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2.メリーバースデー

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昼時のピークを過ぎているから客も減っているし、メニューを頼んでから出てくる時間も短く済む。

ただ、通常より2時間遅れで食べるわけだから、オレの腹は極限に空っぽ状態だ。

それに耐えきれれば何てなかった。

「だったら大丈夫よ」

「何が大丈夫なんだ」

会話の流れがわからない。

茉は事件が解決したようにパッと表情を明るくしたが、オレにはよくわからない。

「一真が食べてたオムライス、私が作ったやつだし」

「・・・・・・・・・・・・え?」

ええええええ?

「どういう意味だ?」

「そのままの意味よ」

「そのまま?」

「一真が食べてたオムライスは私が作ったやつなのよ」

「・・・・・・・・・・・・」

本当にそのまますぎるだろ。

語尾が変わっただけで、他は何も変わりなかったぞ。

「仕方ないわねー。バカズマでもわかるように言うと」

「バカズマって言うな」

茉がそう言って始めた説明によると、こうだ。

茉は夏休み前の定期テストが終わってすぐ、えぬたまにバイトを申し込んだそうだ。

えぬたまは若者に人気のお店なので、夏休みや冬休みは学生客が増えて忙しくなる。

だからその時期は短期バイトを募集するのだ。

募集期間より前にバイトを申し込むあたりが負けず嫌いの茉らしい。

で、今年の夏も学生客で大いに賑わっていたお店は、開店時間は普通→昼時はピーク→閉店間際は普通・・・というサイクルを繰り返していたようだ。

これは毎年のことではあるが、今年は例年以上に暑い日が続いた為、体調を崩すシェフが続出。

そんなシェフを気遣い、見よう見まねで茉がオムライスを作ってみたところ、まったく同じ味の、まったく同じ見た目で完成した。

その為ピークが過ぎた後、シェフを休ませるつもりで茉が代わりに作っていたらしい。

もちろんこれは店長には内緒で、茉が自主的に行なっていたので一部の者しか知らないと言う。

と、いうことはつまり

「詐欺だろ」

「え?」

茉が白々しくとぼけた声を出す。

いやいやいや、どう考えたっておかしいだろう。

オレが500円出して食べたかったのは、えぬたまのシェフが作ったオムライスであって、茉が作ったものではない。

茉は高校生だし、調理師免許も持っていない。

えぬたまのシェフにこの資格が必要かどうかまでは知らないが、茉が素人であることに変わりはない。

「金返せ」

「何でよ。おいしくいただいたなら何食べても一緒でしょ?」

「一緒なわけないだろ。オレは素人が作った飯に500円も払うつもりはない」

「私が作ったものと店が作ったものの違いもわかんなかったくせに」

「うっ・・・」

そう言われると痛い。

しかしオレが食べていたものが茉作とは限らない。

「オレが食べたやつがお前が作った物とは限らないだろ」

確かにオレはピークを過ぎた時間に来店はしていたが、それが全て茉が作ったオムライスだったということはないだろう。

「じゃあ出てきたお皿、どんなやつだった?」

「皿?そんなの覚えてねーよ」

「私、自分の作ったやつはわかるようにお皿の端にケチャップでMって付けておいたの。食べたお皿にそういうの、なかった?」

そう言われて数ヶ月前の記憶をたどる。
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