上 下
49 / 91
第二章

第二十話

しおりを挟む
「神が人殺していいんですの~?黒轢死という死に方はかなり嫌ですわ~。」
 大悟は飛ばされながらも反抗の意思を示していた。

「女の子が女の子を打つなんて、ちょっとはしたなくない?でも、『えすか』にもやってほしいかもしんない。願打の字~。」
 衣好花はそれまでの忍者モードとは打って変わり、目尻を下げて指を咥えて、腰をもじもじとよじっている。手に持つ筆がサインペンとなり、額の二文字も黒から金色に変わっている。会話のイントネーションはいわゆる女子高生風の語尾アップ型である。

「衣好花。ちょっと、キャラ変わったんじゃない?」

「このフードはァ、えすかの本能を抑えるためのものなんだしィ。でもフード取っちゃった方が超気持ちいい。もう何でもしてって感じィ。特にその御幣とか、御幣とか、御幣とかァ。撃欲の字~。」
 衣好花は涎を少々流しながら、楡浬が手にしている御幣をつんつんとつついている。

「そう。その意気だわ。それならアタシが、びしびしビシビシBISHIBISHIやってやるわ。ひひひ。」
 先ほどから、楡浬の中にある何かが開花宣言をしている。磁石のS極とN極が引き合うように、ふたりの間にキケンな絆が構築されつつある。

「早くゥ。えすか、超待ってんだけどォ。待侘の字~。」

「よ~し。リクエストに応えて、軽~く一発いっとくわね。ビシッ!」

「かあああああああ~!」
 楡浬の軽めの御幣スイングを受けて、感激のあまり?地面に腰を付けた衣好花。呼吸が熱く乱れている。

「はあはあはあ。やっと戻って来れましたわ。しかし、この大きな状況変化は何でしょう?」
 大悟は目を白黒させて、変わり果てたっぽい楡浬と衣好花を交互に見ている。

「せっかくいいところだったのに、とんだ邪魔が入ったわ。」

「もっとォ。打って、打って、打ちまくってくんない?打激の字~。」

「やめてくださいまし!アイドルになるという『アイドルなう』の神頼みを成し遂げるのが目的でしょうが。」

「えェ?やめないでよォ。『アイドルなう』より、『害ドルなう』の方がよくない?換合の字~。」

「『害ドル』ですと?言い得て妙な気がします。これはどうしようもない輩を相手にすることになりましたわ。」

「まあいいじゃないの。少々厳しく当たってもへこたれないんだから、やりがいがあるわよ。ひひひ。」

「楡浬様。あなたもキャラ変してませんこと?」

「そんなことないわよ。アタシの熱血指導を受けたいという信者の誕生なんだから、お祝いしたいくらいだわ。ひひひ。」

「仕方ありませんわ。とりあえず、神頼みエントリーは終わりましたから、害ドル、いやアイドルになるためにはどうすればいいかを考えないといけません。ならば、特訓は明日からにしましょう。その忍者服はアイドルらしくありませんわ。他の服を用意して来てくださいな。」

「わかったよォ。JKらしい服装で来るよォ。明日も責めてくんない?痛望の字~。」
 不安という血流が脳内を猛スピードで循環するのを感じる大悟であった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事です

天野ハザマ
ファンタジー
その短い生涯を無価値と魔神に断じられた男、中島涼。 そんな男が転生したのは、剣と魔法の世界レムフィリア。 新しい職種は魔王。 業務内容は、勇者に滅ぼされるだけの簡単なお仕事? 【アルファポリス様より書籍版1巻~10巻発売中です!】 新連載ウィルザード・サーガもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/novel/375139834/149126713

