上 下
66 / 276

第6話『今後の方針』

しおりを挟む
「すみませんでした!!」
 そこまで聞いて、ポールは勢いよく頭を下げた。
「うんうん、俺たちの組に参加するか? 一言アドバイスすれば、味覚が鈍ってるかもしれないから、白湯飲んで体調整えとけ」
 マルクの言葉に「あざーっす」と握手を求めるポール。
「ポールと言えば家事好きなのにねぇ。料理しなくなったの?」
 オリーブが聞くと、ポールは気まずそうに白状した。
「実は……最近、レパートリーがパッとしなくなって、外食して新規にメニューを開発してたところなんだよね」
「それはそれで真面目な理由のようだけど」
 トゥーラに言われて、赤くなるポール。
「食道楽気取ってたらこのざまで。みんな地道に努力してたんだね」
「食は生命の基本だからね。土から育てた作物もいいけど、自分でこさえた物は滋養にいいって教わって、それからだったな」
 キーツが振り返ると、ナタルも言った。
「身土不二っていい言葉だけど、土地のエネルギーをいただくのも心身を調えてくれるんだよね。パラティヌスはどんな食べ物もおいしくて、外食で摂ってもそんなに遜色ないと思う。ただ味が濃いからどうしても味覚が弱りやすいんだよね」
「中には微量の毒がある物もあるが、パラティヌスじゃそれも振り幅がないくらいだからな。ツイてたぞ、ポール。土地の浄化が追いつかない他の国だったら、変なことばっかり引き寄せてたぞ」
「ごもっともで」
 タイラーの言葉に頭が上がらないポール。
 黙って聞いていたアロンが諭すように言った。
「万世の秘法の秘法が意味するものは、技術があるレベルに達していることでも、申し分のない薫陶を受けて精神が鍛えられていることでもないんだぜ。修法を成すことのできるこの肉体。その精妙さを保っていることが大事なんだ。これは俺の言葉じゃなくて、ランスさんが別の言葉で教えてくれたんだ。だから、ポールもそこは勘違いしない方がいいぜ」
「うん、俺も今回は反省した。恥ずかしかったし、みんなに頭が上がらない。急いで肉体改造するから、少し時間をちょうだい」
「急がなくてもいいんだぞ。身体がついてこないからな。手間をかけることを惜しまなければ自然に調うよ」
 マルクの言葉をありがたがるポールだった。

 ランスがNWSの生産修法集計名簿を持ってきた。
「お待たせしました。これが集計名簿です」
「ありがとうございます。どれどれ……植物3~5は全員カバーしてて、うち建材4~6が28人か。優秀じゃないか」
 アロンが身内を褒めると、ポールがボソッと言った。
「食は生命の基本だからね」
「講習は必要かな?」
 ナタルが言うと、タイラーが答えた。
「地道な努力を嫌うやつは、どんな集団にも何%かいるからな。一度粛清かけた方がいいだろう」
「キビシー」
 ポールが目を強く瞑る。
「前はNWSに登録する条件が、生産修法の習得の有無だったよね。昔のことで忘れ去られてるけど」
 オリーブが思い出すと、キーツが言った。
「結局、生産体制を整える必要がなくて、廃止されたんだったよね」
「こんな展開は誰も予想してませんでしたからね」
 ルイスも本当に今さらだと思った。
「とにかく、講習のことと、振り分けは建材の28人にそのまま担当してもらうってことで問題ないな」
 マルクが話を元に戻すと、トゥーラが言った。
「いいと思うわ。十分な人数だし、リーダーも統制が取りやすいから」
「俺たちの振り分けはどうする?」
 タイラーが聞くと、アロンが答えた。
「ナタル・オリーブ・トゥーラ・ランスさん・キーツ・ルイス・あと俺の七人が植物でどうだ。マルクとポール、タイラーが建材を担当してもらった方がいいと思うんだが」
「じゃあ、植物の方はアロンがリーダー。建材はタイラーがリーダーだ」
「おう」
 マルクの指示に、タイラーとアロンが小気味よく返事した。
「俺は当面、ドギュスト部長との連絡係に徹するよ。しばらくはNWSも長老の指揮下に入ろう」
「了解!」
 全員が唱和した。
 













しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

母の中で私の価値はゼロのまま、家の恥にしかならないと養子に出され、それを鵜呑みにした父に縁を切られたおかげで幸せになれました

珠宮さくら
恋愛
伯爵家に生まれたケイトリン・オールドリッチ。跡継ぎの兄と母に似ている妹。その2人が何をしても母は怒ることをしなかった。 なのに母に似ていないという理由で、ケイトリンは理不尽な目にあい続けていた。そんな日々に嫌気がさしたケイトリンは、兄妹を超えるために頑張るようになっていくのだが……。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

【取り下げ予定】アマレッタの第二の人生

ごろごろみかん。
恋愛
『僕らは、恋をするんだ。お互いに』 彼がそう言ったから。 アマレッタは彼に恋をした。厳しい王太子妃教育にも耐え、誰もが認める妃になろうと励んだ。 だけどある日、婚約者に呼び出されて言われた言葉は、彼女の想像を裏切るものだった。 「きみは第二妃となって、エミリアを支えてやって欲しい」 その瞬間、アマレッタは思い出した。 この世界が、恋愛小説の世界であること。 そこで彼女は、悪役として処刑されてしまうこと──。 アマレッタの恋心を、彼は利用しようと言うのだ。誰からの理解も得られず、深い裏切りを受けた彼女は、国を出ることにした。 一方、彼女が去った後。国は、緩やかに破滅の道を辿ることになる。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

ダンジョンの戦闘配信? いやいや魔獣達のための癒しスローライフ配信です!!

ありぽん
ファンタジー
はぁ、一体この能力は何なんだ。 こんな役に立たないんじゃ、そりゃあパーティーから追放されるよな。 ん? 何だお前、自ら寄ってくるなんて、変わった魔獣だな。 って、おいお前! ずいぶん疲れてるじゃないか!? だけど俺の能力じゃ……。 え? 何だ!? まさか!? そうか、俺のこの力はそういうことだったのか。これなら!! ダンジョンでは戦闘の配信ばかり。別に悪いことじゃいけけれど、だけど戦闘後の魔獣達は? 魔獣達だって人同様疲れるんだ。 だから俺は、授かったこの力を使って戦闘後の魔獣達を。いやいや共に暮らしている魔獣達が、まったりゆっくり暮らせるように、魔獣専用もふもふスローライフ配信を始めよう!!

処理中です...