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しおりを挟む「それなのにこんなに生意気に育っちゃってねぇ」
「育てたのはあなたですけどね」
……ふぅ、我慢我慢。たとえあんなに可愛かったシモンがとんでもなく減らず口をたたく生意気なガキンチョに育ったとしても、俺はシモンの”親”だから。無駄に大声で怒鳴ったりなどしないのだ、うんうん。
「で、ぼーっと座ってないでさっさと飯運んでもらえますか?」
前言撤回。親だからこそ叱らなきゃいけないこともあるよね。
「お前は親を顎で使うな! でも、ご飯作ってくれてありがと! 今日もおいしそうだね⁉」
「あなたは……怒ってるんだか褒めてるんだか、どっちかにしてください」
だって、ご飯作ってくれたんだもん。作ってもらったからにはありがとうは大切だ。そもそもシモンが俺を怒らせるようなことを言わなければいいのに。一言余計! しばらくブーブー言っていたけど、飯冷めますよと言われてすぐに席に着いた。俺は大人だからな、無駄に引きずったりしないのだ。決して、シモンのご飯に釣られたわけじゃないぞ。
「で、お前はいつになったらここから出てくわけ?」
美味しいキノコ料理をたらふく食べて、満足してから今日も本題を切り出した。シモンは何も言わずにこちらを見ている。このやり取り、もう最近はお決まりみたいになってる。でもいつもこうだ。俺がこの話を始めると、途端にシモンはだんまりになってしまう。……でもこの日は違った。
「何でそんなに僕を追い出したいんですか? 邪魔になりましたか?」
「いやっ、そういう訳じゃないけどさ……お前だっていい感じに成長したし、それに……」
それに、最近変なのだ。シモンを見てると、犬歯がうずうずするというか……とにかく何かを齧ってないと落ち着かなくって、もう齧りたーい! って感情が爆発しちゃう感じになっちゃう。我慢できなくて、最近では木の根っこなんか齧ってるぐらいだ。歯ごたえ的には1番ちょうどいい。
「それに、何ですか?」
「いやっ、別になんでもないッ。とにかく、さっさと出ていく日決めとけよ!」
言い逃げするようにして自分の寝床にもぐりこんだ。前は地べたにそのまま寝転んでいた。けど、今はシモンが作ってくれた敷き布と掛物があるからゴツゴツした石が刺さらなくなった。俺の生活がすばらしく進化したのは全部シモンのお陰だ。そういう意味では、シモンが出ていったら俺の生活も、シモンと出会う前のじめっとした苔レベルに戻っちゃうから出ていって欲しい訳じゃないんだけどなぁ……この謎の現象が収まらないうちはそうも言ってられない。木の根っこばっかり齧ってる訳にもいかないしね。
ふあ……難しいことを考えていたら段々眠くなってきた。そのまま眠気に身を任せるようにして目を閉じた。
※※※※※※※※※※※※
久しぶりの更新になってすみません🙇🏻♀️
完結まで毎日投稿です。
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