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第8話『本の魔法』

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「どうしたの、ナタル?」
「いや、この本が背中にぶつかってきて……」
「『マーメイドリーフの人魚たち』、超有名どころじゃん」
 ナタルは訝って本を開いた。 
 すると、絵に奥行きが生まれて海の香りが広がった。
「あわわ……」
 本を取り落としそうになるナタル。注目する面々。
 気がつくと、そこは見渡す限り360度海だった!
 立っている場所は岩礁のようだ。
「なんじゃいな、こりゃ」
 キーツが事態を飲み込めずに言った。
 ランスは、相変わらずナタルが開いたままの『マーメイドリーフの人魚たち』の童話本と、海の孤島にテレポートした自分らを分析して言った。
「おそらく本の魔法ですよ。ナタルさんの言葉がきっかけになって発動したんだ。ですから……ここはマーメイドリーフですよ」
「マ、マジ?」
「はい、マジです。ただ因果界のだと思うんですけど」
「……ホントだ、海上標識がない」
 ルイスがそこら一帯を透視して呟いた。
 真央界のマーメイドリーフ沖は、マグロの遠洋漁業が盛んなため、海上浮標識というが浮かんでいるはずなのだ。もちろん、因果界にはそういったものは一切ない。
「連れてこられたからには……何か起こるってことですか?」
 オリーブがあまり驚きもせず言った。
「おそらく」
 ランスはそう言ったが、これ以上何かが起こる気配がない。
「——誰も何も来ないけど?」
「うーん」
 キーツが言って、ナタルが唸る。
「その絵本にヒントかなんかないわけ?」
「いや……うんともすんとも……あれ?」
 ナタルは中ほどにページを進んだところで目を凝らした。
「ん――っ⁈」
「なに、なに、どうした」
「絵の海が揺れてる」
 わらわらと集まって、絵本をのぞき込む面々。
 確かに絵の海がチャプチャプしている。
「なんだろう、これ?」
「さぁ……」
 キーツが問うが、答えたルイスにも訳がわからない。
「この絵本といえば人魚だけど――ページをめくって人魚を見てみたら?」
 オリーブに言われて、ナタルがページをめくると、もっとすごいことになっていた。
 バシャ――ン。
 絵本の中は、そこら中人魚だらけである。
 跳ねたり跳んだり、歌ったり、戯れたり、好き勝手に騒いでいる。
 ご丁寧に水飛沫まで飛んでくる始末。
「……えーっと」
 棒立ちのナタルに代わって、ランスが何と人魚に話しかけた。
「もしもし、人魚の皆さん。私たちをお呼びになったのはあなた方ですか?」
 すると幾人かの人魚が頷いた。
「ちょっと待ってね」
  


















 
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