*いにしえのコトノハ*2 レインドロップス

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足取りは重かった。

雨の中歩くのが嫌いだったこともあったし、歩くうちに次第に罪悪感が募ってきて思わず後ろを振り返った。

かなり歩いたと思った距離は10メートルにも満たなくて、すぐそこに彼の姿が見えた。

無意識に一歩、また一歩と彼に近づく。

目の前まで近づいたところで傘を傾けて差し出した。

斜め前に傾けたことで、私の頭にかかる冷たい雨。

ハッと気づいた時には既に自分の行動は後戻りできない状態になっていた。

「入れば?」

どうしようもなくなった私は、ぶっきらぼうに言うことでしか平常心を保つことができなくなっていたの。

なんてかわいくない私。

ほぼ初対面の異性にこんなことを言われて、向こうもどうしたら良いかわからなくなるって、今なら冷静に考えてわかるのに。

彼は最初、状況を理解できずにキョトンとしていた。

でもすぐ笑顔に変わったの。

「ありがとう」

彼はそう言うと遠慮なく私の傘に入ってきたわ。

自分で傘を差し出しといて言うのも何だけど、お互い知らない者同士よ?

こういうのってあり得る?

でも私、断られなかったことに安心したのを覚えている。

傘を持つ手は緊張で固まってしまった。

彼が代わって持ってくれようとしたのを断らざるを得ないくらい。

今思えばあの行動がきっかけだった。

あれがなければあの気持ちは生まれなかったし、あんな行動もしなくて済んだのかもしれない。
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