40 / 56
8.ようこそ
2
しおりを挟む
放課後、兄キの希望通り、オレたちはえぬえぬマーケットの二階にあるゲームコーナーへとやってきた。
真っ先に向かったのは、えぬえぬクエストのキャラクターが入っているUFOキャッチャーだ。
兄キはこのUFOキャッチャーにNキャラがいるかも、という噂を聞いたらしい。
中には主役のエヌマーがたくさん入っているのだが、Nキャラは全く見当たらない。
「いないですね」
「いないなぁ」
兄キとクスミは中を食い入るように見ながら言った。
「エヌマーや他キャラはいるんですけどね」
クスミもNキャラ以外には興味がないからか、ガッカリした口調だ。
「オレはNキャラでないと嫌だぞ」
取ってもらう立場でありながら兄キは人一倍ワガママだ。
「くそっ、やっぱりNキャラはレアだからすぐなくなるんだな」
そして勘違いなこのコメント!
「ザコキャラだから入荷数自体少ないって考える方が妥当じゃないか?」
普通はそういう考えが出るってもんだろ。
それなのにうちの兄キときたら…。
「どうしますか?」
「Nキャラいないなら帰る。『えぬえぬといっしょ』見たいし」
えぬえぬといっしょって…まだ言ってんのかよ!
「え?」
「いや、何でもない」
クスミに聞き返されると兄キはうまくごまかした。
やっぱり心のどこかではその番組を見ていることをバレるのが恥ずかしいんじゃないか。
家ではでかいこと言うくせに。
「悪いな。せっかく来てもらったのにこんな結果で」
「いえいえ、とんでもない」
兄キのやつ、クスミには気を遣ってそんなこと言うくせに、オレにはありがとうの礼一つ言ってくれないのかよ。
クスミも災難だよな。
こんな兄キに振り回されて。
でもクスミは嫌な顔一つ見せない。
それどころか逆に喜んでいるようだ。
「私こそ一緒に行動してくれるのなんてユノモトくんが初めてだから嬉しいです」
「?」
クスミのセリフにオレは一瞬ポカーンとした。
一緒に行動してくれるの、オレたちが初めて?
そんなハズは…。
でもそうか、クスミってオレらと関わっている以外、学校ではいつも一人でいるもんな。
今日はみんなに囲まれていたけど。
今までずっと一人でいたんだもんな。
最近一緒にいることに違和感なかったから、ちょっと前のことなんか忘れていた。
結局目的を果たせなかったオレたちは、長居は無用ということで外に出た。
外はもう夕暮れだ。
沈む太陽が紅く見える。
「じゃあ私はここで」
一人帰る道が異なるクスミは、外に出た途端早々と帰ろうとした。
それを見てオレは慌ててクスミを引き止める。
「ちょっと待って」
「え?」
オレの呼び止めにクスミがこっちに振り返った。
「家まで送るよ。付き合わせて遅くなったし」
「おー、そうしよう、そうしよう」
オレの提案に兄キも賛成のようだ。
喜んでオレの意見に同意する。
真っ先に向かったのは、えぬえぬクエストのキャラクターが入っているUFOキャッチャーだ。
兄キはこのUFOキャッチャーにNキャラがいるかも、という噂を聞いたらしい。
中には主役のエヌマーがたくさん入っているのだが、Nキャラは全く見当たらない。
「いないですね」
「いないなぁ」
兄キとクスミは中を食い入るように見ながら言った。
「エヌマーや他キャラはいるんですけどね」
クスミもNキャラ以外には興味がないからか、ガッカリした口調だ。
「オレはNキャラでないと嫌だぞ」
取ってもらう立場でありながら兄キは人一倍ワガママだ。
「くそっ、やっぱりNキャラはレアだからすぐなくなるんだな」
そして勘違いなこのコメント!
「ザコキャラだから入荷数自体少ないって考える方が妥当じゃないか?」
普通はそういう考えが出るってもんだろ。
それなのにうちの兄キときたら…。
「どうしますか?」
「Nキャラいないなら帰る。『えぬえぬといっしょ』見たいし」
えぬえぬといっしょって…まだ言ってんのかよ!
「え?」
「いや、何でもない」
クスミに聞き返されると兄キはうまくごまかした。
やっぱり心のどこかではその番組を見ていることをバレるのが恥ずかしいんじゃないか。
家ではでかいこと言うくせに。
「悪いな。せっかく来てもらったのにこんな結果で」
「いえいえ、とんでもない」
兄キのやつ、クスミには気を遣ってそんなこと言うくせに、オレにはありがとうの礼一つ言ってくれないのかよ。
クスミも災難だよな。
こんな兄キに振り回されて。
でもクスミは嫌な顔一つ見せない。
それどころか逆に喜んでいるようだ。
「私こそ一緒に行動してくれるのなんてユノモトくんが初めてだから嬉しいです」
「?」
クスミのセリフにオレは一瞬ポカーンとした。
一緒に行動してくれるの、オレたちが初めて?
そんなハズは…。
でもそうか、クスミってオレらと関わっている以外、学校ではいつも一人でいるもんな。
今日はみんなに囲まれていたけど。
今までずっと一人でいたんだもんな。
最近一緒にいることに違和感なかったから、ちょっと前のことなんか忘れていた。
結局目的を果たせなかったオレたちは、長居は無用ということで外に出た。
外はもう夕暮れだ。
沈む太陽が紅く見える。
「じゃあ私はここで」
一人帰る道が異なるクスミは、外に出た途端早々と帰ろうとした。
それを見てオレは慌ててクスミを引き止める。
「ちょっと待って」
「え?」
オレの呼び止めにクスミがこっちに振り返った。
「家まで送るよ。付き合わせて遅くなったし」
「おー、そうしよう、そうしよう」
オレの提案に兄キも賛成のようだ。
喜んでオレの意見に同意する。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お試しデートは必須科目〜しなけりゃ卒業できません!〜
桜井 恵里菜
青春
今から数年後。
少子高齢化対策として、
政府はハチャメチャな政策を打ち出した。
高校3年生に課せられた必須科目の課外活動
いわゆる『お試しデート』
進学率トップの高校に通う結衣は、
戸惑いながらも単位の為に仕方なく取り組む。
それがやがて、
純粋な恋に変わるとは思いもせずに…
2024年5月9日公開
必須科目の『お試しデート』
結衣のペアになったのは
学年トップの成績の工藤くん
真面目におつき合いを始めた二人だが
いつしかお互いに惹かれ合い
励まし合って受験に挑む
やがて『お試しデート』の期間が終わり…
𓈒 𓂃 𓈒𓏸 𓈒 ♡ 登場人物 ♡ 𓈒𓏸 𓈒 𓂃 𓈒
樋口 結衣 … 成績2位の高校3年生
工藤 賢 … 成績トップの高校3年生
歌にかける思い~Nコン最後の夏~
ユキウサギ
青春
学校の中でも特に人気のない部活、合唱部。
副部長の時田 優良(ときた ゆら)は合唱部がバカにされるのが嫌だった。
気がつけばもう3年生。
毎年出てたNコンに参加するのも、もう今年で最後。
全部員11名、皆仲がいい以外に取得はない。
そんな合唱部の3年生を中心に描いた、Nコンにかける最後の夏の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる