ってんだ?

「あったり前だろ。歓迎してねーよ」

「えー、ひどいー」

と、言いながら全然悲しんでいない。

むしろ喜んでいる。

言葉と真逆の行動をしてみせるから、女はわからない。

泣けるーとか言って笑ってる時あるし。

「じゃあオレ忙しいから、またな」

そそくさとドアを閉めようとすると、茉が足早にかけ寄ってきた。

「ちょっと待ってよ。ちゃんと用はあるの」

と言われても体が拒否反応をして、既にドアは半分ほど閉まっている。

それでも茉は近寄ってきて、手に持っていた白い袋を掲げた。

「これ!今日はちゃんと材料持ってきた!」

「?」

材料?

何の話だ?

一瞬考えた隙にドアの取っ手に手をかけられた。

半分ほど閉めたドアが、再び開かれる。

「なっ・・・お前、何だよ」

歓迎していないのに中に入って来ようとする茉を追い返そうとしたが、茉は気にせず強引に入ってきた。

「昨日はカズマの家の冷蔵庫から材料勝手に借りちゃったでしょ?でも今日はほら、ちゃんと用意してきたから!」

「・・・・・・・・・」

用意してきたから、何なんだ?

オレは作って欲しいなんて一言も言ってないぞ。

「あ」

強引に中に入ってきた茉は、玄関にあった靴を見て声を上げた。

クスミが来ていることに気づいたらしい。

「えー、今日もクスミさん来てるのー?」

「彼女が彼氏の家に来ちゃダメなのか。別にいいだろ」

「別にいいけど。うわー、思ったよりラブラブなんだねー」

ラブラブというのか・・・?

ただ2人が好きなNキャラが出るゲームを一緒にしているだけだが。

「お前は何しに来たんだよ。呼んでもないのに」

「えー、私も彼氏の家に遊びに来てる風なんだけど」

「彼氏って誰が?」

「カズマ」

「はぁー?いつオレとお前が付き合ったんだよ。勘弁してくれ」

今までそんな話になったこともないし、彼氏彼女になった覚えもない。

だいたい茉が彼女なんてことになったら、兄キが発狂してしまいそうだ。

茉がNキャラを馬鹿にしたあの日から兄キにとって茉は【敵】なのだ。

「とりあえずキッチン借りるからね!」

「あ、おい」

許可も出していないのに茉は靴を脱ぐと、そそくさとキッチンへ向かった。
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