パイオニアオブエイジ~NWSかく語りき〜

どん

文字の大きさ
4 / 276

第1話『NWSの呼吸』

しおりを挟む
「それには宗教の聖句も含まれますか?」
 ランスが問うと、ポールははいはいと両手を広げた。
「もちろんですよ、ノージャンル万歳!」
「票が割れますねぇ。ジャンル別の票にしてほしかった」
 ルイスがテーブルに突っ伏した。
「そうだよなぁ。開票作業はオービット・アクシスで一瞬なんだから」
 アロンも唸った。
 オービット・アクシスとは、この世界の通信機器である。
 と、そこへウェイターがグラスを持ってやってきた。
「ま、何はともあれ乾杯するか」
 マルクが言って、全員にグラスが渡ったところで、ポールが音頭を取る。
「それじゃ、NWSのますますの活躍を祈念して――!」
「乾杯——!!」
 ひとまず喉を潤して、会話が波に乗る。
「やっぱ乾杯はビールっしょ、喉越し最高!」
「いやぁ、熱燗もなかなかだよ」
 ご満悦のポールとナタル。
「芋焼酎もイケるよ。このまろやかな風味」
 キーツが主張すれば、タイラーが決める。
「大人はウイスキーのロックだろ」
「十人十色でいいんじゃない。ところでさっきの話に戻すけど、NWSのみんなに声かけて投票してもらわない?」
 オリーブがグレープフルーツサワー片手に呼びかけた。
「いいねぇ!」
「ウチには特に機関誌とかないけど、この際だからNWS選とか作ったりしてね。編集長はポールで」
「おーっ、オリーブにしては意欲的かつ文化的なご意見」
 失礼なことを言って得意げなポールを見て、タイラーが吹き出した。
 さっと交わされる目配せ。
 全然気づかずにポールが調子に乗る。
「みんな常々、こういう方面にノリが悪いって思ってたんだよね。やる気出してくれるんなら、NWS選は大船に乗ったつもりで任せてくれ」
「ププッ」
 キーツが堪えきれずに腕の中に顔をうずめた。
「で、編集後記としてポールのコラムを載せてな」
 アロンがしれっと持ち上げる。
「そりゃあ腕が鳴るなぁ。何書こうかな?」
「例えば日頃の粋な生活を嫌味なく表現するとか」
 ナタルがかなり深く入り込んだ。
 みんな込み上げてくる笑いを何とか堪える。
「そりゃ逆に不評を買いそうだな。ここは面白おかしく三枚目で……」
「いや、ポールの素顔って、みんな興味あると思うぜ。本人がシリアスなほどウケるぜ、きっと」
 アロンが言うと、初めてポールは「うん?」と首を傾げた。
「おたくじゃあるまいし、誰が喜ぶよ? そんなコラム」
「でもって、みんなでポールの行動を分析したいよな」
 マルクの種明かしで、ポールは真相に気づいた。
「こんのぉ、やったなぁ?!」
 そこで全員で大爆笑。
「くっそぉーっ、新年早々担がれた!」
「……記録21分ね」
 トゥーラは腕時計を見て、メモにさらっと走り書きした。
「書くなっつうに!」
 美人に弱いポールは、トゥーラの仕打ちにイマイチ突っ込めない。
「まぁまぁ、みなさんポールさんの善行に感動して、あなたを見習ってサプライズにしてみただけなんですから」
「柄にもなく殊勝なことするからだよ!」
 ランスは取りなしたが、キーツは本音を言った。
「でもって、あまり感心しないけどな」
 タイラーの意外な言葉に、みんな「えっ?」という顔をした。
「番兵は基本、トイレ休憩は認められないんだ。だから、どうしてもというときは、胃腸の内容物をトイレにテレポートさせる」
「あた――っ……」
 この事実にポールが落ち込む。
「知らなかった、タイラー早く言ってくれればよかったのに」
 オリーブがタイラーを責める。
「いや……盛り上がりに水を差すのも悪いと思って」
「おかげでみんな大ケガだよ。どうしてくれる?」
 ポールがタイラーに全責任を押し付ける。
「おまえが酔っ払ってから門に行かなかったのはなぜだ?」
 タイラーが訝って逆に問う。甘酒はもちろん里でも用意できる。
「えっ、そりゃあ、たぶん禁止されてるだろうと思って……」
「なるほど、里から行けば禁止事項でも、素面で入ればボランティアだからな」
 マルクが頷くと、ルイスがさっとまとめた。
「まぁ、いいことをさせてもらったということで」
「お布施の精神ですね」
 ランスがニコニコして言い置いた。
「サプライズするなら、自分の領分でやるか、要調査ね。反省しました」
 よっ、大富豪とキーツにはやされて、ポールは立ち直った。



































しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

処理中です...