2 / 276
第1話 『因果界の新年会』
しおりを挟む
万世の秘法に焦点を当てよう。
超能力者は通称、位階者と呼ぶ。
七つある宮廷国の首都の上層に、統括本部・支部が置かれ、位階者らの活動拠点は『~の里』になっている。
そのうち、統括本部のあるパラティヌスの活動拠点『童話の里』。
小さな噴水広場では、新年会が催されていた。
昔ながらの古ぼけた里村ではあったが、この日は無礼講。
老いも若きも飲めや歌えの大騒ぎである。
あちこちで歓声が上がり、グラスを鳴らす音、ダンスのドタ足、慣れないパフォーマーまで飛び出して勝手気ままに振舞う。
童話の里でも、指折りの環境修復技術協賛団体である『NEW WORLD SENSATION』、通称NWSの十人のリーダーたちも参加している。
二十代後半から四十代前半の中堅が揃っていたが、忌憚のない意見が出しあえる、風通しのいい人員で構成されていた。
しかし、全員が待ちぼうけを食っている。メンバーが一人足りないのだ。
「遅いな、ポールのやつ……」
8班リーダー、タイラー・アスペクターが腕組みして言った。
180センチ以上の長身で、一張羅の革ジャンを着こなしたタイラーは、人が気圧されるような雰囲気が異色の人物である。
「ったく、普段は頼まれなくても仕切るくせに、みんな揃ってやろうって時には自由さを発揮するんだからね!」
7班リーダー、キーツ・アスペクターがテーブルを人差し指で叩きながら愚痴る。
小柄でアイドル顔のキーツは、仕事の傍ら、アマチュア音楽家として活動していて、見た目はロックミュージシャンだった。
「たぶん、また恒例のサプライズだよ」
2班リーダー、ナタル・アスペクターがしたり顔で言う。
ぬぼーっとした風体に坊主頭が特徴のナタルは、十人の中で唯一の妻子持ちで、身なりに野暮ったさはない。
「誰かいい人紹介したら? アロンが有力じゃないの」
3班リーダー、オリーブ・アスペクターがアロンをからかう。
背がスラリと高く、モデルのような容姿のオリーブは、金髪をボーイッシュにショートにしていて、カジュアルな服装をしている。
対して、9班リーダー、アロンはこれまた自分の容姿を熟知している二枚目で、グレイッシュな髪を掻き上げて言うことには
「俺と付き合いたがる女の子の中に、ポールの奔放さを押さえられる子がいると思うか?」
とのことだった。
じっと目を閉じて真央界を透視していた1班リーダー、マルク・アスペクターは、ふうっと吐息をついた。
「いたぞ」
全員の視線がマルクに集まる。
「どこにいたって?」
キーツが問い返す。
「メーテスの主街道にある造り酒屋の前で、甘酒のテイクアウトの行列に並んでる」
「はぁっ?!」
呆れる面々。
手堅いところが重宝されているマルクは、淡白な顔立ちに清潔感のある服を心掛けていた。
「お題が出ましたね、何をしているんでしょうか?」
10班リーダー、ルイス・アスペクターが身を乗り出した。
ひょろっとして細面のルイスは、スキニージーンズを好んで穿いた。
「ズバリ、造り酒屋に星が点いた」
オリーブが人差し指を前に振った。
「売り子が美人だった」
ナタルが続いた。
「普通のおばちゃんだけどな?」
マルクがやんわり否定した。
「わかった、サプライズの帳尻が合わなくて、言い訳の中立案を取った」
アロンが言うとみんな唸った。
「そこまで手は込んでないと思うわよ」
あっさり言ってのけるトゥーラ・アスペクター。
長い黒髪にしっとりと上品な顔立ちのトゥーラは、トラッドな装いを好んだ。
「まぁまぁ、皆さん。案外ボランティアかもしれないじゃないですか?」
6班リーダー、ランス・アスペクターがなだめた。
牧師をしているランスは、栗色の髪を肩で切り揃えて、黒い詰襟福をきちんと着ている。
はたして真相は――?
