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3.不器用で器用なあの子

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食卓には4つ椅子がある。

つまり4人で食事ができるわけだが、兄キがメデューサ・・・もとい、茉と一緒に食事をするわけがない。

きっと駄々をこねるに違いない。

兄キを待っている間、待ち時間を感じないようにお茶を準備したりしていたが、兄キは一向に姿を見せない。

「遅くない?」

何もせずに待っている時ほど時を感じることはない。

茉は痺れを切らしてイライラしてきている、

「せっかく作ったオムライスが冷めちゃうじゃない」

冷めても程良い味のオムライス、がえぬたまの売り文句なので特に心配はしていないが、おいしいのとまぁおいしいを比べたら、食べたいのは前者だ。

時間が経つほど後者になっていくのは考えなくてもわかる。

「ちょっとオレが呼んできてやる」

戻ってこない2人をどやしてやる意図も含めて、オレは兄キの部屋へと向かった。

兄キは依然ゲームをしたままで、クスミはその横にちょこんと立ち尽くしていた。

「あ、ユノモトくん」

オレを見てクスミは困った表情をして見せた。

聞かなくても言おうとしていることはだいたいわかる。

兄キが動かないのだ、きっと。

「兄キ、クスミが呼んでるだろ。飯だ」

オレが仁王立ちしてすごんでみても、兄キは変わらずゲームを続けている。

そもそも兄キはオレの姿なんて眼中にない。

「兄キ、聞いてるのか!?」

「うるさいなー、聞こえてるよ。そんな大声出さなくてもオレは聴力検査で問題ないと言われてるんだ」

「だったらちゃんと返事をしろよ。飯だって言ってるだろ」

「飯だから何だよ、オレは今いいところなんだ。邪魔するなよ」

兄キはゲーム画面から目をそらさずに言う。

ダメだこりゃ。

もう兄キのことは諦めるしかない。

「クスミ、兄キはゲームに夢中だからもう放っておこうぜ。オムライスが冷めてまずくなる」

「・・・・・・・・・はい」

オレ達が兄キを残して部屋を出ようとすると

「おおおおおおお」

というよくわからない兄キの雄叫びに呼び戻された。

「何だ、兄キ」

「見ろ、一真。Nキャラが5匹だ!!」

ゲームの話だ。

画面には敵として現れたNキャラが5体いる。

「それがどうしたんだよ。そんなことでいちいち呼び止めるな!」

「そんなことって何だ!Nキャラが一気に5匹も登場するなんてレア中のレアなんだぞ。な?クスミっち!」

話を振られたクスミも5体のNキャラを見て目が釘付けになっている、

「わっ、私も今まで最大4匹しかお目にかかったことがなかったですっ」

あのクスミが・・・おとなしいあのクスミですらこんなザコキャラ相手に興奮するなんて・・・。

お前らオムライスよりNキャラなんだな・・・めでたいやつらだ。

・・・と、さすがに茉をそのまま放置しておくわけにはいかないので、オレとクスミは足早に茉の元へ戻ってきた。

「何やってんのよ、あんた達。2人で呼びに行って、結局ユノモト兄はいないじゃない」

偉そうに言ったわりにこんな結果で面目ない。

でも兄キはきっと何をどうやってもここに現れることはないだろう。

「兄キはもういいんだ。放っといて食べようぜ」

「あんた達、兄弟なのに冷めてるのね」

「いやいや、兄弟じゃなくてイトコ、な」

オレが兄キのことをそう呼ぶせいでややこしいのかもしれないが、オレ達の関係はイトコだ。

間違っても同じ血が流れているとは思われたくない。

まぁイトコなんだから他人よりは濃い血が流れているのかもしれないが。
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