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7.広がる世界

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昨日のこともクスミと口裏を合わせることができたし、オレは安心して教室へと戻ってきた。

教室のドアを開けるとさっきと変わらぬクラスメイトの顔ぶれが。

しかしさっきと少し様子がおかしい。

みんなオレの後に入ってきたクスミの周りに群がり始めたのだ。

「なぁなぁ、クスミさんってUFOキャッチャーうまいんだって?」

「プロ級って噂じゃん」

「どうやってコツつかんだの?」

「あっ…あの…」

突然の質問攻めにクスミはただうろたえている。

無理もない。

クスミがこんな大勢の人数と話をしているなんて初めてのことだ。

そんなことはともかく、なぜみんながクスミのUFOキャッチャーの腕前がプロ級であることを知っているのか、ということだが…。

オレはクスミに質問攻めしているクラスメイトたちの横でそれを楽しむように見ている兄キをつかまえて尋ねた。

「おい、兄キ。何でみんなクスミの特技知ってんだよ」

すると兄キは得意そうに答えた。

「だってオレが教えたんだもん」

「兄キか!!」

もしや、と心の中で思っていたがやっぱりか…。

クスミのことを知っているのはオレ達と茉くらいだからな。

クラスの違う茉がわざわざ言うわけないし。

ま、噂なんて知らない間に広まっていくものだから仕方ないと言えば仕方ないが、クスミにとっては困ったことになっているぞ。

「どうすんだよ、兄キ。クスミ困ってるじゃん」

クスミはクラスメイトに囲まれて質問攻めされ続けている。

会話音量を消音にして姿だけ見ると、タチの悪いイジメのようにも見えてくる。

しかし鈍感な兄キは何も感じないようだ。

「そうか?」

まるで他人事のようなセリフだ。

「ちゃんと見ろよ。いきなりみんなに囲まれて戸惑ってんだろ!」

「別にいいじゃん。クスミがUFOキャッチャー得意なこと言ったって。隠す必要もないし」

「いや、そりゃ隠すことじゃないけどさ」

「じゃあいいじゃん」

「いいって…」

オレはそう言いかけてハッと我に返った。

何でオレはこんなに気にしているんだ?

クスミの特技をみんなに知られたくなかった?

何で?

独占欲?

ってことはオレはクスミが…?

まさか!

まさか!!

「何言ってんだよ」

勝手に頭の中で盛り上がったオレは自分で一人ツッコミをすることで落ち着いた。

「お前が何言ってんだよ」

「何だよ、兄キ。人の独り言を聞かないでくれよ」

「聞かれたくなかったら口に出すなよ」

「うっ…」

兄キは時々感心させられるくらい正しいことを言う。

言い返せないだけに少し悔しかったりする。

「なぁそれより今日の帰り、クスミを誘ってえぬえぬマーケットに行こうぜ」

「え?」

いきなりコロッと話を変えたかと思うと、兄キはテンションが高くなった。
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