超能力者は通称、位階者と呼ぶ。
七つある宮廷国の首都の上層に、統括本部・支部が置かれ、位階者らの活動拠点は『~の里』になっている。
そのうち、統括本部のあるパラティヌスの活動拠点『童話の里』。
小さな噴水広場では、新年会が催されていた。
昔ながらの古ぼけた里村ではあったが、この日は無礼講。
老いも若きも飲めや歌えの大騒ぎである。
あちこちで歓声が上がり、グラスを鳴らす音、ダンスのドタ足、慣れないパフォーマーまで飛び出して勝手気ままに振舞う。
童話の里でも、指折りの環境修復技術協賛団体である『NEW WORLD SENSATION』、通称NWSの十人のリーダーたちも参加している。
二十代後半から四十代前半の中堅が揃っていたが、忌憚のない意見が出しあえる、風通しのいい人員で構成されていた。
しかし、全員が待ちぼうけを食っている。メンバーが一人足りないのだ。
「遅いな、ポールのやつ……」
8班リーダー、タイラー・アスペクターが腕組みして言った。
180センチ以上の長身で、一張羅の革ジャンを着こなしたタイラーは、人が気圧されるような雰囲気が異色の人物である。
「ったく、普段は頼まれなくても仕切るくせに、みんな揃ってやろうって時には自由さを発揮するんだからね!」
7班リーダー、キーツ・アスペクターがテーブルを人差し指で叩きながら愚痴る。
小柄でアイドル顔のキーツは、仕事の傍ら、アマチュア音楽家として活動していて、見た目はロックミュージシャンだった。
「たぶん、また恒例のサプライズだよ」
2班リーダー、ナタル・アスペクターがしたり顔で言う。
ぬぼーっとした風体に坊主頭が特徴のナタルは、十人の中で唯一の妻子持ちで、身なりに野暮ったさはない。
「誰かいい人紹介したら? アロンが有力じゃないの」
3班リーダー、オリーブ・アスペクターがアロンをからかう。
背がスラリと高く、モデルのような容姿のオリーブは、金髪をボーイッシュにショートにしていて、カジュアルな服装をしている。
対して、9班リーダー、アロンはこれまた自分の容姿を熟知している二枚目で、グレイッシュな髪を掻き上げて言うことには
「俺と付き合いたがる女の子の中に、ポールの奔放さを押さえられる子がいると思うか?」
とのことだった。
じっと目を閉じて真央界を透視していた1班リーダー、マルク・アスペクターは、ふうっと吐息をついた。
「いたぞ」
全員の視線がマルクに集まる。
「どこにいたって?」
キーツが問い返す。
「メーテスの主街道にある造り酒屋の前で、甘酒のテイクアウトの行列に並んでる」
「はぁっ?!」
呆れる面々。
手堅いところが重宝されているマルクは、淡白な顔立ちに清潔感のある服を心掛けていた。
「お題が出ましたね、何をしているんでしょうか?」
10班リーダー、ルイス・アスペクターが身を乗り出した。
ひょろっとして細面のルイスは、スキニージーンズを好んで穿いた。
「ズバリ、造り酒屋に星が点いた」
オリーブが人差し指を前に振った。
「売り子が美人だった」
ナタルが続いた。
「普通のおばちゃんだけどな?」
マルクがやんわり否定した。
「わかった、サプライズの帳尻が合わなくて、言い訳の中立案を取った」
アロンが言うとみんな唸った。
「そこまで手は込んでないと思うわよ」
あっさり言ってのけるトゥーラ・アスペクター。
長い黒髪にしっとりと上品な顔立ちのトゥーラは、トラッドな装いを好んだ。
「まぁまぁ、皆さん。案外ボランティアかもしれないじゃないですか?」
6班リーダー、ランス・アスペクターがなだめた。
牧師をしているランスは、栗色の髪を肩で切り揃えて、黒い詰襟福をきちんと着ている。
はたして真相は――?
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
弾撃の魔術師 ~魔法を弾く魔法使い~
カタナヅキ
ファンタジー
主人公の「レイト」は一流の魔術師を目指して魔法学園に入ったが、同級生の女子生徒を庇った際に事件を起こしたせいで退学を言い渡された。彼が在学中に覚えたの防御魔法だけであり、家族の元にも戻らずに冒険者として自立するために冒険者養成学校に入学した。そこでも勉強が苦手な女の子を助けたり、影を操る少年と友達になったり、試験にて魔物に襲われている女の子を救う。
冒険者となった彼の元に過去に助けられた者たちが集まり、優れた能力を持つ仲間が傍にいるせいでレイトは他の人間から強い仲間に寄生する冒険者と馬鹿にされる。しかし、他の人間にどんな風に言われようとレイトは構わず、防御魔法を極めて子供の頃から憧れていた「魔術師」になる事を目指す――
※久々の新作です!!お楽しみください!!
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
殿下、人違いです。殿下の婚約者はその人ではありません
真理亜
ファンタジー
第二王子のマリウスが学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付けた相手は人違いだった。では一体自分の婚約者は誰なのか? 困惑するマリウスに「殿下の婚約者は私です」と名乗り出たのは、目も眩まんばかりの美少女ミランダだった。いっぺんに一目惚れしたマリウスは、慌てて婚約破棄を無かったことにしようとするが...
世界の十字路
時雨青葉
ファンタジー
転校生のとある言葉から、日常は非日常に変わっていく―――
ある時から謎の夢に悩まされるようになった実。
覚えているのは、目が覚める前に響く「だめだ!!」という父親の声だけ。
自分の見ている夢は、一体何を示しているのか?
思い悩む中、悪夢は確実に現実を浸食していき―――
「お前は、確実に向こうの人間だよ。」
転校生が告げた言葉の意味は?
異世界転移系ファンタジー、堂々開幕!!
※鬱々としすぎているわけではありませんが、少しばかりダーク寄りな内容となりますので、ご了承のうえお読みください。
黒猫と12人の王
病床の翁
ファンタジー
神々の戦い『聖邪戦争』により邪神が封印されてから200年後の世界。
一流の殺し屋の青年は、オーガとの戦いにより負傷してしまい、逃げ込んだ先に封印されていた化け猫の猫又の封印を解いた事で化け猫に取り憑かれてしまって・・・。
“王化“により無事にオーガを撃退し、盗賊として生きていく事に。
しかし、そこに妖狐まで現れて・・・。
そんな中、封印された邪神の復活を目論む者が現れる。
神々は自身の神徒に“王化“の能力を与えた。
その力をもって邪神復活の儀を阻止せよとの神託を受けた王達は邪神復活を阻止する為の冒険に出る。
これは神より加護を得た12人の王と、それに巻き込まれた1人の青年の物語である。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる