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２．メリーバースデー

５

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やったってどうせ取れない。

やったことないんだから。

取ったの、クスミだし。

言えないけど。

「ほら、行こ行こ」

「お･･･おぅ」

茉の勢いに勝てるわけもなく、オレは半ば強引にエヌエヌランドへ付き合わされることになった。

正直オレはもうここを卒業したつもりだったのだが。

兄キ達と行くこともなくなったし。

オレ自身ここには用無しだし。

それがまたここに来ることになるとは･･･。

しかし懐かしい。

夏以来だ。

室内が冷房から暖房に変わったことと、UFOキャッチャーの種類に少し変更があること以外は特に何ら変化はない。

あの兄キが愛してやまないNキャラが入っていたUFOキャッチャーも相変わらずの場所に設置されたままだった。

「あー、エヌマーだ」

茉はUFOキャッチャーを発見するや否や、すぐに近寄っていった。

Nキャラと違ってエヌマーはいっぱいいやがるなぁ。

Nキャラは･････････いないか。

マイナーキャラだもんな。

いや、クスミが根こそぎ取ったってことも考えられる。

「ねぇカズマ。あれが欲しい」

茉はオレの服の袖を引っ張りながら早速注文を出してくる。

「おい、名前呼び捨てにするな」

「いいじゃない。じゃあどう呼べばいいのよ」

「今までユノモトって名字で呼んでただろ」

「２人いるからややこしいの。いいじゃん、みんなにそう呼ばれてるんだから」

「うっ」

確かにオレは『一真』、兄キは『兄キ』と呼ばれているから名前で呼ばれることに文句はないんだが、同い年の女に呼び捨てにされると何か変な感じがする。

同じクラスの女子にはユノモトくんって呼ばれているし。

一真って呼び捨てにする女は親くらいだし。

「ねぇ、あれ取ってよ」

茉がUFOキャッチャーの中を指差しながら言う。

しかし指した先にエヌマーがたくさんいすぎて正直どれのことを言っているのかがわからない。

「どれ？」

「あの赤い服着てるエヌマー」

「･･･自分で取れよ」

「ひどっ、取れないから言ってるんでしょ？」

そんなことを言われてもオレが取れるという保証もない。

「オレだって取れねーよ」

茉の期待を裏切るかのように拒否すると、茉は意外な技で返してきた。

「えー、これ取ったってさっき言ったじゃん」

そう言って、さっき手渡した袋をオレの目の前に差し出してくる。

くそっ、こんなことなら面倒でもクスミが取ったものだとハッキリ言っておけば良かった。

「わかったよ」

実に面倒なことになってしまったが、仕方がない。

こうなれば何とやらだ。

「取れなくても文句言うなよ？自信ないんだから」

「うん」

多分取れない可能性の方がはるかに高いだろうから、オレは先にこう言わざるを得なかった。

渋々財布から100円を取り出し、コイン投入口に入れる。

入れた途端、オレの機嫌を煽るかのようなパレードちっくな音楽が流れ出した。

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