50 / 56
9.2人の変化
5
しおりを挟む
と、そんなオレの心配よりも舞台はメインの学校へと移る。
「おはよー」
オレと兄キが教室に入ると、誰かまわず挨拶をしてくれるのがクラスメイト。
今日もオレたちが姿を現した途端、挨拶の言葉が飛んできた。
「おはよーっス」
朝の弱い兄キは普段なら眠気に負けて無言に近いのだが、今日は張り切っているせいか元気よく挨拶を返している。
そんな兄キにクラスメイトの反応率もアップした。
「お、兄キ。今日は朝から目パッチリしてるじゃん」
「何言ってんだ。オレはいつもパッチリかわいいお目目してんよ」
どこがだ、とツッコミを入れたいところだが今はあえてやめておこう。
そもそもそんなことよりオレの目は本日のターゲットを見つけ、そんなことをすることも考えられなくなっていた。
本日のターゲット…クスミ!
クスミはこれから起こるであろうことを何も知らずに絵を描いている。
きっとまたページいっぱいNキャラを描いているのだろう。
兄キはこのターゲットにどう立ち向かうのか知らんが、今日一日しっかり見届けてやろう。
そして…。
キーンコーンカーンコーン。
授業終了のチャイムが鳴った。
一日は一行で書き終えてしまうほどあっという間だった。
「よし、授業終了だ。帰ろうぜ、一真」
兄キはそう言いながら、もう既に帰り支度を済ませている。
「そうだな。家に帰って…」
って、おい!
何か忘れてないか?
兄キ、今日はまだ何もしてないぞ?
「兄キ、帰るのか?」
「あぁ」
「まっすぐ家に?」
「あぁ」
「何か重要なこと忘れてないか?」
「え?」
兄キは軽く考え込んだ。
まさか、朝あんなに張り切っておいて今になって忘れるなんて冗談はやめてもらいたい。
「重要なこと?何かあったか?」
「あっただろ!」
なかなか思い出さない兄キにオレは次第にイライラしてきた。
何だ?
わざとか?
わざと知らないフリをしているのか?
「あ!」
突然兄キが声を上げた。
そして兄キに笑顔が見えた。
そうか、やっと思い出したか。
焦らしやがって。
「そうだ!今日は『えぬえぬといっしょ』のスペシャル番組の日だ!」
「………」
兄キ…どこまで『えぬえぬといっしょ』にこだわるんだよ。
っていうか、っていうか…。
「違うだろ、兄キ!」
「何だよ、一真。今日は十五日だからスペシャルの日だ!」
「そこじゃねえよ!」
「どこだよ!」
「朝何の為に早起きしてたんだよ!」
ここまで言ったらわかるだろ。
く~っ、鈍感にもほどがあるぜ。
オレをここまでイライラさせるのは兄キ、いつもお前だ。
「…何でだったかな?」
おい、本当に覚えてないのかよ。
「おはよー」
オレと兄キが教室に入ると、誰かまわず挨拶をしてくれるのがクラスメイト。
今日もオレたちが姿を現した途端、挨拶の言葉が飛んできた。
「おはよーっス」
朝の弱い兄キは普段なら眠気に負けて無言に近いのだが、今日は張り切っているせいか元気よく挨拶を返している。
そんな兄キにクラスメイトの反応率もアップした。
「お、兄キ。今日は朝から目パッチリしてるじゃん」
「何言ってんだ。オレはいつもパッチリかわいいお目目してんよ」
どこがだ、とツッコミを入れたいところだが今はあえてやめておこう。
そもそもそんなことよりオレの目は本日のターゲットを見つけ、そんなことをすることも考えられなくなっていた。
本日のターゲット…クスミ!
クスミはこれから起こるであろうことを何も知らずに絵を描いている。
きっとまたページいっぱいNキャラを描いているのだろう。
兄キはこのターゲットにどう立ち向かうのか知らんが、今日一日しっかり見届けてやろう。
そして…。
キーンコーンカーンコーン。
授業終了のチャイムが鳴った。
一日は一行で書き終えてしまうほどあっという間だった。
「よし、授業終了だ。帰ろうぜ、一真」
兄キはそう言いながら、もう既に帰り支度を済ませている。
「そうだな。家に帰って…」
って、おい!
何か忘れてないか?
兄キ、今日はまだ何もしてないぞ?
「兄キ、帰るのか?」
「あぁ」
「まっすぐ家に?」
「あぁ」
「何か重要なこと忘れてないか?」
「え?」
兄キは軽く考え込んだ。
まさか、朝あんなに張り切っておいて今になって忘れるなんて冗談はやめてもらいたい。
「重要なこと?何かあったか?」
「あっただろ!」
なかなか思い出さない兄キにオレは次第にイライラしてきた。
何だ?
わざとか?
わざと知らないフリをしているのか?
「あ!」
突然兄キが声を上げた。
そして兄キに笑顔が見えた。
そうか、やっと思い出したか。
焦らしやがって。
「そうだ!今日は『えぬえぬといっしょ』のスペシャル番組の日だ!」
「………」
兄キ…どこまで『えぬえぬといっしょ』にこだわるんだよ。
っていうか、っていうか…。
「違うだろ、兄キ!」
「何だよ、一真。今日は十五日だからスペシャルの日だ!」
「そこじゃねえよ!」
「どこだよ!」
「朝何の為に早起きしてたんだよ!」
ここまで言ったらわかるだろ。
く~っ、鈍感にもほどがあるぜ。
オレをここまでイライラさせるのは兄キ、いつもお前だ。
「…何でだったかな?」
おい、本当に覚えてないのかよ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる