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うみちゃんは靴箱にいたけど帰る素振りはなくて、でも誰かを待っているか尋ねても曖昧な返事だった。

それからキーホルダーのことを尋ねられたんだ。

‘見つかって良かったね’と言っていた。

僕が無くしていたことを知っているみたいに。

「もしかしたら」

うみちゃんなのかもしれない。

と言うより今日1日で判断するなら、うみちゃんしかいない。

「うみちゃんかも」

言葉にすると、それが本当のような気がしてきた。

「うみちゃんって書道教室が一緒だったうみちゃん?」

「うん」

姉ちゃんもうみちゃんのことは知っている。

書道教室に通っていた頃、雨が降ったら姉ちゃんが車で送迎してくれていた。

近所だからうみちゃんも一緒に乗って帰ったことがある。

姉ちゃんの運転は荒いから、申し訳ない気がしたけど。

「僕、学校でキーホルダーを無くしたことを誰にも言ってなかったんだけど、帰り際うみちゃんにそれ見つかって良かったねって言われたんだ」

僕は帰り際のやり取りを姉ちゃんに説明した。

説明していく上で、やっぱり拾ってくれた人はうみちゃんだという思いが強くなっていった。

「それ、きっとうみちゃんが拾い主よ」

「姉ちゃんもそう思う?」

「他に登場人物がいないからってのもあるけど、うみちゃんの言動は疑わしいわ」

「うみちゃんだったら直接僕に渡してくれそうなのに」

「うみちゃんはこうたがわざとキーホルダーを捨てたかもって思ったんでしょ?ありがた迷惑なことをしちゃったかもって思ってるよ」

「僕迷惑だなんて言ってないよ。でも親切な人が拾ってくれたって言っても、それが自分だって言ってくれなかった。姉ちゃんはうみちゃんで合ってると思う?」

「私はうみちゃんだと思うけど」

「うみちゃんにお礼を言って違うって言われたら嫌だし、でも拾ってくれたお礼は言いたいし、うーんどうしよう」

うみちゃんが拾ったのは自分だって言ってくれたらいいのに。

隠す理由って何だろう?

それほど知られたくないってことなのかな?
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