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２．メリーバースデー

１０

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失礼だな。

オレはオバケ扱いか。

「ここで待ってたのかよ？」

「兄キが待てって言ったんだろ」

「ここで待てなんて言ってないぞ」

「あと数分って言われたら普通ここで待つだろう」

仕方なく待っていたのに、何なんだこの扱いの悪さは。

こんなことなら待たずに自分の部屋へ戻れば良かった。

「まぁ話せば長くなるんだけどな」

「あ？あぁ」

唐突に話が始まった。

兄キはいつでも突然だ。

「もうすぐ地デジってやつが始まるだろ？」

「あぁ」

「地上デジタル放･･･なんとかってやつ」

「そこまで言えるのに全部言えないのか」

地上デジタル放送だろ。

あと１文字がどうして言えない。

「まぁそれなんだけどな。クスミっちの家のテレビがそれ対応じゃなかったんだ」

「？」

地上デジタル放送に完全移行されるのはまだあと数ヶ月もある。

「別に問題ないだろ？まだ地デジ放送されてないんだから」

テレビが完全に地デジ放送になってしまうのは2011年７月だ。

今は１月だから、まだ余裕はある。

「いいや！」

しかし兄キはきっぱりと否定した。

「クスミっちはそのXデーに備えて家の中のテレビを地デジ対応のテレビに入れ替え中なんだ」

「Xデーって、日はちゃんと決まってるぞ？」

テレビでもきちんと開始日を告知している。

兄キは日まで把握していないってことか。

「つまりは今それでテレビが見られないからこうしてここで見てるってことだ」

「ふーん」

兄キは言い切るとドヤ顔をして見せた。

え？

もしかしてそれで終わりなのか？

話せば長くなると言っていたが、全く長くないんだが。

というツッコミを入れるのも面倒くさい。

オレがしらけていると、ズボンのポケットに入れていた携帯電話がブーブー音を鳴らしながら震えだした。

「ん？」

携帯を取り出しているうちに振動は止まった。

「何だ？メールか」

携帯を開くと、メール受信の通知が来ている。

「何だよ、着信メロディーくらいつけたらどうだ」

兄キが不満そうに言う。

オレは基本、携帯はマナーモードに設定している。

音を出してもいい場所とそうでない場所とでモードを切り替えるのが面倒だからだ。

音が出なくても振動はするから、気づかず大事な連絡を取り逃したなんてヘマは今のところない。

「何だったらオレがアレンジしたえぬえぬクエストの着メロ添付してやろうか？」

こんな時だけお節介を焼きたがる兄キが携帯を出してきた。

「ありがとう。いらねーから」

兄キの好意はもちろんお断りだ。

オレはマナーモードを解除するつもりはないから着メロなんて不要だし、ましてやえぬえぬクエストの着メロなんぞ設定するつもりは毛頭ない。

しかも兄キがアレンジしたやつなんて。

オリジナルかよ。

「何だと！？後悔するなよ！？」

兄キはそう言いながらしばらくの間、携帯を持って待ち構えていたが、オレにその気はないとわかると渋々携帯を片付けた。

後悔することなんてない、絶対。

安心してくれ。

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