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2.メリーバースデー

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5回連続失敗に終わった茉はついにお金を入れる手を止め、わめき出した。

「何でー!?カズマは1回で取れたのに何で私は5回もミスるのー!?」

わめいたからって答えが出るようなものでもないけど、こうでも言わないと茉は気が収まらないのだろう。

そっとしといてやろう。

しかし茉はこれで懲りていなかった。

まだ続けようというのか、財布を覗き込んでいる。

「小銭がなくなったから両替してくる」

「おいおい!」

両替機に向かおうとする茉をオレは思わず引き留めた。

いくら無駄遣いするつもりだ。

「もうやめとけよ。金の無駄だ」

オレが冷静に注意すると、言葉がまずかったか茉は怒り出した。

「無駄って何よー。どうせ下手ですよー」

いや、まぁ下手だから取れないんだろうけど、見た感じは下手じゃないんだよな。

「カズマみたいに一発で取れる人には私の気持ちなんてわかんないわよ。それにねー・・・」

まずい。

茉が機嫌を損ねて愚痴が止まらなくなってしまった。

女の愚痴は長い。

非常に長い。

茉の機嫌を直すにはやはりエヌマーしかないか?

「・・・わかったよ」

このまま愚痴られ続けてもオレ自身が非常に不愉快になるだけだから、この辺で解決策に出よう。

「オレも最後の1回をやってやる。それで取れなかったら誰がやっても無駄だから諦めろ。いいな?」

半ば強制的な選択だが、こうでもしなければ終わらないから仕方ない。

「・・・わかったわよ」

茉も渋々オレの意見に同意した。

さて、面倒だが約束は約束だ。

オレは早速最後の1回をするべくお金を入れた。

スタートと同時に機械から流れてくるBGMがウザい。

UFOキャッチャーにこんな音楽はいらんだろう。

イライラしながらボタンを押す。

するとまたまた偶然にもアームの中にエヌマーが入ってゲットしてしまった。

ま、またしても取れちまった。

もしかしたらクスミがやっているのを見て自然とクスミのテクが身についたとか?

そんなバカな。

1人心の中でノリツッコミをしながら景品取り出し口からエヌマーを取る。

やべえ、何か偶然続きで手が震えてやがるぜ。

「ほらよ」

興奮を抑えながら茉にエヌマーを差し出す。

本当は“オレってば、すげー!”と叫び倒したいくらいだ。

しかしここでガキみたいにはしゃぐと周りから冷たい視線が飛び交う。

ここはあえてクールに、だ。

「・・・ありがとう」

「!!」

ふと茉の顔を見ると目が潤んでいる。

何だ?

感動してんのか?

「カズマ。私すっごく嬉しい」

一瞬泣き出すのかと思った茉は、一転して笑顔を見せた。

う・・・うおおおお。

不覚にも茉にドキッとしてしまったぜ。

女はこういうギャップを持ち合わせてやがるから油断できない。

しかし何だ。

この体中からこみあがってくるホクホクとした達成感は!!

何かオレ、今すげーいいことをした気分。

超気分がいい。

まぐれで取れたのに感謝されるなんて・・・。

抑えがきかなきゃ天狗になっているところだ。
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