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ノートとふせんを持って立ち去ろうとしていたのに、こういうところは本当に目が早い。

「昨日この大事なキーホルダーを無くしたって泣いてたわよね?」

「泣いてないよ」

確かに昨日、ここで同じように予習をしていたらキーホルダーが鞄から無くなっていることに気づいてうろたえた。

が、泣いてはいない。

いくら何でもそこまで子どもじゃない。

「いいや、目に涙溜まってたもの。半泣き状態だったわよー」

「泣いてないって」

姉ちゃんが僕をからかうのは今に始まったことじゃないけど、しつこいから時々嫌になる。

違うって言っているのに、どうして女の人ってこうしつこいんだろう。

「どうしたの?これ。どこにあったの?」

あまりにもしつこくからかうから見つかった経緯を黙っていようかと思ったけど、昨日キーホルダーが無くなったと発覚してから姉ちゃんは家中探し回るのを手伝ってくれていた。

だから話さないわけにはいかない。

「実は親切な人が見つけてくれたんだ」

「親切な人?」

と言いつつ、その親切な人が一体誰なのかわからないままなんだけど。

僕は先生に説明を受けた通り、姉ちゃんに話した。

「その親切な人って、男?女?」

「わからないよ。教えてくれなかったんだから」

「教えてって言えば良かったじゃない。大事なものを見つけてくれた人なんでしょ?お礼言いたくないの?」

「もちろん教えてって言ったよ。でも教えられないって言われたから」

「それで引き下がるからダメなのよ。もっとしつこく誰?誰?って聞かないと」

確かに言われてみたらそうだ。

もっとしつこく聞けば良かった。

そうしたらヒントくらいはくれたかもしれない。

その時は見つかった喜びの方が大きくて、そこまで頭が回らなかった。
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