聖少女暴君

うお座の運命に忠実な男
ライト文芸
あたしの人生はあたしがルールだ!シナリオを描くのはあたし!みんな準備はいい?奇跡のジェットコースターだよ! 【週末金・土・日定期更新】 天文部を舞台にした女子高生×ガールズラブ=eスポーツ⁉ どうしてこうなった⁉ 舞台は都内の女子校、琴流(ことながれ)女学院の天文部。 主人公である鳴海千尋(なるみ ちひろ)が女子校に入学して、廃部寸前の天文部で出会った部員たちはみんな一癖あって? 部長であるロシア人クォーター姫川天音(ひめかわ あまね)は中学生時代『聖少女』といわれるほど容姿端麗、品行方正な美少女だった。しかし陰で生徒たちから『暴君』とも呼ばれていたらしい。姫川天音は天文部の部室で格闘ゲームをする問題人物だった。 姫川天音は聖少女なのか? 暴君なのか? 姫川天音は廃部寸前の天文部を隠れ蓑にeスポーツ部を立ちあげる野望を持っていて? 女子校を舞台にした女の子ゆるふわハチャメチャ青春ラブストーリー! ※この作品に実在のゲームは登場しませんが、一般に認知されている格ゲー用語『ハメ』『待ち』などの単語は登場します。この作品に登場する架空の格闘ゲームは作者の前作の世界観がモチーフですが、予備知識ゼロでも楽しめるよう工夫されています。 この作品は実在する人物・場所・事件とは関係がありません。ご了承ください。 この作品は小説家になろうサイト、カクヨムサイト、ノベマ!サイト、ネオページサイトにも投稿しています。また、ノベルアッププラスサイト、ハーメルンサイト、ツギクルサイトにも投稿を予定しております。 イラストレーターはXアカウント イナ葉(@inaba_0717)様です。イラストは無断転載禁止、AI学習禁止です。

「今日でやめます」

悠里
ライト文芸
ウエブデザイン会社勤務。二十七才。 ある日突然届いた、祖母からのメッセージは。 「もうすぐ死ぬみたい」 ――――幼い頃に過ごした田舎に、戻ることを決めた。

~僕の異世界冒険記~異世界冒険始めました。

破滅の女神
ファンタジー
18歳の誕生日…先月死んだ、おじぃちゃんから1冊の本が届いた。 小さい頃の思い出で1ページ目に『この本は異世界冒険記、あなたの物語です。』と書かれてるだけで後は真っ白だった本だと思い出す。 本の表紙にはドラゴンが描かれており、指輪が付属されていた。 お遊び気分で指輪をはめて本を開くと、そこには2ページ目に短い文章が書き加えられていた。 その文章とは『さぁ、あなたの物語の始まりです。』と…。 次の瞬間、僕は気を失い、異世界冒険の旅が始まったのだった…。 本作品は『カクヨム』で掲載している物を『アルファポリス』用に少しだけ修正した物となります。

電気あんま・ボーイズ

沼津平成
ライト文芸
電気あんまに関する短編集!! 付録として「電気あんまエッセイ——おわりに」を収録。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

後宮の下賜姫様

四宮 あか
ライト文芸
薬屋では、国試という国を挙げての祭りにちっともうまみがない。 商魂たくましい母方の血を強く譲り受けたリンメイは、得意の饅頭を使い金を稼ぐことを思いついた。 試験に悩み胃が痛む若者には胃腸にいい薬を練りこんだものを。 クマがひどい若者には、よく眠れる薬草を練りこんだものを。 饅頭を売るだけではなく、薬屋としてもちゃんとやれることはやったから、流石に文句のつけようもないでしょう。 これで、薬屋の跡取りは私で決まったな!と思ったときに。 リンメイのもとに、後宮に上がるようにお達しがきたからさぁ大変。好きな男を市井において、一年どうか待っていてとリンメイは後宮に入った。 今日から毎日20時更新します。 予約ミスで29話とんでおりましたすみません。

白い息吹とココロの葉

カモノハシ
ライト文芸
ある寒い日、突然聞こえるようになった心の声。 人と会話をするのが苦手なコトハはそれを星のささやきと呼び、登校時の楽しみにしていた。 そんなとき、北欧系・イケメン高校生の落とし物を拾ってしまうのだが――?

処理中です...