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第24話『トゥーラとハルニレ』
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幸いにも、キーツの演歌は村民の爆笑を誘った。
彼はお年寄りに握手とサイン攻めにあっていた。
NWSメンバーは二人の門出を見届けてから、その場を辞した。
やがて昼食の時間になって、再びのどかふぇは繁盛した。
居残ったリーダーたちによって、仕込み、ウエイター、ウエイトレス、皿洗いまで仕事はすべて任された。
その中でも、ハルニレの吹っ切れた笑顔が人目を引いた。
ポールとトゥーラは思う存分実力を発揮したし、その華麗な仕事ぶりに、目を見張るものは多かった。
こちらもカップルのタイラーとオリーブは、板についた迫力のウエイター、ウエイトレスで客の目を奪った。
マルクは文句のつけようのない皿洗いをしていたし、ナタルは材料の仕込みを丹念にこなしていたし、アロンは完全な客引き担当だった。
ルイスは時々、ハルニレと視線を交わしながら、微笑むのを忘れなかった。
ともかくも、客が引く三時頃まで大車輪だったのである。
途中、何人かに分けて休憩を取ることになった。
トゥーラとハルニレが休憩することになり、ハルニレは湖岸のベンチにトゥーラを誘った。
雑談の後、トゥーラはハルニレから、ルイスと仲直りできたと報告を受けていた。
「そう……そんなことが。偉いわハルニレちゃん。ちゃんと二人で乗り越えたのね」
「はい。ルイスさんが私の視点まで降りてきてくれて、ちょうどアヤさんと私の立ち位置と、ランスさんとルイスさんのそれが同じだね、って。自分もまだまだ道の途中だから、よかったら一緒に上を目指しませんか、って言ってくださったんです」
「素敵ね……男女が切磋琢磨していくのは、並大抵なことじゃないわ。でも、ルイスが計画的に進行するのが得意なら、ハルニレちゃんには若さと従順な性質があるわ。きっとあなたたちのために太陽もさんさんと降り注ぐわね」
「ありがとうございます!」
先ほどまで心にのしかかっていた重石は何だったのか、と思いたくなるほど、ハルニレは元気だった。
その上、余裕もあった。
ちょっとトゥーラたち二人のことも聞いてみたくなった。
「あの……トゥーラさんたちは息ぴったりですけど、もうプロポーズされたんですか?」
トゥーラは悪戯っぽく唇に人差し指を当てた。
「これはみんなには内緒ね。実は今日、プロポーズされたの」
「えーっ、本当ですか? おめでとうございます!」
「ありがとう。及ばずながらちょっとだけ、ハルニレちゃんたちの心配をしていたら、「人に心配ばっかりしてないで、お披露目のウエディングドレスの相談でもしてほしいね」ですって」
「キャ――ッ!!」
ハルニレは両手を頬に当てて紅潮させた。
「似合わないでしょ? まるで生活の一コマみたいなプロポーズだったわ。お好みでしょ? って言われたから、不承不承OKしたけれど……やり直しを要求しようかしら」
「そ、そんなことないですよ。とってもとっても素敵です! ポールさん、あんなに賑やかな人なのに、何気ないのがお好きなんですね。見直しちゃいました」
「ハルニレちゃんなら、そのプロポーズでときめく?」
「だってかっこよくないですか? あのポールさんが地味にプロポーズなんて、絶対歯痒いと思います。トゥーラさんのために自分を抑えて、普段の会話に織り交ぜて……おしゃれすぎます!」
「そういう見方もあるのね」
言いながらトゥーラは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
込み上げてくる喜びに抗えないようだった。
彼はお年寄りに握手とサイン攻めにあっていた。
NWSメンバーは二人の門出を見届けてから、その場を辞した。
やがて昼食の時間になって、再びのどかふぇは繁盛した。
居残ったリーダーたちによって、仕込み、ウエイター、ウエイトレス、皿洗いまで仕事はすべて任された。
その中でも、ハルニレの吹っ切れた笑顔が人目を引いた。
ポールとトゥーラは思う存分実力を発揮したし、その華麗な仕事ぶりに、目を見張るものは多かった。
こちらもカップルのタイラーとオリーブは、板についた迫力のウエイター、ウエイトレスで客の目を奪った。
マルクは文句のつけようのない皿洗いをしていたし、ナタルは材料の仕込みを丹念にこなしていたし、アロンは完全な客引き担当だった。
ルイスは時々、ハルニレと視線を交わしながら、微笑むのを忘れなかった。
ともかくも、客が引く三時頃まで大車輪だったのである。
途中、何人かに分けて休憩を取ることになった。
トゥーラとハルニレが休憩することになり、ハルニレは湖岸のベンチにトゥーラを誘った。
雑談の後、トゥーラはハルニレから、ルイスと仲直りできたと報告を受けていた。
「そう……そんなことが。偉いわハルニレちゃん。ちゃんと二人で乗り越えたのね」
「はい。ルイスさんが私の視点まで降りてきてくれて、ちょうどアヤさんと私の立ち位置と、ランスさんとルイスさんのそれが同じだね、って。自分もまだまだ道の途中だから、よかったら一緒に上を目指しませんか、って言ってくださったんです」
「素敵ね……男女が切磋琢磨していくのは、並大抵なことじゃないわ。でも、ルイスが計画的に進行するのが得意なら、ハルニレちゃんには若さと従順な性質があるわ。きっとあなたたちのために太陽もさんさんと降り注ぐわね」
「ありがとうございます!」
先ほどまで心にのしかかっていた重石は何だったのか、と思いたくなるほど、ハルニレは元気だった。
その上、余裕もあった。
ちょっとトゥーラたち二人のことも聞いてみたくなった。
「あの……トゥーラさんたちは息ぴったりですけど、もうプロポーズされたんですか?」
トゥーラは悪戯っぽく唇に人差し指を当てた。
「これはみんなには内緒ね。実は今日、プロポーズされたの」
「えーっ、本当ですか? おめでとうございます!」
「ありがとう。及ばずながらちょっとだけ、ハルニレちゃんたちの心配をしていたら、「人に心配ばっかりしてないで、お披露目のウエディングドレスの相談でもしてほしいね」ですって」
「キャ――ッ!!」
ハルニレは両手を頬に当てて紅潮させた。
「似合わないでしょ? まるで生活の一コマみたいなプロポーズだったわ。お好みでしょ? って言われたから、不承不承OKしたけれど……やり直しを要求しようかしら」
「そ、そんなことないですよ。とってもとっても素敵です! ポールさん、あんなに賑やかな人なのに、何気ないのがお好きなんですね。見直しちゃいました」
「ハルニレちゃんなら、そのプロポーズでときめく?」
「だってかっこよくないですか? あのポールさんが地味にプロポーズなんて、絶対歯痒いと思います。トゥーラさんのために自分を抑えて、普段の会話に織り交ぜて……おしゃれすぎます!」
「そういう見方もあるのね」
言いながらトゥーラは、肩を震わせて笑いを堪えていた。
込み上げてくる喜びに抗えないようだった。
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