188 / 276
第19話『休憩』
しおりを挟む
「す、すみません……」
ざわざわする周囲の女性たち。ハルニレの心配そうな顔。
——いたたまれなかった。
意気消沈するルイスに、ランスが後ろから声をかけた。
「ルイスさん、ちょっと……」
ランスが外を指差したため、ルイスはのろのろと立ち上がってドアの外に出た。
「……ランスさん」
「少し休みましょう。下に往ってお茶でもしませんか?」
「——はい」
ランスに肩を抱かれながらテレポートした。
カフェ『ビアンコ・ディアマンテ』。
キーツが夢を叶えた店に入って、オーダーのためレジに向かう。
「ルイスさん、何にしますか?」
ランスが聞くので答えるルイス。
「じゃあ、グレープジュースで」
「では同じものを二つで」
「あっ、ランスさん、お金……」
「いいんですよ、私がお誘いしたんですから。あちらの窓際の椅子がいいでしょう。席、取っててくださいね」
「はい、ありがとうございます」
ルイスは言われた通り、窓際の席に向かった。
その席は主街道に面していて、長テーブルに背の高い椅子が横一列に並んでいた。
ちょっとでも気が紛れるように、それから相手の顔をあまり見なくても済むようにとの、ランスの配慮だった。
「ハァ~ッ」
大きな溜息をついたところで、ランスがトレイを手にやってきた。
「お待たせしました」
ことりとトレイを置くと、濃紫で100%のグレープジュースのグラスが二つ。カラコロと氷が涼しげに音を立てる。
ランスが椅子に座るのを待って話す。
「ありがとうございます。でも俺、初恋でもないのに……こんな……」
情けなさがルイスを襲う。危うく泣きそうになった。
「私の方こそ、ルイスさんを焚きつけるようなことをして、申し訳なかったです」
ランスに謝られて、ルイスは視線を落とす。
「いえ……俺が不甲斐ないんです」
「……ジュース、美味しいですよ。喉が渇いたでしょう? まず潤しましょう」
言われるままにジュースをストローで吸い上げる。
ひんやりした喉越しに救われる。それで火照った心もクールダウンしたようだった。
「みんな気づきましたよね……かなり思わせぶりだったし」
「ルイスさんはフル稼働でしたから、ちょっと調子が悪いんだろう、ぐらいにしか思われてませんよ」
「そうでしょうか? 仕事にまで悪影響が出ちゃって……何だか気持ちの切り替えがうなくいかないんです。リーダーのみんなが一斉に前進を始めたっていうのに俺だけ……どうしたらいいんでしょう?」
「——ルイスさんが今何かに躓いているとしたら、あなたの本心が他の動機でこんがらがっているからじゃありませんか?」
「俺の……本心?」
「ハルニレさんが好きですか?」
「! わかりません。意識しないようにすればするほど気になって……」
ズバリ聞かれて戸惑うルイス。
「意識する、気になる……恋の入口ですね。それでいいんだと思いますよ。恋したって、いいじゃありませんか。誰もあなたを責めてませんよ」
「でも……! リーダー全員がレベルアップしようとしている、この大事な時に」
「ルイスさんは今、焦ってるんですね」
「はい……!」
「じゃあ解決法は一つしかありません」
「えっ」
「恋もレベルアップも同時進行させることです。恋を励みにレベルアップを目標に、真っ直ぐ心を前に向けてあげるんです」
「」
ざわざわする周囲の女性たち。ハルニレの心配そうな顔。
——いたたまれなかった。
意気消沈するルイスに、ランスが後ろから声をかけた。
「ルイスさん、ちょっと……」
ランスが外を指差したため、ルイスはのろのろと立ち上がってドアの外に出た。
「……ランスさん」
「少し休みましょう。下に往ってお茶でもしませんか?」
「——はい」
ランスに肩を抱かれながらテレポートした。
カフェ『ビアンコ・ディアマンテ』。
キーツが夢を叶えた店に入って、オーダーのためレジに向かう。
「ルイスさん、何にしますか?」
ランスが聞くので答えるルイス。
「じゃあ、グレープジュースで」
「では同じものを二つで」
「あっ、ランスさん、お金……」
「いいんですよ、私がお誘いしたんですから。あちらの窓際の椅子がいいでしょう。席、取っててくださいね」
「はい、ありがとうございます」
ルイスは言われた通り、窓際の席に向かった。
その席は主街道に面していて、長テーブルに背の高い椅子が横一列に並んでいた。
ちょっとでも気が紛れるように、それから相手の顔をあまり見なくても済むようにとの、ランスの配慮だった。
「ハァ~ッ」
大きな溜息をついたところで、ランスがトレイを手にやってきた。
「お待たせしました」
ことりとトレイを置くと、濃紫で100%のグレープジュースのグラスが二つ。カラコロと氷が涼しげに音を立てる。
ランスが椅子に座るのを待って話す。
「ありがとうございます。でも俺、初恋でもないのに……こんな……」
情けなさがルイスを襲う。危うく泣きそうになった。
「私の方こそ、ルイスさんを焚きつけるようなことをして、申し訳なかったです」
