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6.復活
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なかなか動こうとはしないが、何かをひらめくと動き出した。
そして再び手にお盆を持ってオレの目の前に戻ってきた。
お盆の上にはおかゆの食べ残しがある。
きっと兄キが昼に食べたであろう残りだ。
こんなものを持ってきてどうするつもりなんだ?
‘オレは全部食べきれないくらい病弱だから取ってくれ’とでも言うつもりか?
「オレのおかゆの残りやるから。な?」
そうきたか!
しかし病人の残り物なんて食べる気がしない。
それにオレはこの病気の時に定番として出てくるふやけたご飯は好きじゃない。
「いや、いいよ。オレどうせなら普通のご飯の方がいいし、今お腹すいてないし」
オレがおかゆを断ると、兄キはテーブルにお盆を置いた。
そしてオレの両肩を揺すり、涙で訴える。
「一真~」
「わ、わかったよ」
兄キのしつこいくらいの押しに負け、オレはとうとう承諾してしまった。
ぶつくさ言いながら椅子をNキャラの乗ったタンスまで持っていくと、背後で兄キが小さく声を上げた。
オレは面倒なことを早く終わらせてしまいたかったのと、兄キのすることには興味がないのとで自分のペースを変えずにNキャラを取った。
「おし、取れた。兄キ、取れたぞ」
兄キの方に振り向きつつ言うと、兄キはテレビをつけて画面に見入っていた。
「おいコラ!テレビ見てんじゃねえ!!」
兄キのその自由すぎる行動にオレはいささか怒りを覚えた。
オレがわざわざNキャラを取ってやっているのにのん気にテレビを見るとはいい度胸をしている。
「お、悪い悪い。オレ毎日五時に放映してるNHNの『えぬえぬといっしょ』を見るのが日課なんだ」
兄キは片手を目前に出して謝る仕草をしながら言う。
しかしオレにはそれが心から謝罪しているように見えず、腹が立つ。
「兄キ、そういうのは早く卒業した方がいいぞ」
しかし心優しいオレは軽い嫌みで止めておいてやった。
『えぬえぬといっしょ』という番組は小学生低学年向けの番組なのだ。
番組名と似ているからか、『えぬえぬクエスト』のキャラクターも登場している。
それを高校生になった今でも見ていると、大人になっても見ていそうな気がして恐い。
「何でだよー!いつもじゃんけんするコーナーから始まるんだぞ!それが楽しみなんだ!」
オレの助言に兄キは怒り出した。
そんなに怒らなくてもいいじゃないか。
「そのじゃんけんに参加することで何かいいことがあるのか?」
「ないけど!」
ないのかよ!
しかも強調するように言ったぞ。
っていうか、せっかくの好意をそんなふてくされた態度で返すなら、こっちにも考えがある。
「もう、せっかくNキャラ取ってやったのに感謝しないんだったら、これ元の場所に戻すぞ?」
そう言うと、兄キの態度はコロッと変わった。
そして再び手にお盆を持ってオレの目の前に戻ってきた。
お盆の上にはおかゆの食べ残しがある。
きっと兄キが昼に食べたであろう残りだ。
こんなものを持ってきてどうするつもりなんだ?
‘オレは全部食べきれないくらい病弱だから取ってくれ’とでも言うつもりか?
「オレのおかゆの残りやるから。な?」
そうきたか!
しかし病人の残り物なんて食べる気がしない。
それにオレはこの病気の時に定番として出てくるふやけたご飯は好きじゃない。
「いや、いいよ。オレどうせなら普通のご飯の方がいいし、今お腹すいてないし」
オレがおかゆを断ると、兄キはテーブルにお盆を置いた。
そしてオレの両肩を揺すり、涙で訴える。
「一真~」
「わ、わかったよ」
兄キのしつこいくらいの押しに負け、オレはとうとう承諾してしまった。
ぶつくさ言いながら椅子をNキャラの乗ったタンスまで持っていくと、背後で兄キが小さく声を上げた。
オレは面倒なことを早く終わらせてしまいたかったのと、兄キのすることには興味がないのとで自分のペースを変えずにNキャラを取った。
「おし、取れた。兄キ、取れたぞ」
兄キの方に振り向きつつ言うと、兄キはテレビをつけて画面に見入っていた。
「おいコラ!テレビ見てんじゃねえ!!」
兄キのその自由すぎる行動にオレはいささか怒りを覚えた。
オレがわざわざNキャラを取ってやっているのにのん気にテレビを見るとはいい度胸をしている。
「お、悪い悪い。オレ毎日五時に放映してるNHNの『えぬえぬといっしょ』を見るのが日課なんだ」
兄キは片手を目前に出して謝る仕草をしながら言う。
しかしオレにはそれが心から謝罪しているように見えず、腹が立つ。
「兄キ、そういうのは早く卒業した方がいいぞ」
しかし心優しいオレは軽い嫌みで止めておいてやった。
『えぬえぬといっしょ』という番組は小学生低学年向けの番組なのだ。
番組名と似ているからか、『えぬえぬクエスト』のキャラクターも登場している。
それを高校生になった今でも見ていると、大人になっても見ていそうな気がして恐い。
「何でだよー!いつもじゃんけんするコーナーから始まるんだぞ!それが楽しみなんだ!」
オレの助言に兄キは怒り出した。
そんなに怒らなくてもいいじゃないか。
「そのじゃんけんに参加することで何かいいことがあるのか?」
「ないけど!」
ないのかよ!
しかも強調するように言ったぞ。
っていうか、せっかくの好意をそんなふてくされた態度で返すなら、こっちにも考えがある。
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そう言うと、兄キの態度はコロッと変わった。
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