28 / 73
3.不器用で器用なあの子
3
しおりを挟む
食卓には4つ椅子がある。
つまり4人で食事ができるわけだが、兄キがメデューサ・・・もとい、茉と一緒に食事をするわけがない。
きっと駄々をこねるに違いない。
兄キを待っている間、待ち時間を感じないようにお茶を準備したりしていたが、兄キは一向に姿を見せない。
「遅くない?」
何もせずに待っている時ほど時を感じることはない。
茉は痺れを切らしてイライラしてきている、
「せっかく作ったオムライスが冷めちゃうじゃない」
冷めても程良い味のオムライス、がえぬたまの売り文句なので特に心配はしていないが、おいしいのとまぁおいしいを比べたら、食べたいのは前者だ。
時間が経つほど後者になっていくのは考えなくてもわかる。
「ちょっとオレが呼んできてやる」
戻ってこない2人をどやしてやる意図も含めて、オレは兄キの部屋へと向かった。
兄キは依然ゲームをしたままで、クスミはその横にちょこんと立ち尽くしていた。
「あ、ユノモトくん」
オレを見てクスミは困った表情をして見せた。
聞かなくても言おうとしていることはだいたいわかる。
兄キが動かないのだ、きっと。
「兄キ、クスミが呼んでるだろ。飯だ」
オレが仁王立ちしてすごんでみても、兄キは変わらずゲームを続けている。
そもそも兄キはオレの姿なんて眼中にない。
「兄キ、聞いてるのか!?」
「うるさいなー、聞こえてるよ。そんな大声出さなくてもオレは聴力検査で問題ないと言われてるんだ」
「だったらちゃんと返事をしろよ。飯だって言ってるだろ」
「飯だから何だよ、オレは今いいところなんだ。邪魔するなよ」
兄キはゲーム画面から目をそらさずに言う。
ダメだこりゃ。
もう兄キのことは諦めるしかない。
「クスミ、兄キはゲームに夢中だからもう放っておこうぜ。オムライスが冷めてまずくなる」
「・・・・・・・・・はい」
オレ達が兄キを残して部屋を出ようとすると
「おおおおおおお」
というよくわからない兄キの雄叫びに呼び戻された。
「何だ、兄キ」
「見ろ、一真。Nキャラが5匹だ!!」
ゲームの話だ。
画面には敵として現れたNキャラが5体いる。
「それがどうしたんだよ。そんなことでいちいち呼び止めるな!」
「そんなことって何だ!Nキャラが一気に5匹も登場するなんてレア中のレアなんだぞ。な?クスミっち!」
話を振られたクスミも5体のNキャラを見て目が釘付けになっている、
「わっ、私も今まで最大4匹しかお目にかかったことがなかったですっ」
あのクスミが・・・おとなしいあのクスミですらこんなザコキャラ相手に興奮するなんて・・・。
お前らオムライスよりNキャラなんだな・・・めでたいやつらだ。
・・・と、さすがに茉をそのまま放置しておくわけにはいかないので、オレとクスミは足早に茉の元へ戻ってきた。
「何やってんのよ、あんた達。2人で呼びに行って、結局ユノモト兄はいないじゃない」
偉そうに言ったわりにこんな結果で面目ない。
でも兄キはきっと何をどうやってもここに現れることはないだろう。
「兄キはもういいんだ。放っといて食べようぜ」
「あんた達、兄弟なのに冷めてるのね」
「いやいや、兄弟じゃなくてイトコ、な」
オレが兄キのことをそう呼ぶせいでややこしいのかもしれないが、オレ達の関係はイトコだ。
間違っても同じ血が流れているとは思われたくない。
まぁイトコなんだから他人よりは濃い血が流れているのかもしれないが。
つまり4人で食事ができるわけだが、兄キがメデューサ・・・もとい、茉と一緒に食事をするわけがない。
きっと駄々をこねるに違いない。
兄キを待っている間、待ち時間を感じないようにお茶を準備したりしていたが、兄キは一向に姿を見せない。
「遅くない?」
何もせずに待っている時ほど時を感じることはない。
茉は痺れを切らしてイライラしてきている、
「せっかく作ったオムライスが冷めちゃうじゃない」
冷めても程良い味のオムライス、がえぬたまの売り文句なので特に心配はしていないが、おいしいのとまぁおいしいを比べたら、食べたいのは前者だ。
時間が経つほど後者になっていくのは考えなくてもわかる。
「ちょっとオレが呼んできてやる」
戻ってこない2人をどやしてやる意図も含めて、オレは兄キの部屋へと向かった。
兄キは依然ゲームをしたままで、クスミはその横にちょこんと立ち尽くしていた。
「あ、ユノモトくん」
オレを見てクスミは困った表情をして見せた。
聞かなくても言おうとしていることはだいたいわかる。
兄キが動かないのだ、きっと。
「兄キ、クスミが呼んでるだろ。飯だ」
オレが仁王立ちしてすごんでみても、兄キは変わらずゲームを続けている。
そもそも兄キはオレの姿なんて眼中にない。
「兄キ、聞いてるのか!?」
「うるさいなー、聞こえてるよ。そんな大声出さなくてもオレは聴力検査で問題ないと言われてるんだ」
「だったらちゃんと返事をしろよ。飯だって言ってるだろ」
「飯だから何だよ、オレは今いいところなんだ。邪魔するなよ」
兄キはゲーム画面から目をそらさずに言う。
ダメだこりゃ。
もう兄キのことは諦めるしかない。
「クスミ、兄キはゲームに夢中だからもう放っておこうぜ。オムライスが冷めてまずくなる」
「・・・・・・・・・はい」
オレ達が兄キを残して部屋を出ようとすると
「おおおおおおお」
というよくわからない兄キの雄叫びに呼び戻された。
「何だ、兄キ」
「見ろ、一真。Nキャラが5匹だ!!」
ゲームの話だ。
画面には敵として現れたNキャラが5体いる。
「それがどうしたんだよ。そんなことでいちいち呼び止めるな!」
「そんなことって何だ!Nキャラが一気に5匹も登場するなんてレア中のレアなんだぞ。な?クスミっち!」
話を振られたクスミも5体のNキャラを見て目が釘付けになっている、
「わっ、私も今まで最大4匹しかお目にかかったことがなかったですっ」
あのクスミが・・・おとなしいあのクスミですらこんなザコキャラ相手に興奮するなんて・・・。
お前らオムライスよりNキャラなんだな・・・めでたいやつらだ。
・・・と、さすがに茉をそのまま放置しておくわけにはいかないので、オレとクスミは足早に茉の元へ戻ってきた。
「何やってんのよ、あんた達。2人で呼びに行って、結局ユノモト兄はいないじゃない」
偉そうに言ったわりにこんな結果で面目ない。
でも兄キはきっと何をどうやってもここに現れることはないだろう。
「兄キはもういいんだ。放っといて食べようぜ」
「あんた達、兄弟なのに冷めてるのね」
「いやいや、兄弟じゃなくてイトコ、な」
オレが兄キのことをそう呼ぶせいでややこしいのかもしれないが、オレ達の関係はイトコだ。
間違っても同じ血が流れているとは思われたくない。
まぁイトコなんだから他人よりは濃い血が流れているのかもしれないが。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
私の隣は、心が見えない男の子
舟渡あさひ
青春
人の心を五感で感じ取れる少女、人見一透。
隣の席の男子は九十九くん。一透は彼の心が上手く読み取れない。
二人はこの春から、同じクラスの高校生。
一透は九十九くんの心の様子が気になって、彼の観察を始めることにしました。
きっと彼が、私の求める答えを持っている。そう信じて。
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる