食人鬼なのに養い子に性的にいただかれました!?

いぶぷろふぇ

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「はぁ……だから最近妙に追い出したがってたんですね。嫌われたのかと思ってました」
「嫌いになるわけないじゃんッ!だって、だって、どうすればいいか、わからなかったんだもん。まさか、同族を、自分で育てた子を食べたいって思っちゃうなんて……流石に嫌いになったでしょ? 俺、もうダメ……」

 そう鼻をすすりながら喋っていると、ぴたっと背中の手が止まった。俺が怖くなったのかな。そうだよな、自分のことを食べようとした育て親なんて、怖いし気持ち悪いし嫌いになるだけだよな。やっぱり俺がここから出ていくよ、そう言おうとして顔を上げた時だった。

「ユノ」

 久しぶりにシモンに名前を呼ばれた。いつだったか、俺に名前がないと知ったシモンがつけてくれた名前。シモンはとても穏やかな表情で俺を見つめていた。あれ? 嫌いになったんじゃないの? 

「俺もね、ユノのことをずっと食べたいと思っていたよ? まぁ、性的な意味だけど」
「えっ?」

 今、シモンはなんて言った……? 俺を食べたい? セイテキな意味、ってなんだ? っていうか、俺って……いつもの僕呼びはどこに行っちゃったの。そもそも、そんな口調だったっけ。混乱している俺をよそにシモンの暴露は止まらない。 

「そもそもね、ユノと俺は同族じゃないから。俺、ニンゲンだよ? まぁ、あえて訂正しなかった俺も悪いけど、気づかないユノもユノだよね。よく見れば俺の髪は真っ白じゃないし、歯も尖ってないし、耳だって今は見えづらく髪を結ってるけど昔はよく見えたはずでしょ。だから、食人鬼のユノが俺を食べたいって思っちゃうのも無理ないよ」

 ちょっと待って、俺まだお前の急激なキャラチェンジについていけてないんだけど。えっ? ニンゲン? じゃあ何、俺食人鬼の癖に吞気にニンゲンの子ども育てて、挙句の果てにそのことを気づいてすらいなかったってこと? なにそのマヌケ。何処のどいつだよ……って俺か。もう流石にこれ以上隠し事はないよね、なんて縋るようにシモンを見つめるけど、シモンはにっこりと微笑みを浮かべるだけだった。あ、これまだまだあるやつだ。

「最近ユノが出ていけ出ていけばっかり言うからね、そろそろ本当に食べちゃおうと思ってたんだよね」
「ヒエッ」
「幸い、ユノは俺のこと嫌いになったって訳じゃないみたいだし、ユノも俺を食べたいんだよね? じゃあお互いに食べあいっこしよう? ね?」

 例え俺の本能がシモンを食べたいと言っても、俺自身は絶対にシモンを食べたくない。シモンの言っていたセイテキにの意味はよくわからないけど、痛いのは嫌いだし食べられたくもない。いつの間にか俺の頬を挟むようにしていたシモンの両手をそっと離す。いくらシモンがニンゲンだろうと、そもそも俺はシモンの親なのだ。親としてここはしっかりと正さなければ。

「俺はシモンを食べないし、シモンも俺を食べちゃダメ」
「でも、俺美味しいかもよ? 本当にいいの? 」

 そう言ってシモンが指をちらちら顔の前で振ってくる。動物じゃあるまいしそんなんで釣られるかよ……と言い返したいのに、なぜか目が離せない。ごくり。試しにひと舐め、いやひと齧りぐらい許されるんじゃない……? って、いやいや何を言ってるんだ。絶対に食べたくないって思ったばっかりじゃん。でも、でもやっぱりちょっとだけ。って俺は本当に何を……! 

「ねっ、ほらユノも気になるでしょ? とりあえず一口、ほらっ」
「んぐっ」

 ほらじゃない、と言おうとした口にそのまま指を突っ込まれた。追い出そうにもシモンが舌の上でずりずりと擦ってくるから上手くいかない。おまけに手で無理矢理引き剥がそうとする寸前で、もう片方の手が頭の後ろに回されてビクとも動かなくなってしまった。ようやっと手を使ってシモンを剥がそうとするけど、力で負けてしまってどうにも出来ない。万事休すだ。……でも、そんな中俺は気づいてしまった。アレ、もしかしてそんなに美味しくないかも、と。舌の上で好き勝手動くシモンの指は、なんとなく旨味を感じなくもないがとにかく薄味なのだ。これなら大丈夫そうだな、と判断したその時だった。

「やっぱり血みたいに直接的じゃないと駄目か。ほら、ユノ……っ」
「……? アァッ! んッ! ッ~~~~!」
「お、やっぱりこっちの方がいいのか」

 シモンが俺の犬歯を使って突っ込んだままの指を傷つけると、口の中にぶわっと血の匂いが広がった。その瞬間、今まで感じたこともなかった感覚が全身にまわる。美味しいとか、そういう次元じゃない。もっと、もっと欲しい。なぜか分からないけど、体がすごく熱くって、何かが暴れだしそうだった。それならこれ以上血を舐めない方がいいに決まってるのに、欲しくて欲しくてたまらない。
 必死に舌をペロペロと動かすと、じわじわと旨味のようなものが広がってくる。からだ中が燃えるように熱い。でも舐めることを止められない。だんだんとあたまがボーッとしてくる。こんなにも美味しいなら、もっと早くシモンを食べちゃえばよかった。手の抵抗なんかとっくにやめていた。ただただ、シモンが与えてくれる血が美味しくて、与えてくれるシモンが愛おしかった。

「あ~、ユノすごい可愛いよ。美味しい? 俺の血」
「ンっ、おい、しッ。おいしいっ。シモン、もっと」
「そうだね、もっとあげるからね、ユノはこっちもね?」
 
 そういってシモンは空いた手で俺のお尻を撫でてきた。なんでそんなところを、と一瞬眉を顰めたけど、シモンがもう一度俺の犬歯で傷をぐりぐりしたから、美味しい血が溢れてきてそれどころじゃなかった。ペロペロしていると指が勝手に俺の口から出ていこうとする。待って、と口を開けたまま追いかけると、ほらこっちだよ、と言わんばかりに導かれた。そうして、気づいたら寝床に寝転がされていた。


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