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第一章
第一話
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うららかな春の日差しが忙しそうに登校する生徒の背中を後押ししている登校ロード。その途中に見える大きくて威圧感のある鳥居は、金箔で覆われた豪奢な造りである。境内には人が溢れて、参道へ繋がる登校路まで参拝者が列を組んでいる。いずれの参拝者も信心深いのか、お賽銭用にお札を手にしている。
ふたりの男女がいちゃつきオーラ満載で、歩いている姿が見える。
男子は、涼しげな青い瞳に、黒い髪は芯の強い男子の心を表現するように、尖った先を四方八方に向けている。精悍に鋭角なる顎。少々浅黒な肌が異性を引き付ける黒い学ランを纏ったイケメンである。
ピンク色の長い髪の女子は、両手で男子の左腕をロックし、さらに大きな胸を押し付けてくる。
「こら桃羅。ベタベタするな。暑苦しいぞ。これじゃ、逮捕ホヤホヤの凶悪犯状態だろ。周りの視線が突き刺さって貫通して痛いぞ。もはや全身穴だらけの如雨露人間宣告がスタンバイしているぞ。」
「大悟お兄ちゃん。それならモモが永世恋人宣言に切り替えるよ。手続きは超カンタンだよ。この場で、モモに熱いキスすればいいだけなんだから。先着一名様にはパンチラのオプションも無料提供しているから、今から10秒以内に電話してよ。なんなら口鬱しでも構わないよ。」
「その文字変換通りの気持ちをありがたく受け取らずに、返却するぞ。クーリングオフ会やり放題だ!」
「お兄ちゃん。そんなに遠慮しちゃって、やっぱり照れ照れのツンデレだねえ。兄萌え冥利に尽きるよ。」
「どこがツンデレだ!」
「さあさあ、お兄ちゃん。いよいよお待ちかねのアサイチのパンチラだよ。チラチラ、拉致拉致、不埒。」
「オレを不当拘束しながら、パンチラするなあ!」
騒がしいふたりをよそに、登校路の生徒たちは、学校への歩みを働きアリのようにきちんと並んで進めており、少々異様である。というのもすべて二人組ペアを構成している。ひとりは白いセーラー服、もうひとりは黄金色のブレザーとプリーツスカートを日の光に輝かせている。
しかしふたりは横に並んでいるのではない。黄金色は同色の椅子に腰掛けて、それを白いセーラー服が背中に担いでいる。セーラー服は腕を後ろに回して、椅子を担ぐというかなり不自然な姿勢である。すべてのセーラー服女子は鈍い銀色の大汗を流しながら、眉間に深いシワを寄せる苦しい表情の大安売りをしている。反対に黄金ブレザーは、羽根付きの扇子を貴族の優雅さを見せつけるようにあおいでいる。しかしちょっと力を入れると、扇子は長く伸びてムチのようにしなって、当然のようにセーラー服の肩を蚯蚓腫れにする凶器と化している。一般女子が椅子付きの女子を抱えて歩いてるのだから、その消耗度は想像にあまりある。
全体をよく見ると、椅子に乗っている女子にはいくつか種類があり、黄金ブレザーの他に、銀色も多数あり、ごくわずかに黒いブレザーを着ている者も見える。さらに、椅子がない女子もわずかにいて、白ブレザーの彼女たちはおんぶされている。
大悟は、顔をさかりのついた猫のようにマーキングしてくる桃羅を引き剥がす運動を繰り返しながら、開口した。
「いつもながら奇妙な光景だな。椅子・女子を背負う『おんぶズマン制度』は校則で決められているとはいえ、あんなモノを担いで登校するなんて、苦行もいいとこだ。いつでも悟りが開けそうだ。」
「そうだね。でもお兄ちゃんはモモが絶対に守るから安心して、妹溺愛に専念していいよ。」
