twice dice

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8.ようこそ

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何で冗談だって気づかないんだ。

クスミは冗談を聞いたことがないのか?

「さっきの、兄キの冗談だから!」

「え?冗談?」

「そう。兄キの言うこと真に受けなくていいから。疲れるだけだし」

「コラ!疲れるって何だ!」

言葉の一部分だけを聞き取って、兄キは怒り出した。

こういう相手も疲れるんだよな。

また兄キが変なことを言い出す前にこれくらいでおいとまするか。

「それじゃあそろそろ帰るよ」

「え?」

タイミング的には悪くないはずだが、クスミは驚いていた。

「もう少しゆっくりしていってくれても構いませんけど」

「いやー、あまり長居しても…」

「迷惑じゃないですから」

クスミはオレたちが帰ることに不満があるのか、引き止めようとする。

でもここにいたってもう何もすることはないし、兄キも目的が果たされて用済みなわけだし。

しかし兄キはクスミのセリフに甘えてまだ居座っている。

「そうだよ、一真。クスミっちがせっかくこう言ってくれてるんだから、泊まっていこうぜ」

「まだ言ってんのか、兄キ」

そんな冗談を言うのはオレが本気で怒る前で止めておいてくれよな。

いくらクスミに冗談が通じないからと言っても迷惑になるようなことはさせたくない。

さて帰ろうと決めたら長居は無用だ。

オレは廊下に置いた鞄を取って玄関に向かうと、兄キも渋々オレの後に続いた。

名残惜しい気持ちはわかるが、こういうのはスパッと切り替えないと帰れなくなるぞ。

「それじゃお邪魔しました」

玄関でスリッパから靴に履き替えて、オレたちはクスミに挨拶した。

「いえ、たいしたおもてなしもできなくて…」

まぁ確かに家に来てNキャラ見せてもらっただけだしなぁ。

兄キはそれで十分満足しているが。

「じゃあまた明日な」

「はい。あっ!」

オレたちが挨拶を済ませて家を出ようとすると、それを止めるかのようにクスミは小さく声を上げた。

「ん?」

このまま帰ると気になりそうだったので、オレは振り返ってクスミに尋ねた。

「あ、あの朝のUFOキャッチャーのこと、あれユノモトくんが言ったって…」

朝のUFOキャッチャー?

オレが言った?

あ、あぁ、あれか!

兄キがクラスメイト全員にクスミがUFOキャッチャー得意だって言いふらしたやつ!

ほーら見ろ、兄キ。

やっぱりクスミにとったらあの話を知られるのは迷惑だったんだよ。

きっと困惑して…。

「ありがとうございます」

「へ?」

‘ありがとうございます’?

何だ?

何でお礼なんだ?

「私、クラスの人とあんなに喋ったの、初めてです。ドキドキしたけど嬉しかった」

え?

「ユノモトくんのおかげです」

えぇ!?

あれ、迷惑じゃなかったのかよ。

困ってたじゃん。
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