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第9話『情報の把握』
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リーダーたちを鼓舞してドギュスト部長は帰り、彼らは興奮冷めやらぬ調子で話を続けていた。
「やってくれるね、生命の樹! てっきり俺たち締めだして、レンナちゃんかどわかすつもりなのかと思いきや、命綱渡してくれるとは」
ポールが勢い込んで言うと、マルクがなだめた。
「まぁまぁ、気持ちはわかるが、言葉は選んでくれよ」
「生命の樹は初めからそのつもりだったんじゃないでしょうか? 我々が希望に向かって漕ぎ出すのを待って、夢を通じて負担の少ない方法で、世界の大変革に参加してもらおうと考えていたのでは」
「最初っから云ったんでは、抵抗感も半端なかっただろうからな」
ランスの言葉に同意するタイラー。
「実際俺たちも一揉めしましたからね」
ルイスが真面目に振り返る。
「今朝見た夢にピントを合わせる……生産修法でイメトレしまくってる僕らには造作もないことだもんね」
キーツは素っ気なかったが、しっかり事実を受け止めていた。
「よくよく考えてみれば、生産修法で生命の樹から純エネルギーを引き出してるんだから、俺たちも大なり小なり関係性はあるんだよね」
ナタルはそもそもの連なりを思い返した。
「生産修法が盛んになれば、自ずと私たちの実力も生命の樹に知れるものね。任せてもらえることがあるのは光栄だわ」
トゥーラが珍しく奮い立っている。
「生命の樹の采配にこんなに感激してるのは、たぶん私たちくらいじゃない?」
オリーブの弾むような声に、アロンが被せる。
「それはそうだよ。レンナちゃんのために、出来ることは何でもやろうって決めてたんだから。それが、こういう形で、しかも万世の秘法が一丸となって手助けする方法が示されて、感激しない方が無理ってものさ」
「及ばずながら、加勢しまっせ! みたいな」
ポールは完璧に浮かれていた。
「ところで、名のない力が集合的無意識を通過して、生命の樹と万世の魔女にピントを合わせることで、何が起こるんだろうな?」
タイラーが疑問を投げかけると、マルクが言った。
「俺が話を聞いていて思ったのは、名のない力が夢みたいに俺たちにわかるシンボルに識別されるんじゃないか、ということだ」
「というと?」
「名のない力は文字通り、名前がない。つまり、正体がないということだろう? それを集合的無意識が識別するために、意味あるいは意思を認める。すると、名のない力が俺たち人間に意味づけ――シンボライズされる。そうして、名のない力を取り込む準備が整うんだ」
「どういうこと?」
ほとんどの者がマルクの言葉がわからなかった。
わかったのは、トゥーラ、ランス、アロンの三人だけだった。
「集合的無意識で識別できれば、名のない力は単なる脅威。例えば自然災害に変容するのね」
「それじゃ困るじゃん」
キーツが即座に言った。
「本来ならそうなりがちなんだが、そこに生命の樹と万世の魔女に意識のピントを合わせられる俺たちが介入する。するとどうなるか。おそらく天窓の鍵は俺たちの名のない力に対するイメージを漉し取って、万世の魔女にわかりやすいシンボル。例えば俺たちの声なんかに変容させて伝えることが可能なんじゃないか、という仕組みだ」
「よくわからないけど——要するに名のない力に僕らが与えたイメージが、ただ漠然と相対するよりもわかりやすくなるってこと?」
「そうそう。一人で相対しろって言われたら、誰だってごめん被るが、みんなでやるなら重荷じゃないだろ、ってこと」
「ふーむ」
アロンの説明に、キーツが腕を組んで考え込んだ。
「やってくれるね、生命の樹! てっきり俺たち締めだして、レンナちゃんかどわかすつもりなのかと思いきや、命綱渡してくれるとは」
ポールが勢い込んで言うと、マルクがなだめた。
「まぁまぁ、気持ちはわかるが、言葉は選んでくれよ」
「生命の樹は初めからそのつもりだったんじゃないでしょうか? 我々が希望に向かって漕ぎ出すのを待って、夢を通じて負担の少ない方法で、世界の大変革に参加してもらおうと考えていたのでは」
「最初っから云ったんでは、抵抗感も半端なかっただろうからな」
ランスの言葉に同意するタイラー。
「実際俺たちも一揉めしましたからね」
ルイスが真面目に振り返る。
「今朝見た夢にピントを合わせる……生産修法でイメトレしまくってる僕らには造作もないことだもんね」
キーツは素っ気なかったが、しっかり事実を受け止めていた。
「よくよく考えてみれば、生産修法で生命の樹から純エネルギーを引き出してるんだから、俺たちも大なり小なり関係性はあるんだよね」
ナタルはそもそもの連なりを思い返した。
「生産修法が盛んになれば、自ずと私たちの実力も生命の樹に知れるものね。任せてもらえることがあるのは光栄だわ」
トゥーラが珍しく奮い立っている。
「生命の樹の采配にこんなに感激してるのは、たぶん私たちくらいじゃない?」
オリーブの弾むような声に、アロンが被せる。
「それはそうだよ。レンナちゃんのために、出来ることは何でもやろうって決めてたんだから。それが、こういう形で、しかも万世の秘法が一丸となって手助けする方法が示されて、感激しない方が無理ってものさ」
「及ばずながら、加勢しまっせ! みたいな」
ポールは完璧に浮かれていた。
「ところで、名のない力が集合的無意識を通過して、生命の樹と万世の魔女にピントを合わせることで、何が起こるんだろうな?」
タイラーが疑問を投げかけると、マルクが言った。
「俺が話を聞いていて思ったのは、名のない力が夢みたいに俺たちにわかるシンボルに識別されるんじゃないか、ということだ」
「というと?」
「名のない力は文字通り、名前がない。つまり、正体がないということだろう? それを集合的無意識が識別するために、意味あるいは意思を認める。すると、名のない力が俺たち人間に意味づけ――シンボライズされる。そうして、名のない力を取り込む準備が整うんだ」
「どういうこと?」
ほとんどの者がマルクの言葉がわからなかった。
わかったのは、トゥーラ、ランス、アロンの三人だけだった。
「集合的無意識で識別できれば、名のない力は単なる脅威。例えば自然災害に変容するのね」
「それじゃ困るじゃん」
キーツが即座に言った。
「本来ならそうなりがちなんだが、そこに生命の樹と万世の魔女に意識のピントを合わせられる俺たちが介入する。するとどうなるか。おそらく天窓の鍵は俺たちの名のない力に対するイメージを漉し取って、万世の魔女にわかりやすいシンボル。例えば俺たちの声なんかに変容させて伝えることが可能なんじゃないか、という仕組みだ」
「よくわからないけど——要するに名のない力に僕らが与えたイメージが、ただ漠然と相対するよりもわかりやすくなるってこと?」
「そうそう。一人で相対しろって言われたら、誰だってごめん被るが、みんなでやるなら重荷じゃないだろ、ってこと」
「ふーむ」
アロンの説明に、キーツが腕を組んで考え込んだ。
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