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キヨちゃんは高校の同級生だった。
こちらに引っ越してきてから、毎年来る年賀状の住所を頼りに自宅を訪れた。
娘夫婦の家と近かったのだ。
久しぶり、という言葉で済まないほど長い期間を経て再会した私たちは、すっかりあの頃に戻って仲を取り戻し、月に1度は遊びに出かけるようになった。
今月はキヨちゃんが抽選で当てたというお芝居を見に行く予定だった。
その矢先にこんな事態を招いてしまったのだった。
「前日にこんな怪我をしちゃうなんて、浮かれていた罰だわ」
「あら、浮かれていたの?」
「だって電車に乗って遠くに行くなんて、久々だもの」
確かに月に1度遊びに行く先は市内がほとんどで、バスで回れるような近距離ばかりだった。
私は娘夫婦と一緒に住んでいるから、時々車で遠出をすることはあるが、キヨちゃんは一人暮らし。
子どもたちは年に2回帰ってくるぐらいで、夫とは離縁している。
1人で遠くに出かける機会などそうそうないのだろう。
なので今回の怪我が余計に悔やまれる。
キヨちゃんが突然立ち上がった。
足の怪我を気にしつつ、近くにあった戸棚の引出しから何かを取り出し、テーブルの上に置いた。
「これ、もし良かったら使って」
キヨちゃんが差し出してきたのは、お芝居のチケットと電車の乗車券だった。
どちらも有効期限が明日1日だけになっており、使用しなければ無駄になってしまう。
抽選に当たったのはキヨちゃんだけで、当選品としてチケットと最寄駅までの特急乗車券が1人分。
私は付き添いで実費。
それじゃ悪いから、と半額分をキヨちゃんが出してくれる話になっていた。
こちらに引っ越してきてから、毎年来る年賀状の住所を頼りに自宅を訪れた。
娘夫婦の家と近かったのだ。
久しぶり、という言葉で済まないほど長い期間を経て再会した私たちは、すっかりあの頃に戻って仲を取り戻し、月に1度は遊びに出かけるようになった。
今月はキヨちゃんが抽選で当てたというお芝居を見に行く予定だった。
その矢先にこんな事態を招いてしまったのだった。
「前日にこんな怪我をしちゃうなんて、浮かれていた罰だわ」
「あら、浮かれていたの?」
「だって電車に乗って遠くに行くなんて、久々だもの」
確かに月に1度遊びに行く先は市内がほとんどで、バスで回れるような近距離ばかりだった。
私は娘夫婦と一緒に住んでいるから、時々車で遠出をすることはあるが、キヨちゃんは一人暮らし。
子どもたちは年に2回帰ってくるぐらいで、夫とは離縁している。
1人で遠くに出かける機会などそうそうないのだろう。
なので今回の怪我が余計に悔やまれる。
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「これ、もし良かったら使って」
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