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第4話
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あー、もう面倒だな。
これだから女は困る。
「これは…コハルにあげようと思ってたんだよ」
「嘘。だって女の人に借りたって言ってたじゃん」
「あれは…嘘だよ。コハルが騒ぐから、渡しづらくなったんだ。それにお前、泣かないし」
「…泣かないは何の関係があるの?」
「そりゃあ…これだよ」
僕はハンカチを広げ、花柄模様の花の一つを指差して言った。
「この花が涙の水分を吸収して、成長するんだよ。成長したら涙の分、幸せをくれるんだ」
僕は得意げに言う。
女性の話を聞いているうちに、いつの間にかこの言葉を信じるようになっていた。
「何言ってんのー」
コハルはそう言いながら笑い出す。
そして広げたハンカチを受け取ると、そのままそれに顔を埋めて涙を拭った。
「ありがと」
ハンカチで顔を覆ったまま、コハルが言った。
小さな小さな声で呟いた言葉だったけど、僕には確かに聞こえた。
それから少し経って、コハルはハンカチから顔を覗かせた。
すっかり涙が渇いている。
花が吸ってくれたらしい。
「あ、飛行機雲」
窓に視線を移したコハルは、空を見上げている。
僕はその視線を追い、同じように見上げた。
これだから女は困る。
「これは…コハルにあげようと思ってたんだよ」
「嘘。だって女の人に借りたって言ってたじゃん」
「あれは…嘘だよ。コハルが騒ぐから、渡しづらくなったんだ。それにお前、泣かないし」
「…泣かないは何の関係があるの?」
「そりゃあ…これだよ」
僕はハンカチを広げ、花柄模様の花の一つを指差して言った。
「この花が涙の水分を吸収して、成長するんだよ。成長したら涙の分、幸せをくれるんだ」
僕は得意げに言う。
女性の話を聞いているうちに、いつの間にかこの言葉を信じるようになっていた。
「何言ってんのー」
コハルはそう言いながら笑い出す。
そして広げたハンカチを受け取ると、そのままそれに顔を埋めて涙を拭った。
「ありがと」
ハンカチで顔を覆ったまま、コハルが言った。
小さな小さな声で呟いた言葉だったけど、僕には確かに聞こえた。
それから少し経って、コハルはハンカチから顔を覗かせた。
すっかり涙が渇いている。
花が吸ってくれたらしい。
「あ、飛行機雲」
窓に視線を移したコハルは、空を見上げている。
僕はその視線を追い、同じように見上げた。
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