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第16話『夢の足掛かり』

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 トゥーラがポールに説明する。
「落雨の六月下旬の話なんだけど。日曜日に私とナタル、キーツが顔を揃えて、集会所で夢を語り合ったの。私たちは生産修法の技術があって、食べることにこだわりがあるけど、どうせならカピトリヌスの難民の人たちに食べてもらいたいなって。それはキーツが言って、ナタルも私も同じ考えを持ってて、結構盛り上がったの」
「へぇ……それで?」
 ポールは身を乗り出した。自分抜きのその話が気になるようだ。
「虹球界で郷土料理の店を出して――名前は『プティ・シェ・ヌウ』と名付けたの。「小さな私たちの家」という意味よ――私がオーナーで、ナタルが食料調達と観葉植物担当。キーツも食料調達と、店で流す音楽を担当しようってことになっているの。ちなみにナタルの奥さんが調理担当になってるのだけどね」
「なるほど、それでキーツに作曲料云々って話になるわけね。いいなぁ、いいなぁ、俺もその話に混ぜてよ」
「いいわよ。ポールは何を担当したい?」
「もちろん調理と――あと、店に置く本をセレクトしたいねぇ。子どもから大人まで楽しめる、児童文学から漫画、雑誌まで幅広く扱いたいな。それに客層がカピトリヌスの人たちなら、トピックスで国のその後の状況を知らせてもいいよね」
「さすがポールはアイディアマンね、着眼点が違うわ。じゃあ、本の仕入れをお任せしてもいい?」
「お任せあれ! いい励みになるよ。どさくさに紛れて俺たちが書いた本を置いたりして」
「それは……どうかしら?」
「まぁ、確かに識字率の問題はあるけども、カピトリヌスの人たちにこそ読んでほしい本ってのを、俺たちで準備しようよ。この際、自費出版でもいいじゃない。トゥーラ渾身の作品を世に出してさ、キーツを見習ってクオリティガンガン上げてやるべし」
「……ハードルが高いわ。私、日記しか書いたことがないのよ」
「おっ、書いてんじゃん。じゃあ、話は早いわ。ブログってやったことある?」
「いいえ」
「肩慣らしにちょうどいいよ。やってみて返ってくる反応確かめてごらん。ハードルも低いし、発信しないと誰も応えてくんないよ。それで自分を再発見することもあるしね。うん、まずブログをやってみることを勧めるよ」
「あなた、教えてくれる?」
「いいよ、手取り足取り教えますとも。どうせなら共同制作する?」
「ええ、その方が気が楽だわ」
「うんうん。あっ、それならホームページも作っちゃおうよ。『プティ・シェ・ヌウ』でさ。初めは夢語りなんだけど、虹球界が公にされた時点で計画を拡散するんだよ。おー、ゾクゾクしてきた!」


















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