second dice

２．メリーバースデー

６

やってみるのはいいが、やったことがないゆえどこを狙えばいいのか全くわからない。

ま、いいか。適当に･･･。

兄キほどコントロールは悪くないが、だからと言ってクスミほどうまいわけでもない。

UFOキャッチャーなんか、やり慣れていない者にとったら運の良し悪しで決まるとしか思えないんだが。

と思っていると、操作した先で止まったアームがエヌマーをつかんでゆっくり戻ってきた。

「あ、取れた」

どこを狙えばいいかわからないまま適当に操作した結果、偶然にも成功してしまった。

「キャー、すごい！カズマ、天才ー！！」

成功に興奮した茉はオレの腕に抱きついてきた。

お、おいおい。

バカやろう！

胸が腕に触れてんだよ！！

オレは少し顔が赤くなったのを悟られないようにスッと茉から離れると、景品口からエヌマーを取り出した。

「満足しただろ。帰るぞ」

オレは茉にエヌマーを渡すと、再び触れられないようにサッと背中を向けた。

「えー、待ってよ。もう１個欲しいー」

せっかく取ってやったのに茉は駄々をこね出した。

「１匹で十分だろ！！」

「やだー。いっぱい欲しいの」

兄キと同じこと言ってんじゃねえ！

だいたいさっきオレがあげたやつと合わせると１匹じゃないだろうが。

あ、間違った。

１個じゃないだろうが！

「これ以上欲しかったら自分で取れ」

偶然も２度は続くまいと思ったオレは、あえて茉を突き放すように言った。

これでいい。

これでぬかりはない。

「ふーんだ、バカズマ！」

バカに一真でバカズマだと！？

勝手に名前を変えるな！

「いいもん。自分で取るもん。バカズマ！」

２回言うな！！

しかしオレ、UFOキャッチャー初めてだったんだけど案外取れるもんなんだな。

Nキャラは元々数が少なかったから狙いも一箇所くらいしかなかったし。

エヌマーは数が多いから取れたのか？

だとしたらオレじゃなく茉でも取れるんじゃないか？

「あ゛ーっ！！」

急に茉が大声を出したかと思うと、オレの手をバシバシ叩いてきた。

「何だよ、痛いな」

「失敗したー！」

見ると、UFOキャッチャー内には何もつかまないで戻ってくるアームの姿があった。

何だ、やっぱり誰でも取れるってもんじゃないのか。

だとしたらさっきのは偶然だったんだな。

「悔しい。もう１回やる！」

茉は眉間にしわを寄せてお金を投入口に入れている。

そんな怒るほどUFOキャッチャーに熱中しなくてもいいのに。

オレは茉がプレイするのを冷めた目で見ていた。

オレはさっきのキャッチは偶然だと思っているから素人目線で見ているのだが、茉は兄キとは違ってコントロールは悪くない。

アームもいいところに移動させているとは思うのだが、なぜかうまくいかずにスカという結果になっている。

２回目も失敗に終わった。

「あぁ、惜しいー」

茉はアームがこっちに戻ってこようとしている頃には既にお金を入れている。

まだやるつもりなのか。

「あ、失敗」

しかし３回目もあえなく失敗した。

「あー、より奥へ行っちゃったー」

４回目も失敗だ。

「あー、またスカだ」

５回目も失敗した。

何だかやる度にお目当てのエヌマーはどんどん奥へ行き、悪い結果になっているように見える。