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第一章
第十五話
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ようやく放課後となった。帰宅部生徒にとっては、一日で至福の時であるが、大悟には疲弊地獄からの脱却を模索するだけの苦しい時間帯となった。
校門に大悟、セーラー制服姿の桃羅、白いブレザーの楡浬が黒い雲オーラを立ちこもらせて向かい合っている。
「まさか、このアタシに、不浄にまみれた人間界の道を歩ませるなんてことはないわよね?貴族は牛車の中で、扇の優雅な風を嗜むものなんだからね。」
大悟は馬男子という立場上、無言の肯定を強いられた。神による人間搾取の弱肉強食という不平等条約は破られることのない憲法なのである。大悟は椅子を持たない白ブレザーのユリにおんぶズマン制度を適用した。
しかし、どの次元に小さいながらも抵抗勢力が存在するのも、生物の生存原理である。
「お兄ちゃん。この状況で、モモを放っておくなんて、極悪非道なことはしないよね。次のテスト成績が地響きを立てて崩壊するからね。」
「どっちが極悪非道だ。テストを人質に取るな!ダブルおんぶズマンなんて聞いたことがないぞ。」
テスト成績という伝家の宝刀を前に屈して、仕方なく大悟は桃羅を後ろへ乗せようとすると、桃羅はお腹側に抱きついてしまった。
「何をするんだ。おんぶズマンは後ろだと校則に規定されているぞ。」
「教師は緊急事態では校則を破ることが認められているんだよ。」
「これのどこが緊急事態だよ。極めて普遍的な下校時刻の校門前だぞ。」
「ちょっと、微生物の蠕動運動なんかやってるのよ。神を待たせて時間を浪費するなんて犯罪だわ。不敬罪よ、婦警座位にするわよ。」
「その奇妙奇天烈なポジションはなんだ?」
「アタシを前に乗せなさい!」
大悟の頭に電流が走り、絶句した。何かを想像した大悟は顔を赤らめて頬を打った。
「ちょっと待ってくれ。前おんぶズマンはマズい。妹の桃羅ならその姿勢キープをガマンできるが、一般女子では自信がないぞ。」
桃羅は大悟の顔色を見て、情けなさそうに下を向いた。
「あまりに不条理で悔しいけど、それはお兄ちゃんの限界だね。」
「下賤な人間が言うことの意味がわかないわ。いったいどういうことなのよ。神様にわかる言語で説明しなさいよ。」
楡浬は桃羅を見下ろして、眉根のシワを増やすばかり。
「ふんぞり返る神は理解のゴールには届かないよ、届いてほしくないし。届いたらきっと、お兄ちゃんがハ、ハッスルしてしまう。」
桃羅は大悟の前にしがみついた楡浬を連想した。桃羅の脳裏を楡浬の巨乳が掠めとり、大脳すべてを占領し、桃羅も大悟と同じ顔色となった。やはり血の繋がった兄妹である。
結論として、桃羅は大悟の前ポジションを取ることなく、ワンマンおんぶズマン楡浬という形態で帰宅した。楡浬は、馬上で終始首を捻ったままであった。
校門に大悟、セーラー制服姿の桃羅、白いブレザーの楡浬が黒い雲オーラを立ちこもらせて向かい合っている。
「まさか、このアタシに、不浄にまみれた人間界の道を歩ませるなんてことはないわよね?貴族は牛車の中で、扇の優雅な風を嗜むものなんだからね。」
大悟は馬男子という立場上、無言の肯定を強いられた。神による人間搾取の弱肉強食という不平等条約は破られることのない憲法なのである。大悟は椅子を持たない白ブレザーのユリにおんぶズマン制度を適用した。
しかし、どの次元に小さいながらも抵抗勢力が存在するのも、生物の生存原理である。
「お兄ちゃん。この状況で、モモを放っておくなんて、極悪非道なことはしないよね。次のテスト成績が地響きを立てて崩壊するからね。」
「どっちが極悪非道だ。テストを人質に取るな!ダブルおんぶズマンなんて聞いたことがないぞ。」
テスト成績という伝家の宝刀を前に屈して、仕方なく大悟は桃羅を後ろへ乗せようとすると、桃羅はお腹側に抱きついてしまった。
「何をするんだ。おんぶズマンは後ろだと校則に規定されているぞ。」
「教師は緊急事態では校則を破ることが認められているんだよ。」
「これのどこが緊急事態だよ。極めて普遍的な下校時刻の校門前だぞ。」
「ちょっと、微生物の蠕動運動なんかやってるのよ。神を待たせて時間を浪費するなんて犯罪だわ。不敬罪よ、婦警座位にするわよ。」
「その奇妙奇天烈なポジションはなんだ?」
「アタシを前に乗せなさい!」
大悟の頭に電流が走り、絶句した。何かを想像した大悟は顔を赤らめて頬を打った。
「ちょっと待ってくれ。前おんぶズマンはマズい。妹の桃羅ならその姿勢キープをガマンできるが、一般女子では自信がないぞ。」
桃羅は大悟の顔色を見て、情けなさそうに下を向いた。
「あまりに不条理で悔しいけど、それはお兄ちゃんの限界だね。」
「下賤な人間が言うことの意味がわかないわ。いったいどういうことなのよ。神様にわかる言語で説明しなさいよ。」
楡浬は桃羅を見下ろして、眉根のシワを増やすばかり。
「ふんぞり返る神は理解のゴールには届かないよ、届いてほしくないし。届いたらきっと、お兄ちゃんがハ、ハッスルしてしまう。」
桃羅は大悟の前にしがみついた楡浬を連想した。桃羅の脳裏を楡浬の巨乳が掠めとり、大脳すべてを占領し、桃羅も大悟と同じ顔色となった。やはり血の繋がった兄妹である。
結論として、桃羅は大悟の前ポジションを取ることなく、ワンマンおんぶズマン楡浬という形態で帰宅した。楡浬は、馬上で終始首を捻ったままであった。
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