ランスに謝られて、ルイスは視線を落とす。
「いえ……俺が不甲斐ないんです」
「……ジュース、美味しいですよ。喉が渇いたでしょう? まず潤しましょう」
言われるままにジュースをストローで吸い上げる。
ひんやりした喉越しに救われる。それで火照った心もクールダウンしたようだった。
「みんな気づきましたよね……かなり思わせぶりだったし」
「ルイスさんはフル稼働でしたから、ちょっと調子が悪いんだろう、ぐらいにしか思われてませんよ」
「そうでしょうか? 仕事にまで悪影響が出ちゃって……何だか気持ちの切り替えがうなくいかないんです。リーダーのみんなが一斉に前進を始めたっていうのに俺だけ……どうしたらいいんでしょう?」
「——ルイスさんが今何かに躓いているとしたら、あなたの本心が他の動機でこんがらがっているからじゃありませんか?」
「俺の……本心?」
「ハルニレさんが好きですか?」
「! わかりません。意識しないようにすればするほど気になって……」
ズバリ聞かれて戸惑うルイス。
「意識する、気になる……恋の入口ですね。それでいいんだと思いますよ。恋したって、いいじゃありませんか。誰もあなたを責めてませんよ」
「でも……! リーダー全員がレベルアップしようとしている、この大事な時に」
「ルイスさんは今、焦ってるんですね」
「はい……!」
「じゃあ解決法は一つしかありません」
「えっ」
「恋もレベルアップも同時進行させることです。恋を励みにレベルアップを目標に、真っ直ぐ心を前に向けてあげるんです」
「」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
異世界でネットショッピングをして商いをしました。
ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。
それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。
これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ)
よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m
hotランキング23位(18日11時時点)
本当にありがとうございます
誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。
全て失う悲劇の悪役による未来改変
近藤玲司
ファンタジー
変更前の名前
【すべてを失ってしまう悲劇の悪役になったが、己の力で家族やヒロインを助け、未来を変える】
ある事が原因で小説の世界に転生してしまった主人公
しかし転生先は自分が大好きだったとある小説の悪役 アクセル・アンドレ・レステンクールだった…!
そんな主人公はアクセルの末路を知っていた。家族は襲われ、姉は毒殺、妹は誘拐され、やがて全てが失っていく。そんなアクセルは人間が憎くなり、後の魔王幹部になったが、周りの部下や仲間達にも裏切られ彼は孤独の中で死んでいく。
「俺は…こいつを、こいつらの家族を救いたいだけだ…それに立ち塞がるのならどんな手を使っても蹂躙してやるよ」
彼のことを救いたいと思った主人公はアクセルの家族、ヒロインを救うためチートと呼ばれてもおかしくない狂気な力を使い、救い、そして彼自信が最凶になっていく…。
これはそんな悲劇の悪役が自分の、そして大切な人たちの未来を変えるために奮闘していく話である。
また各ヒロインとの面白おかしい日常物語でもある。
姉の陰謀で国を追放された第二王女は、隣国を発展させる聖女となる【完結】
小平ニコ
ファンタジー
幼少期から魔法の才能に溢れ、百年に一度の天才と呼ばれたリーリエル。だが、その才能を妬んだ姉により、無実の罪を着せられ、隣国へと追放されてしまう。
しかしリーリエルはくじけなかった。持ち前の根性と、常識を遥かに超えた魔法能力で、まともな建物すら存在しなかった隣国を、たちまちのうちに強国へと成長させる。
そして、リーリエルは戻って来た。
政治の実権を握り、やりたい放題の振る舞いで国を乱す姉を打ち倒すために……
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
悪役令嬢に仕立て上げたいなら、ご注意を。
宵
ファンタジー
幼くして辺境伯の地位を継いだレナータは、女性であるがゆえに舐められがちであった。そんな折、社交場で伯爵令嬢にいわれのない罪を着せられてしまう。そんな彼女に隣国皇子カールハインツが手を差し伸べた──かと思いきや、ほとんど初対面で婚姻を申し込み、暇さえあれば口説き、しかもやたらレナータのことを知っている。怪しいほど親切なカールハインツと共に、レナータは事態の収拾方法を模索し、やがて伯爵一家への復讐を決意する。
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる