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「そろそろいいかな」

ピトッ

 イクかイカないかでの快楽の中、俺の孔に男のモノは押し当てられた。

ズプゥウウ

「うっ、っっはぁ、、あ」

 ミチミチっと俺のナカは男の形に変わっていく。

「…くっ、はは、名器だね」

 そしてガッと腰を掴んだかと思うと、一気に奥までズンっと入れた。

パチュンパチュン

 肌と肌がぶつかり合うたびに、ローションの音が卑猥に響く。

「はぁ、あ、、うぁ、うぅん、う」

 酒が入っていても、いつもの癖で無意識に声を抑える。が、あまりの気持ちよさに固く閉じた口から唸るように声が出る。

「ねぇ、そうやって声抑えて、煽ってるの?」

バンバンバンバンバンバン

「うあ、あぁあああ、あ、、あぁあ」

 男は俺の両手をシーツに押さえつけ、音が変わるぐらい激しくピストンした。

「や、やぁ、、も、イクッっ」

 もう本当にイきそう。セックスしてイクなんていつぶりだろう。彼としてる時は、声を抑えるのに必死であまり達したことはない。
 ゴリュゴリュっと前立腺を激しく刺激され、よりいっそう高い愛嬌を上げる。

「ひゃぁ、あぁん、、あぁああ、いく、いくっ」

パチュンパチュン バンバンバンバン

 男は翔太を弄ぶように腰振る。

--あ、だめっ。

 翔太が達しそうになった瞬間だった。


『声抑えろ!萎えんだろーが!!』


 キーンっと居るはずもない彼の声が頭に響いた。

「っ!?う"あぁ"あ"あ"あ"」

「な、どうした!?」

 いきなり声が変わった翔太に驚いた男は、翔太のナカから自分のモノを抜いた。

「うっうっ、うあぁあ」

 翔太は泣きながら包帯の巻かれた首を触った。

 なんで、どうして?どうして彼の声がしたの。今一緒にいるのは彼じゃないのに。
 怖い怖い怖い怖い怖い怖い
 ただ気持ちいいことをしてただけ。彼を忘れたくて、彼とのセックスで感じることが出来なかった快感を味わっていただけ。

 なのに、その心を埋めようとすると彼が俺を支配する。

「ねぇ大丈夫?」

 男の声にハッとする。

「…あ、う、うん、ごめん…」

「いや、いいんだよ。…今のはその首の包帯と関係あるの?」

 言葉を失って思わず下を向く。これじゃあただの肯定と一緒だ。何か言わないと、何か。

「これは、ちが、」

「うん、別に無理して言わなくてもいいよ。どうせ今夜限りの関係だ。」

 よいしょと立ち上がりバスローブを手にし、浴室へ向かう。そして振り返って、戸惑う俺に男は言った。

「…今日はもう辞めようか。君のがそんなんじゃ出来ないでしょ。」

 そしてフッと笑って俺のを見る。

--おれ、の??

カァアアア

 プシュー音が出そうなくらい顔が赤くなるのを感じた。俺の、つまり俺の男の象徴は、さっきの彼の幻聴で酷く萎えていた。

 浴室からシャァアアというシャワーの音が聞こえてくる。俺もあの人が出たらシャワーを浴びよう。全身こんなドロドロじゃ帰りたくても帰れない。
 とりあえずシャワーを浴びるまで、ベッドに潜り込みスマホをいじる。翔太が見ているのは服の通販サイト。包帯を巻いてる以上、いや、首に痕がある限り目立ってしまう。
 それを今日、身をもって実感した。

--それに見えてると自分も気になって触っちゃう。

 いくらかハイネックのシンプルな服をカートに入れ注文していく。速達だから明後日には届くだろう。

カチャン

「上がったよ、君も入りな」

「あ、うん!ありがと」

 汗をシャワーで流し、カジュアルなスーツっぽい服を身にまとった男が戻ってきた。

 入れ違うように浴室に入り、シュルルルと包帯を解き首をさらけ出す。露わになった首は少しスーッとひえた。そしてシャワーで全てを流す。
 全身の男と自分の混ざりあった汗。さっきまで男のモノが入っていた、後ろの蕾のナカにあるローション。達する瞬間に聞こえた彼の幻聴。

サァアアアアアア

 俺はセックスが出来なくなったのだろうか。クニクニと自分のモノを弄ってみる。最中はノリノリで勃っていたくせに、今は勃つ気配すらない。

「はぁ」

 全身洗い終わった俺は、キュッと蛇口をひねりシャワーを止めた。

「あ、上がった?ごめん、私は先に出るよ。ホテル代は置いといたからね。良ければそれで払っておいて」

 脱衣所で服を着ている俺に、扉の向こうから男が声をかけた。

「あの、ほんとごめんなさい。」

「あはは、いいんだよ。そういう日もあるさ。じゃあ、またどこかで出会えたら。」

 男が言う〝一夜限りの関係〟というのは本当だったらしい。俺の謝罪を聞いた後、ガチャンという部屋に扉が閉開する音がし、男はすぐ部屋を出ていったのだと分かった。

 浴室を出ると男が言っていたホテル代が、ベッドのサイドテーブルの上に綺麗に置いてあった。
 そしてホテル代と一緒にメモ用紙が1枚。

『今日はありがとう。余ったお金はご飯代にでもしてね。』

 The大人という感じの達筆で、しかし読みやすい丁寧な字で書いてあった。
 ホテルとご飯代、と称して置いていかれた12000円。手慣れたあの人のことだ。ホテルの相場を知らないわけではないと思う。きっと、トラウマに支配され、泣いた俺を哀れに思い多めにお金を置いていったのだろう。

--どこまでも大人だなぁ

 自分よりもずっと年上の大人の配慮に、翔太は感動した。

 明日も大学で講義がある。幸い終電もまだある。翔太は急いでホテル出て駅へと歩いた。

 残った6000円は、男が言った通り翔太の腹の足しになるのだろう。





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