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しおりを挟むあれから1ヶ月経った。
先生の前で泣き崩れて、吐いて、あの黒歴史を作ってからもう1ヶ月も経ったのだ。あれから変わったことと言えば、毎週金曜日は通院するようになったこと。
単位のためにもあまり大学を休めない俺に、先生は合わせてくれた。元々先生は金曜日の朝は病院にはいないらしいが、俺の診察のために出勤してくれることになった。
そして今日も通院日だ。
トントントントン
相変わらずボロアパートに住む俺は、今日も今にも壊れそうな階段を降りる。
もう冬が始まりそうな時期だ。朝は一段と冷える。翔太は病院に向かいながらあの日のことを思い出した。
あの日、翔太が目を覚ましたら強く抱きしめられた。そして先生の温もりで、好きだと自覚してしまった。
『うっ、グズっ』
先生に優しく抱きしめられた俺は涙が止まらない。自分からも背に手を回して、強く抱き締めてしまう。
『稲場さん』
泣いてる俺の名前を呼ぶ先生はすごく優しくて、やっぱり〝大人の男性〟を感じた。
その後、落ち着いた頃に診察をしてもらった。
『稲場さんは…PTSDの可能性がありますね』
「PTSD」(心的外傷後ストレス障害)
それが診断された病気だった。
簡単に言えば、心に深く残るほどのトラウマが、フラッシュバックや不眠、うつ症状という後遺症になって残る病気だそうだ。
『稲場さんがパニックを起こした時、どちらも恋人に関することでしたね。稲場さんは〝恋人〟が大きなトラウマとなって症状に現れている状態です。』
『恋人がトラウマ…』
『はい。〝恋人〟や〝恋人に関係すること〟ですね。』
『…』
『大丈夫です。治療をしたり自然に治っていくこともあります。一緒に頑張りましょうね。』
そして俺は日常生活が送りにくくなった。
まず男と2人っきりの状態になると、冷や汗が止まらなくなり軽い過呼吸になる。満員電車など、人との距離が極端に近くなると手足が震える。
大学でも人と接触しないようにするのが大変だし、友達の圭介とすらまともに話せないことにギュッと心が痛くなった。
何より辛いのが、夜は眠くても自力で寝れないのだ。そのため毎日睡眠薬を飲んでいる。
いままでどうしても寝れない日は、ゲイバーに行って一夜限りの相手を探していた。でもそれも出来なくなったのだ。だから今は睡眠薬に頼るしかない。
「はぁ…」
翔太はため息を吐きながら、トボトボと歩いた。
翔太が夜、睡眠薬を頼っているのは男と2人っきりになれない他にも理由があった。
オナニーが出来なくなったのだ。
正確に言えばオナニーは出来る。しかし途中で萎えてしまったり、イク瞬間に元彼のことを思い出して吐いてしまったりするようになった。
俺にとっては性処理すらも〝恋人に関係すること〟だった。
こんな身体じゃ誘うにも誘えないし、溜まるもんは溜まっていく。そして溜まったモノは吐き出せずに、不眠という形で現れた。
ウィーン
毎週通る自動ドア。
「…稲場です」
「はい、それではお掛けになってお待ちください。」
受付を済ませて診察まで椅子に座って待つ。
最初はなれない病院にあたふたしていたが、今ではもう慣れてしまった。
朝とはいえ、大きい病院だからか人が多い。
--早く呼ばれないかなぁ
俺の診察は特殊だ。まず、先生に普通の診察をしてもらう。その後、一緒に精神科へ行き心の病気の診察をする。
先生が一緒に精神科へ行くのは、俺が先生以外と2人っきりになるとパニックになるから。わざわざ時間をとってくれているのだ。
「稲場さーん」
「はーい」
数分待つとすぐに名前を呼ばれた。軽く返事をして席を立った。
「稲場さんですね、どうぞ。」
いつも通りかっこいい先生を見ながら丸椅子に座る。
「おはようございます。」
「おはよーございます。」
栗原は挨拶をしながら服を捲り、聴診器を当てる。翔太はそれに応えるように、服を押さえた。
ドクン…ドクン…
「……うん、いいね。最近変わったこととかある?」
心臓の音を聞きながら栗原は聞いた。
「最近…んー特に変わらないかな。いつもと同じ。」
栗原は「そっか」と軽く答えると、聴診器を外し服を元に戻した。
「うんうん、特に普段と変わりないね。こっちの方で出すお薬はいつも通りでいいかな。」
「はい、大丈夫です」
栗原はカルテを書いて看護師に渡す。そして翔太の方を見て言った。
「それじゃあ、精神科のほう行こっか。」
後ろにワックスで固めた髪が艶やかで美しい。ニコッと微笑む先生はいつも通りかっこよかった。
「はい!」
翔太は返事をするとリュックを持ち立ち上がった。
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遊び呆けて全然小説書けませんでしたー!!来月からは学校とバイトも始まるのでもっと書けなくなるかもです。
元々自分の書ける時にゆっくりやっていく予定だったので、これからも更新がバラバラになります!
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