*いにしえのコトノハ*6 おばあちゃんの勘違い

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「へー、本当にベジタブルランドに行ってきたんだー」

孫たちがおとなしくなった間にお菓子を戸棚に隠していた娘が、戻ってくるや否やデジカメを覗き込んで呟いた。

「お菓子だけ買ってきたのかと思ってた。駅にお土産売り場、あるわよね?」

「お土産は駅で買ったわよ」

「そうなんだ。ベジタブルランドで買ったら荷物になるもんね」

「そうじゃなくて、ベジタブルランドにお土産は売ってなかったわよ。ポップコーンしかなかったわ」

「え?」

門の近くにあった屋台を思い出してみる。

屋台にはポップコーンの張り紙がしてあるだけで、それ以外も売っているなんてことはなさそうだった。

「お母さん―――」

「ばぁばー」

娘が何か言いかけたのと、孫たちが声をかけたのがほぼ同時だった。

私は娘に一瞥をくれてから孫たちの方に近寄った。

「ばぁば、なーすひめとはいっしょにおしゃしんとってないの?」

ナース姫はパンプキン城にいるという設定のお姫様の名前だ。

ナスビのような紫色のドレスを着ている。

「ナース姫はいなかったのよ」

「うそだぁ。ぱんぷきんじょうのなかにいるのに」

普段はそういう設定だが、パンプキン城の中には入れないのだから会うことはできない。

「じゃあぶろっこりんずは?」

ブロッコリンズは姫の周りにいる小人たちだ。

「ブロッコリンズも見てないわねぇ」

「えーうそー。ばぁば、ほんとうにべじたぶるらんどにいってきたのー?」

「行ってきたわよ。ちゃんと写真に写ってるじゃない」

「だってなーすひめやぶろっこりんずはいないんだもん」

「そりゃこの門の所にはいないわよ」

パンプキン城は門から見ても遠くにある。

そこにいると噂される姫たちと会うには距離が遠すぎる。
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