「こんなに苦しいなら、愛などいらぬ。」
「お兄ちゃん。どこかの世紀末覇王のように振る舞っても妹溺愛は色褪せしないよ。」
「マーキング行為を継続しながら言うな。匂いが消えないだろうが!」
ふたりの男女がいちゃつきオーラ満載で、歩いている姿が見える。
男子は、涼しげな青い瞳に、黒い髪は芯の強い男子の心を表現するように、尖った先を四方八方に向けている。精悍に鋭角なる顎。少々浅黒な肌が異性を引き付ける黒い学ランを纏ったイケメンである。
ピンク色の長い髪の女子は、両手で男子の左腕をロックし、さらに大きな胸を押し付けてくる。
「こら桃羅。ベタベタするな。暑苦しいぞ。これじゃ、逮捕ホヤホヤの凶悪犯状態だろ。周りの視線が突き刺さって貫通して痛いぞ。もはや全身穴だらけの如雨露人間宣告がスタンバイしているぞ。」
「大悟お兄ちゃん。それならモモが永世恋人宣言に切り替えるよ。手続きは超カンタンだよ。この場で、モモに熱いキスすればいいだけなんだから。先着一名様にはパンチラのオプションも無料提供しているから、今から10秒以内に電話してよ。なんなら口鬱しでも構わないよ。」
「その文字変換通りの気持ちをありがたく受け取らずに、返却するぞ。クーリングオフ会やり放題だ!」
「お兄ちゃん。そんなに遠慮しちゃって、やっぱり照れ照れのツンデレだねえ。兄萌え冥利に尽きるよ。」
「どこがツンデレだ!」
「さあさあ、お兄ちゃん。いよいよお待ちかねのアサイチのパンチラだよ。チラチラ、拉致拉致、不埒。」
「オレを不当拘束しながら、パンチラするなあ!」
騒がしいふたりをよそに、登校路の生徒たちは、学校への歩みを働きアリのようにきちんと並んで進めており、少々異様である。というのもすべて二人組ペアを構成している。ひとりは白いセーラー服、もうひとりは黄金色のブレザーとプリーツスカートを日の光に輝かせている。
しかしふたりは横に並んでいるのではない。黄金色は同色の椅子に腰掛けて、それを白いセーラー服が背中に担いでいる。セーラー服は腕を後ろに回して、椅子を担ぐというかなり不自然な姿勢である。すべてのセーラー服女子は鈍い銀色の大汗を流しながら、眉間に深いシワを寄せる苦しい表情の大安売りをしている。反対に黄金ブレザーは、羽根付きの扇子を貴族の優雅さを見せつけるようにあおいでいる。しかしちょっと力を入れると、扇子は長く伸びてムチのようにしなって、当然のようにセーラー服の肩を蚯蚓腫れにする凶器と化している。一般女子が椅子付きの女子を抱えて歩いてるのだから、その消耗度は想像にあまりある。
全体をよく見ると、椅子に乗っている女子にはいくつか種類があり、黄金ブレザーの他に、銀色も多数あり、ごくわずかに黒いブレザーを着ている者も見える。さらに、椅子がない女子もわずかにいて、白ブレザーの彼女たちはおんぶされている。
大悟は、顔をさかりのついた猫のようにマーキングしてくる桃羅を引き剥がす運動を繰り返しながら、開口した。
「いつもながら奇妙な光景だな。椅子・女子を背負う『おんぶズマン制度』は校則で決められているとはいえ、あんなモノを担いで登校するなんて、苦行もいいとこだ。いつでも悟りが開けそうだ。」
「そうだね。でもお兄ちゃんはモモが絶対に守るから安心して、妹溺愛に専念していいよ。」
「こんなに苦しいなら、愛などいらぬ。」
「お兄ちゃん。どこかの世紀末覇王のように振る舞っても妹溺愛は色褪せしないよ。」
「マーキング行為を継続しながら言うな。匂いが消えないだろうが!」
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