*いにしえのコトノハ*6 おばあちゃんの勘違い

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目を瞑ると写真を撮ってもらった光景が浮かんでくる。

あの女の子が門を開けて入った時に、中に入れるのか聞けば良かった。

関係者と信じて疑わなかったから、そういう疑問も生じなかったのだけど。

あの中に入れば本当のベジタブルランドがあったのだ。

その場まで行っただけに悔やまれる。

忘れようとすればするほど後悔となって自分の身に押し寄せてくる。

特急電車に乗って2時間の距離は、遠すぎるわけではないけど近くもない。

着いた時はそれほど感じなかった距離が、今になっては果てしなく遠く感じる。

体は疲れているのに頭がベジタブルランドのことを考えてしまうからか、なかなか寝付くことができない。

気分転換に少し夜風に当たろう。

布団から抜け出し、廊下に出た時だった。

居間で孫たちの声が聞こえる。

いつもはあの子たちが寝てから私も眠りにつくから、変な感じだ。

居間を横切らなくとも外に出ることは可能だから、気にせず足を進めた。

「ばぁば、だいじょうぶ?」

一瞬話し掛けられたのかと思って振り返ったが、声は部屋の中からだった。

ばぁばという言葉に反応して自然と足が止まる。

「大丈夫よ。今日は少し疲れちゃったみたいね」

私が連日早く床についたから、孫たちは心配してくれているのだろう。

その気遣いが心に沁みる。

「まま、ことしのごーるでんういーくはべじたぶるらんどにいきたい」

「わたしも!」

小さい子どもがいるからか、うちではゴールデンウィークや夏休みなどの長期休暇は旅行をすることが決まっていた。

私も娘が小さい頃はよく旅行に連れて行ったものだが、それが娘の代になっても受け継がれていて喜ばしい。

やはり子どもが小さいうちはあちこち出かけて思い出を作ってあげたい。
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