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プロローグ

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「ぷにゅ、ぷにゅ、ぷにゅ。朝だよ~。早く起きないともっとぷにゅ、ぷにゅしちゃうよ。あっ、わかった。モモのおっぱい感触を楽しんで、寝たふりしてるんだ。超えっちだねえ。いまだ筋肉の意識は、夢の中で大脳からの行動指示を気長に待っている状態だから、モモが元気にしてあげるからね。ボディランゲージゲート開放!アツアツの恋人には言葉はいらないんだよ。こうして、からだをすり寄せるだけで、重い思いは伝わるよね。」

やや大きめの一戸建ての二階の部屋でベッドに横たわる男子。モモという女子は男子のベッドの上で四つん這いになり、腕立て伏せでもするように大きな胸を押し付けている。ピンク色のパジャマの似合うモモは、桃色の髪を背中に軽やかに乗せている。ドングリを横にしたような大きな瞳、健康そうに赤味を帯びた頬と、小さいが肉感的な唇が魅力的である。

「やめろ、桃羅。恋人なんかじゃね。実の兄妹というのが正しい日本語表現だろうが。実の妹が朝っぱらからいったい何をやってるんだ。その風船爆弾をどけて、ゆっくり寝かせてくれ。いつものこととはいえ、よくこんな羞恥ポーズを飽きずにやるなあ。少しは自分を大事にしろよ。」

「大悟お兄ちゃん、モモを気づかってくれてありがとう。早朝おっぱいサービス期間は、お兄ちゃんと赤絨毯を歩く日までキープしておくよ。」

「そのサービスは、別のフォルダに保存しておけよ!」

「じゃあ、モモは朝食の支度をしてくるからね。お楽しみの続きはあとでね。」
桃羅は鼻歌混じりに階段を下りて、大悟は布団をかぶってベッドに潜り込んだ。

その1分後。再び布団上に重量感を覚えた大悟。
「桃羅。キッチンに行ったんじゃなかったのか。重くはないけど、キツいぞ。すぐに降りてくれ。」

「ぷにゅ、ぷにゅ、ぷにゅ。」
たわわに実った胸が、大悟の頭で膨らんだ布団に、惜しげもなく押し付けられている。

「苦しいから、やめろと言ってるだろう。桃羅!」
布団から顔を出した大悟の網膜に投影されたのは、純白セーラー服を着た金色ツインテールの美少女。腰まである髪が左右に揺れている。華奢な腰回りに不釣り合いに装備された胸サイズは、桃羅よりも一回り大きく見える。

「これでいいのかしら。こうすると、人間の男子は気持ちよく感じるらしいって聞いてるけど。神である剣徒楡浬がこんな奉仕をするなんて、未来永劫ないんだから、感謝してこの場で大憤死したぐらいじゃ足りないわよ。」

やや吊りがちなことを感じさせない大きな目、白桃色に澄んだほっぺたに似つかわしい小さな鼻と唇の女子。大悟はあまりの美少女ぶりに一気に目が覚めた思いであったが、その気持ちを全力で嚥下して、口を開けた。

「勝手に人の家に入って安眠妨害するんじゃねえ。変質者か、ストーカー確定だな。それにしてもデカいなあ。」
ベッドから起き上がって、巨乳をまじまじと見つめる大悟は、思春期は青春なんだから仕方ないという言い訳材料に悪用する健全男子であった。

「ちょっと、いったいどこ見てるのよ。やっぱり人間の男子は不潔だわ。こんなのが、神痛力ポイント稼ぎの神経垂迹相手なのかしら。一度入ったら出られない絶望トンネルに迷い込んだ気分だわ。」

「神痛力ポイント?いったい何を言ってるんだ?意味不明用語と態度、出現方法でオレの頭は朝から汚れ物で一杯の洗濯機カオス状態だぞ。メイドさんのように、ちゃんと洗って干して乾かして畳んでから来てくれよ。」

「メイド?人間女子としては最低に位置付けられるヒエラルキーの真似を、神様がしなくちゃいけないのよ。非常識にも保土ヶ谷区よ。その猫の額のような顔を洗って、出直しなさいよ。でも時間がないわ。神痛力とは、神が自分のからだを痛めながら使う魔法のことよ。アタシの神痛力ポイントカードは今ホワイトで、9ポイントなんだけど、次のシルバーに昇格するためにポイントを稼ぐことを神経垂迹と呼ぶのよ。それはあんたがアタシに神頼みすることよ。そのために、さっき気持ちよくさせてあげたんだから。さあ、早く神頼みしなさいよ。」

「こ、こんなこと、全然したくないんだけど、しきたりだから仕方ないのよ。神としての下賎な人間に対する生涯初の施しなのよ。その眉の下にある2つの穴をアジのひらきのようにして見るべきものなんだけど、どうせそこは明るい未来という光が永遠に届かない暗黒洞穴だから、無駄に開けちゃいけないんだからねっ。は、恥ずかしいなんて感情はないんだけど。儀式パート2なんだからやるしかないのよ。」

「見ようも何も、布団がオレの安眠人生前に立ち塞がっているぞ。それをどけてくれ。」

「なんて破廉恥なヘンタイ色魔だわ。ふとんというバリケードがなかったら、直パイになっちゃうじゃないの。」
その言葉を発した瞬間、真っ赤になった楡浬。

「そんな邪念の発売予定はないけど、苦しさからの解放を要求するぞ。」

「しょ、しょうがないわねえ。ゆっくりふとんを剥がすから、頭は死体のように動かさないでよ。微動だにしたら、心臓の永久活動停止を宣言させるからね。いいわね、いくわよ。」

楡浬は言葉とは裏腹に一気にふとんを引っ張り、そのままからだを大悟に預けた。

「ぐあああ~!」「はああああ~!」
大悟の悲鳴と楡浬の悶え声が部屋でシンクロした。

『ガバッ!』
「はあはあはあはあ。なんて夢だ。妹桃羅のは別として、もうひとりの神様女子とのアレはかなりマズいぞ。昨日、疲れてて風呂に入らなかったから、こんな夢を見たのかな。早く顔を洗って、いい朝にしなくちゃな。ぷにゅ、ぷにゅ。ほら、こんなに大きくて瑞々しい桃があるぞ。朝食前の前菜か?」

「あはん、あはん。お兄ちゃん。朝一番から積極的だねえ。モモ、リクエストに応えちゃうよ。ドバッ!」
 ひとつの狭いベッドの中で、大悟に抱きついた桃羅。

「やめろ。いつもオレのベッドに来るなと言ってるだろ!」

「乙女の純情可憐なからだと心をそんなに蹂躙した後に言っても説得力ないよ、お兄ちゃん。」

「とっとと、失せろ!」
エロい夢から覚めた直後に、似たような現実に遭遇する大悟であった。

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