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4.始まらない冬休み

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オレは早速冷蔵庫を開けた。

卵が・・・・・・・・・ある!

ここでなければどうしようかと思っていたが、期待は裏切られることなく、1番のメインである卵を手に入れることができた。

まだ作ってはいないが、これだけでもうオムライスが作れるようになった気がするから不思議だ。

さぁお次は調味料とボウルだ。

昨日茉はこのボウルに卵を入れて味付けしていたな。

昨日の茉の動きを鮮明に思い出しながら作業を進めていく。

おぉー、料理人みたいだ。

誰かオレをシェフと呼んでくれ。

あの長ーいコックの帽子をかぶってみたくなったが、この家にそんなものはない。

エアーでかぶっているフリをしながら卵をボウルに割って入れる。

あ、しまった。普通に割った・・・。

昨日茉は片手割りをしていたのに、真似をすれば良かった。

できる気はしないが、今ならできるような気もする。

茉は1人分に対して2つ卵を使っていた。

ということは、もう1度チャンスはある。

1回練習用に使える分がなくなっただけだ。

ぶっつけ本番。

よし、いくぞ。

コンコンッとヒビができたところに親指を当てる。

そこからぐっと片手で卵を両側に分けるように・・・ぐしゃっ。

「あ゛ー!!」

力の入れ加減がまずかったせいで、右手の中で卵は粉々に砕け散ってしまった。

そんな卵よりも大声を出してしまったことの方が気になったオレは、兄キの部屋の方向を一瞥した。

兄キの部屋からはえぬえぬクエストで盛り上がっている兄キの声が聞こえるだけで、オレの声は全く気づいていないようだった。

安心したのも束の間、オレはベトベトになった右手を見てため息をついた。

やっぱり見よう見真似で片手割りなんてできるもんじゃないよなー。

ボウルには卵の殻が散らばっている。

そのまま焼いてしまうと食べる時、きっとガリッと登場するに違いない。

「はぁ~」

卵割りを失敗した時の難点がこれだ。

殻を取り除く作業。

欠片が小さければ小さいほど面倒さが増す。

卵で汚れた右手を洗って、オレはちまちまと殻を取り除き始めた。

「面倒くせえ・・・」

自業自得と思いながらもつぶやかずにはいられなかった。

失敗して入った殻が思った以上にあった。

粉々になっているのがあるから、余計に多く感じる。

大きな欠片で済めばいいものを。

と言って見逃して後でガリッとなるのも嫌だ。

「あーっ!!」

すぐ終わりそうにない作業に苛立ち、意味なく大声を上げる。

もう兄キ達にバレようが気にならなくなっていた。

箸でこまめに殻を取り除き始めると、間もなくオレを邪魔するかのように呼び鈴が鳴った。

何だ、この忙しい時に。

まぁ、いい。

幸い、ここの住人である兄キが帰ってきているから、兄キが出たらいいだろう。

オレは居候だからオレ宛の客や荷物なんてものはない。

呼び鈴が鳴ってからしばらく、兄キの部屋は相変わらずゲームに燃える兄キの声が聞こえるだけで、そこから兄キが出てくる気配は一向にない。

「兄キー!客ー!」

ここから叫んで兄キに届くかどうかは定かではないが、オレは一応呼びかけてみた。

「おーい!」

オレはこの殻を取り除く作業を途中で止めたくない。

だから作業しながら叫ぶのだが、兄キには全く届いていないようだ。

「ったく、誰だよこの忙しい時に」

呼んでも出てこない兄キにも、タイミング悪くやってきた客にもイライラしながら、オレは玄関に向かった。

これでセールスとかだったら、怒鳴り返してやろう。

オレはここの住人ではないが、それくらいしてもいい権利はある。

・・・気がする。
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